『おっさんずラブ』幸せに満ちた大団円の最終回 春田×牧たちにまた出会えることを願って

『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)最終回は、前回の武蔵(吉田鋼太郎)とのお別れムードはどこへやら、笑顔と幸せに満ちた大団円となった。

まずは武蔵の余命1カ月宣告についてだが、医者の「嫁がイカゲームっつうの」を「余命1カ月」に聞き間違え、吐血も直前に食べていたスパゲッティのミートソースと赤ワインの色という通常のドラマではありえない答え合わせだが、『おっさんずラブ』だからこそ笑い飛ばすことができる幸せな勘違いだったと言える。

最終回でテーマになっているのは、「幸せとはなにか?」という人の数だけ答えがある問いかけ。自分が成長することでみんなを幸せにできると考えているもうすぐ40歳の春田(田中圭)。同時に、牧(林遣都)をはじめ周りのみんなを家族のように大事にしているからこそ、自分が成長しないと幸せにできないのではないかと焦燥感を募らせていた。

そんな春田のために牧が開いたのが、「春田さんを幸せにする会」。牧にアドバイスを与えた武蔵やちず(内田理央)、舞香(伊藤修子)、鉄平(児嶋一哉)、和泉(井浦新)、菊之助(三浦翔平)、蝶子(大塚寧々)、マロ(金子大地)、武川(眞島秀和)まで本作のメインキャストが大集結している。「春田さんはきっと、春田さんが大好きなみんなと一緒に思いっきり笑ってる時が一番幸せだろう」という牧の考えの元だ。

本作のメインビジュアルをセルフオマージュした家族写真(=日本のラブ)や秋斗(田中圭)のモノマネをした春田、蝶子の「幸せの中にいると自分が幸せだということに気づきにくい」という金言など、名シーンが数多くある中で特筆すべきは菊之助への思いに和泉が正直になる場面だ。和泉は菊之助と離れて、やっと自分が“幸せの中”にいたことに気づいていた。「お前がいないとなんか、全然落ち着かねえんだ」と菊之助を咄嗟に抱きしめる和泉。彼らの物語は公安として再び張り込みを続ける車内で、和泉が菊之助を乱暴に引き寄せ、「生意気な唇だな。もう弟じゃねえんだろ?」とささやく和泉に菊之助が唇を寄せるシーンへと繋がっていく。

『おっさんずラブ』では様々な家族の形が描かれている。子育てと仕事の両立に奮闘するちず、いわゆる年の差婚の蝶子とマロ、信玄という新たなペットをパートナーとして迎え入れた武川、和泉と菊之助の同性カップル。その数だけ、いろんな形があって、いろんな正解がある。春田と牧もまた、様々な困難を乗り越えていき、その先で2人だけの家族の形を作っていくだろう。

満開の桜の下で過ごす何気ない時間を“幸せ”だと感じる春田と牧。2人の頬に伝う涙が意味するものはなんだったのだろうか。そんな無理やり何かに意味を見出すことも野暮だと思えるくらいに美しい2人のシーンであり、伝家の宝刀である「凌太」「創一」呼びからの、新たな誓いのようなキスは未来へ進んでいく春田と牧を強くイメージさせた。

ラストシーンは、和泉と菊之助が出て行った隣の家に武蔵が引越してくるというものだ。“となりのムサシ”ということで、『となりのトトロ』ネタを連発する武蔵と牧のキャットファイトが開戦。いつの間にやら春田が巻き込まれているといった、これぞ『おっさんずラブ』といった幕引きであるが、牧と武蔵がライバルや嫁姑を超えて、名もなき関係であることを印象付けながら、『おっさんずラブ』という作品が多くの視聴者にとっての幸せを形作ってきたことを感じさせるラストでもあった。そのことはきっと『おっさんずラブ』の放送が終わったこれからの日々で気づくことになるのだろう。

(文=渡辺彰浩)

© 株式会社blueprint