新国立劇場 バレエ&ダンス 2024/2025シーズン ラインアップ発表会レポ

新国立劇場の舞踏、2024/2025シーズンのラインアップ発表会が行われた。登壇したのは芸術監督の吉田都。

新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」の千秋楽に、かつて新国立劇場バレエ団の芸術監督を務めたデヴィッド・ビントレーと大原永子が訪れたそう。「3人で作品を観られたこと、心強く感じました」とコメント。
また、ダンサーがウォームアップやクールダウン、またストレッチや実習も行うことのできる新スタジオがオープン、それまでは廊下などで練習していたそう、また、ダンサー1人1人のニーズに応えるためのパーソナルコンディショニングも。「それまではグループで行っていましたが、1人1人の身体は皆、違うので…こういったところはどんどん変えていきたい」と話す。また学校法人東京医科大学と包括連携協定を結び、医療体制が充実。
公演の充実だけでなく、ダンサー陣がより良いパフォーマンスができる環境を整える、そうすることによってより満足度の高いパフォーマンスができるようになる。新国立劇場が率先して改革を進めていくのは他の団体にも刺激になるはず。

2024/2025シーズンのテーマは「With a Sense of Adventure」。新国立劇場バレエ団が「冒険心を持って」突き進むシーズン。
「『眠れる森の美女』『くるみ割り人形』『ジゼル』『不思議の国のアリス』といったお馴染みの作品に加え、カンパニー・プレミエやバレエ団オリジナルの世界初演作品など、多彩な舞踊の魅力を感じられるラインアップといたしました」
『眠れる森の美女』は2024年10月上演、クラシックバレエの定番、12回公演。そして年末年始恒例となった『くるみ割り人形』、初演から数えて観客動員数は20000人超、とアナウンス。クリスマス、年越し、お正月のイベントとして多くの観客が観劇にくる演目としてすっかり定着。「ご家族で」と吉田都。
今シーズンは待望の新制作は4本。
2024年7月、すでに上演が発表されているが、”こどものためのバレエ劇場”、世界初演の貝川鐵夫振付の『人魚姫』。新国立劇場バレエ団から振付家を育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」から誕生した初の全幕バレエ。
このプロジェクトから生まれた作品は「DANCE to the Future」で上演されていた。「このたび全幕作品として結実することを一つの未来として示すことができました。これはプロジェクト、ひいてはバレエ団にとって大きな進歩」とのこと。
また「DANCE to the Future2024」ではネザーランド・ダンス・シアターで活躍し、現在は自らの創作やワークショプなど多方面で活躍の小尻健太をアドヴァイザーに迎える。「身体の使い方、動きに挑戦します」と吉田都。

2025年3月のトリプル・ビル「バレエ・コフレ」では12年ぶりの上演となる『火の鳥』と一緒に、ハラルド・ランダー『エチュード』、コロナ禍の影響で上演が延期になっていたウィリアム・フォーサイス『精確さによる目眩くスリル』を上演。いずれも初めてとなる振付家の作品。「カンパニーにとって新たな挑戦となることはもちろん、普段全幕バレエに親しんでいらっしゃる観客の皆さまにとっても”冒険”となる観劇体験をお届けできることと思います」

2025年7月「Young NBJ GALA」、若手にスポットを当てたガラ公演第二弾。古典バレエのパ・ド・ドゥの他に、中村恩恵振付でヘンリー・パーセルの哀愁に満ちた美しい旋律にのせて贈るソロ作品『O Solitude』、そして新国立劇場バレエ団ダンサーで振付家としても期待される福田圭吾による新作。この企画は若手ダンサー育成のために2023年に始めたもの。新しい才能に出会える機会となる。
『不思議の国のアリス』は6月、全11回公演、振付にはバレエの新時代を切り開いた英国の振付家クリストファー・ウィールドン、音楽には映画やテレビ番組での音楽を手がけるジョビー・タルボット、美術には数々の作品でトニー賞を受賞しているボブ・クロウリーという錚々たるアーティストたちが集結し、世界を席巻しました。世界有数のバレエカンパニーがこの大人気となった話題作をレパートリー化しており、アジアでは唯一新国立劇場バレエ団だけが上演を許可されたプロダクション、まだ観たことがないという方は一見の価値あり。「誰がどの役をやるのかが楽しみ」と吉田都。

そして2025年の大きなハイライトは、カンパニーにとって初めての土地、劇場での海外公演を7月に実施、英国ロイヤルオペラハウスでの『ジゼル』の上演となる。「かねてから実現を願っておりました」とコメント。しかも「「招待公演ではない形態で、新国立劇場が自ら海外公演を実施するのは、今回が初めての試み」と語る。「みんなに、ロイヤル・オペラ・ハウスの舞台に立ってもらいたいという強い気持ちから実現しました。実際に舞台に立って踊ってみないと、わからない空気感というものがあるんです。海外公演を経験したあとのダンサーの変化が楽しみ」と言いつつも自身の演出、プレッシャーもあるだろう。「サー・ピーター(ピーター・ライト)の『ジゼル』で育った私にとって、自分が演出する『ジゼル』をロイヤル・オペラ・ハウスに持っていくのは大きなプレッシャー。現地のお客様に喜んでいただけるレベルになるか、チャレンジ。私もダンサーも覚悟を決めてやらなくては」と吉田都。
2020年から始まったコロナ禍、多くの困難、「演劇的でありつつも、新国立劇場バレエ団ならではの美意識を生かした『ジゼル』…何より新国立劇場バレエ団とダンサーたちの素晴らしさを広く知っていただく絶好の機会となることが今から楽しみ」ということだが、新国立劇場の『ジゼル』、全5回公演、記念すべき海外公演となるのは間違いない。

