島国モルディブに無煙・無臭のごみ焼却炉 沖縄から遠隔管理 運搬船が不要で島内で処理OK トマス技研の「チリメーサー」

チリメーサー導入を記念したセレモニーであいさつするトマス技術研究所の福富健仁社長=26日、モルディブ・ホルドゥー島(同社提供)

 無煙・無臭の小型焼却炉の開発・販売を手がけるトマス技術研究所(沖縄県うるま市、福富健仁社長)はこのほど、モルディブのホルドゥー島に小型焼却炉「チリメーサー」を導入した。これまで島外へ運び、埋め立て処分していたごみを島内で焼却できるようになった。小型焼却炉としては世界で初めて、稼働状況を沖縄から遠隔で確認、管理できるシステムなども導入。今後、近隣の島への展開も目指し、衛生環境や生活の質の向上への貢献を目指す。(政経部・川野百合子)

 同社のチリメーサーは、県内離島などの他、海外ではインドネシアの医療機関に導入されている。モルディブのチリメーサーは幅1メートル、奥行き1.8メートル、高さ3.6メートルと、インドネシアや国内で導入しているのと同じ型。

 これに(1)遠隔で管理できるIoT制御盤(2)塩害防止策として焼却炉表面の「溶射」塗装加工(3)海水を淡水に変える装置の設置-の3点をカスタマイズし、モルディブの環境や課題に対応した。1日8時間の稼働で重さ360キロのごみを処理できる。

 外務省によると、モルディブは1192の島々からなる。漁業と観光業が主な産業。人の住む「住民島」とリゾート施設しかない「リゾート島」に分かれ、1192のうち159島がリゾート島という。

 ホルドゥー島は、約2千人が暮らす住民島。病院やカフェ、警察署などがあり日常的にごみが発生するが、ごみ運搬船の運航が天候に左右されたり、風向きで悪臭が漂ってきたりするなど、住民生活や産業に影響が及んでいた。

 コロナ禍で当初予定より4年遅れるなどの想定外もあったが、今月20日に設置され、試運転や技術指導などを実施。26日には両国の政府関係者や住民などを招いた記念式典が開かれ、約80人が参加した。

 チリメーサーの運転員を務めるソバ・アリ氏は「悪臭問題が改善した。ごみの投入時以外は焼却の臭いがほぼなく、操作も簡単。リゾート島でも導入した方がいい」と利便性を語った。

 モルディブのプロジェクトを担当した小牧稔仙氏は「視察したリゾート島の関係者からの引き合いもあり手応えを感じている。多くの島に展開できるよう関係機関とも協力して、モルディブ全体のごみ問題を解決していきたい」と話した。

チリメーサー導入を記念したセレモニーであいさつするトマス技術研究所の福富健仁社長=26日、モルディブ・ホルドゥー島(同社提供)

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