廃れたサンゴ礁が、息を呑む美しさに蘇る。ユネスコのビフォーアフター動画が問いかけるもの

ユネスコが投稿した、荒廃したサンゴ礁の写真

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一度壊れてしまったサンゴ礁は、もう元には戻らないのでは━。そんな諦めを一蹴するほどの美しさだ。

ユネスコ(国連教育科学文化機関)がこのほど、公式インスタグラムを更新し、荒廃したサンゴ礁が4年後に蘇る「ビフォーアフター」写真を公開した。

動画を共有した投稿で、ユネスコは「地球温暖化がこのまま進めば、2030年までに世界のサンゴ礁の大半が失われる可能性があります」と警鐘を鳴らした。

その上で、「国連海洋科学の10年」(Ocean Decade)による、生態系や生物多様性の保護・回復といった取り組みの成果も紹介。危機に直面するサンゴ礁に焦点を当て、科学者や政府、NGO、産業界が手を携え研究プロジェクトを進めることの意義を伝えている。

2015年の「ビフォー」画像に写るサンゴ礁は、色を失い衰弱している。海水温の上昇によって、サンゴ内から共生する褐虫藻が抜け、白く変色する「白化」が発生しているように見える。

一方、わずか4年後の2019年に同じ場所を写したと思われる「アフター」画像では、色鮮やかで美しいサンゴ礁が復活し、その周りを無数の海洋生物が行き交う様子が窺える。

サンゴ礁は、地球上で最も多様な生態系を育む場所の一つとして知られる。多様な生物の共存を可能にする働きに加え、防災や二酸化炭素の循環といった役割も果たしている

同時に、サンゴ礁は最も脆弱な生態系の一つでもある。2018年に公表された「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)の特別報告書によると、地球温暖化の影響で、早ければ2030年には産業革命前からの平均気温上昇が1.5度に達し、サンゴの70〜90%が死滅するとされている。

2021年から2030年までの10年間をターゲットにした「Ocean Decade」は、海洋研究者を含む世界中の様々な分野の関係者を集結させ、最新の海洋科学に基づいたサンゴ礁の再生プロジェクトを推進している

日本の研究機関も参画しており、沖縄県では、サンゴ組織内に生息する細菌がサンゴ自体の健康に与える影響を解析する取り組みなどが行われている。

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