湯布院名物の辻馬車、今年で運行50年目 御者の冨田さん親子「観光客に魅力伝えたい」【大分県】

今期の運行開始に向けて試走する冨田光弘さんとサギリ=由布市湯布院町川上
親子2代にわたり辻馬車の御者をする冨田利光さん(左)と光弘さん=九重町引治
馬のブラッシングをする冨田光弘さん(右)と利光さん=九重町引治

 【由布】由布市湯布院町の名物、辻(つじ)馬車の運行が今年で50年目を迎える。2台の馬車のうち1台は、冨田利光さん(69)と長男の光弘さん(40)=いずれも九重町引治=親子が手綱を握る。昨年から御者を務める光弘さんは「観光客に由布院の魅力を伝えたい」と、2日からの今期運行を心待ちにする。

 辻馬車は、1975年の県中部地震で減少した観光客を呼び戻そうと、同年7月から運行を始めた。

 利光さんは、乗馬の指導員など20代から馬に携わる仕事をしてきた。35年ほど前、声がかかり辻馬車の御者を開始。自宅の敷地内で馬を飼い、世話をする。

 子どもの頃から馬が身近だった光弘さん。臨床工学技士として病院で勤務していたが、数年前から“家業”を継ぐことを考えていたという。2022年、馬を操る父のそばで、乗客に観光案内を手伝うことから始めた。病院を退職し、昨年から本業として牝馬の「サギリ」と共に運行している。「全く異なる職種だが、それぞれにやりがいがある」とほほ笑む。

 現在はサギリと牡馬の「ホクト」を飼っており、2頭が1~2日交代で馬車を引く。10年近くのキャリアがあるサギリは優しく、おとなしい性格。昨年デビューしたホクトは活発で元気な馬という。ホクトの手綱は利光さんが取る。

 御者として大事なことを「馬の気持ちをくむこと。馬は繊細なので、怖がっていれば落ち着かせることが必要」と語る利光さん。そばで学び、経験を積む光弘さんは、全ての仕事を1人でこなせるよう自立を目指す。

 1日にセレモニーがあり、12月末までカッポカッポとひづめの音を街に響かせながら観光客を楽しませる。「乗客が由布院を好きになるお手伝いをしたい」。世代をつなぎながら観光を盛り上げようと意気込む。

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