真心ブラザーズ、35周年を前に絶好調 『グレート CK Jr.』ツアーファイナルで鳴らした最強ロック

今年でデビュー35周年を迎える真心ブラザーズが、今年も元気にツアーをまわっている幸せをしみじみと噛みしめる。2月24日、『真心ブラザーズ ライブ・ツアー「グレート CK Jr.」』ツアーファイナル、東京・EX THEATER ROPPONGI。バックを固めるのは、数ある真心バンドのなかでもタフでワイルドなロックをやらせたらナンバーワンのCRAZY BUFFALOES(グレートマエカワ〈フラワーカンパニーズ〉、サンコンJr.〈ウルフルズ〉)だ。楽しませてもらおうか、などと余裕をカマしている場合ではない。こちらも気合満点で迎え撃つ。

のっけから50代最強ロックが火を吹く。こんなにバカでかくて骨太な、腰の据わったバンドサウンドを生で聴くのは久々だ。いくつになってもまったく声量とパワーの落ちないYO-KINGの歌がど真ん中に君臨する。ブルースフィーリング溢れる桜井秀俊の饒舌なギターは、もうひとつのボーカルだ。サンコンJr.の猪突猛進パワードラム、グレートマエカワが放つ強力でファンクなベースも、実際の音量より大きく聴こえ、かつバランスが良くてうるさくない。セトリも35周年を意識してか、「サティスファクション」「ふっきれてる」「きいてる奴らがバカだから」と90年代の懐かしい曲が並ぶ。観客も熱いというよりはあったかい、いい雰囲気だ。

張り切ってまーす、と口々に言い合って、MCもそこそこにひたすら演奏に没頭する。「放課後ギター」から「一触即発」までの4曲は2000年代以降の曲で、ソウル、ファンク、ブルース、ロックンロールと、身に染みついた得意技だけで真っ向勝負。先ほどの「きいてる奴らがバカだから」と「一触即発」、特に「きいてる奴らがバカだから」のYO-KINGと桜井のThe Rolling Stonesタイプのツインギターには痺れた。ミック・ジャガーとキース・リチャーズ、あるいは忌野清志郎と仲井戸"CHABO"麗市。YO-KINGと桜井秀俊がそんなふうに、ボーカルとギターのベストコンビネーションの代名詞になる日は近い。もうなってるか。

「絶好調すぎてすいません。まいっちゃうよね。35年間、ずっとうまくなってるからね。どうなっちゃうんだろう」

YO-KINGの陽気な自画自賛は、いつ聞いても元気が出る。ほぼ35年前の2曲、「荒川土手」のYO-KINGの口笛も、桜井が歌うミドルバラード「風が吹く時」の大らかで朴訥な味わいも、懐かしさよりも今を生きるたくましさを感じて新鮮だ。時間は一気に飛んで2年前の2022年リリースの「君がすべてだったよ」のほうがむしろ、ノスタルジーを強く感じさせてしんみりする。過去は新しく、未来は懐かしい。何の策略もないブギーロック「かっこいいだろ」に何のてらいもなく盛り上がる。大人と童心が交錯する、時間の経つのが早い。

桜井の華麗なラップスティールとYO-KINGのハーモニカが映える「月面」から、もはやオリジナル曲に溶け込んで久しいエモーショナルバラード「流星」へ。桜井の原曲完コピソロは、いつだって泣ける。ゆったりじっくり聴かせるセクションを過ぎると、ライブは終盤へ向けて一気に加速。エンジン全開でぶっ飛ばす「スピード」から「アーカイビズム」へ。バンドが乗りに乗っていた1995、1996年頃の曲は、今聴いてもやはり特別な輝きがある。命が燃える音がする。「Let's 感動」の明るいダンスビートに乗って誰もが踊る。歌う。手を振る。35年前からYO-KINGの歌ってることが全然変わっていないのが凄い。感動しよう。感情に流されよう。ほかにつけ加えることは何もない。

「ENDLESS SUMMER NUDE」からの「愛」、そして会場内があたたかい一体感にまみれた「空にまいあがれ」。踊れ、騒げ、盛り上がれと押しつけたって40代や50代の音楽ファンは動かない。日頃のストレスを忘れて、とか言っても無理だ。何も言わずとも、本物の演奏と本気の歌だけが大人の音楽ファンを動かす。YO-KINGって本当にすごい、桜井はまだギターがうまくなってる、グレートとサンコンはやっぱりスーパーだ。笑顔で聴き惚れるしかない。

まだまだ世界は暴力にあふれ、平和ではありません。「拝啓、ジョン・レノン」は2024年の今こそ強く胸に響く曲だが、YO-KINGは桜井のギターソロの裏側でなぜか衣装のジャケットを丁寧に折りたたんで爆笑を誘っている。真面目でもジョークでもどっちでもいい、思いついたことはやらずにいられないのが自由人・YO-KINGだ。『グレート CK Jr.』ツアー最高でした。ありがとう。ラストチューン「明日はどっちだ!」の生きるエナジーに溢れた歌詞とひたすら前進するリズムに心躍る。ほぼ同年代の4人が、長い鍛錬の果てに身に着けた凄腕とパワーとセンスを最大限に発揮してステージで火花を散らす、控えめに言っても50代最強ロック。圧巻のパフォーマンスだ。

10人編成のMB’sを率いての恒例のライブは、4月28日、LINE CUBE SHIBUYAにて。弾き語りライブツアー『真心道中歌栗毛 2024』も6月から始まる。絶好調ですいません。余韻に浸る間もなく、真心ブラザーズはもう次の場所を目指して走り出してる。

(文=宮本英夫)

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