日本を代表するコンテンポラリーダンスカンパニーCo.山田うんの<大人もこどもも楽しめるダンス作品>が新国立劇場に再び。
ダンサーたちの力強いダンスとヲノサトルのポップでキャッチーな音楽、そして絵本作家ザ・キャビンカンパニーによるカラフルな美術によって、2021年7月の初演時には高い評価を得ました。”死んだらみんなどこ行くの?”をテーマに、個性の際立つダンサーたちが妖怪や怪物になってあの世とこの世を行ったり来たり、人間の生死を優しく温かく見つめながら描いた作品。

そして、次世代を担う子どもたちが、優れたバレエ芸術に触れられる機会を提供する目的で、 2009年より「新国立劇場 こどものためのバレエ劇場」を実施。2024年の夏は、誰もが知 るアンデルセン童話の「人魚姫」をモチーフにした新作バレエを世界初演。
演出・振付を手掛けるのは2022年まで新国立劇場に22年間ダンサーとして在籍した貝川鐵夫。バレエ団の中から振付家を育てるプロジェクト「NBJ Choreographic Group」に発足当初から参加し、いくつもの作品を発表。21年新国立劇場<子どもたちとアンドロイドが創る新しいオペラ>『Super Angels スーパーエンジェル』でも振付を担当、振付家として意欲的に活動。
クリエイティブスタッフには新国立劇場でも数多くの作品の美術を手掛けてきた川口直次、貝川と協働を重ねてきた衣裳デザイナーの植田和子が加わり、新たな人魚姫の世界を創造。
人間の世界に憧れた人魚姫が海の外で出会うのは、恋の喜び、悲しみ、そして…… この世の不条理に 触れた人魚姫の切ないラブストーリーを、新国立劇場バレエ団から誕生するオリジナルバレエとしてお届け。
子どもから大人まで、全ての世代の皆様に向けた、バレエの魅力が詰まった舞台となる。公演は7月下旬の夏休み期間。

最後に
「世界は未だ戦争や大きな社会情勢の変化の最中におり、日本では2024年の年明けに大きな地震が能登半島を襲いました。この状況において、舞台芸術には何ができるか、新国立劇場は何をすべきか、改めて見つめ直しつつ、攻めの姿勢をもって次なる冒険へ一歩を踏み出していきたいと思います」

新国立劇場 2024 / 2025シーズン バレエ&ダンスラインアップ概要

新国立劇場 こどものためのバレエ劇場 2024「『人魚姫』~ある少女の物語~」
2024年7月27日(土)~30日(火)
東京都 新国立劇場 オペラパレス

振付:貝川鐵夫
音楽:C.ドビュッシー、J.マスネ ほか

新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』
2024年10月25日(金)~11月4日(月・振休)
新国立劇場 オペラパレス

音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
振付:ウエイン・イーグリング(マリウス・プティパ原振付による)
指揮:ギャヴィン・サザーランド、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場バレエ団『Dance to the Future2024』
2024年11月29日(金)~12月1日(日)
新国立劇場 小劇場

振付:新国立劇場バレエ団
アドバイザー:小尻健太

新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』
2024年12月21日(土)~2025年1月5日(日)
新国立劇場 オペラパレス

振付:ウエイン・イーグリング
音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
指揮:冨田実里 ほか
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
合唱:東京少年少女合唱隊

新国立劇場バレエ団「『バレエ・コフレ』エチュード〈新制作〉 / 精確さによる目眩くスリル〈新制作〉 / 火の鳥」
2025年3月14日(金)~16日(日)
新国立劇場 オペラパレス

『エチュード』
振付:ハラルド・ランダー
音楽:カール・チェルニー
編曲:クヌドーゲ・リーサゲル

『精確さによる目眩くスリル』
振付・美術・照明:ウィリアム・フォーサイス
音楽:フランツ・シューベルト

『火の鳥』
振付:ミハイル・フォーキン
音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー

□ Co.山田うん『オバケッタ』
2025年3月29日(土)・30日(日)
新国立劇場 小劇場

振付・演出:山田うん
音楽:ヲノサトル
出演:Co.山田うん

新国立劇場バレエ団『ジゼル』
2025年4月
新国立劇場 オペラパレス
※2025年7月ロンドンにて公演。

振付:ジャン・コラリ、ジュール・ペロー、マリウス・プティパ
演出:吉田都
ステージング・改訂振付:アラスター・マリオット
音楽:アドルフ・アダン
指揮:ポール・マーフィー、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

新国立劇場バレエ団『不思議の国のアリス』
2025年6月12日(木)~24日(火)
新国立劇場 オペラパレス

台本:ニコラス・ライト
振付:クリストファー・ウィールドン
音楽:ジョビー・タルボット
美術・衣裳:ボブ・クロウリー
指揮:デヴィット・ブリスキン、冨田実里
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
共同制作:オーストラリア・バレエ

新国立劇場バレエ団『Young NBJ GALA 2025』
2025年7月12日(土)・13日(日)
新国立劇場 中劇場

『パ・ド・ドゥ集』
『O Solitude』
振付:中村恩恵
音楽:ヘンリー・パーセル

『福田圭吾による新作』
振付:福田圭吾

公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp

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