中国全人代代表「ハイレベルな開放で少数民族の共同富裕を推進」

広西チワン族自治区東興市の「ジン族三島」で開催の「哈節」で披露された竹ざお踊り。哈節はジン族の最も重要な伝統行事とされる。（2023年7月26日撮影、東興＝新華社配信）

　【新華社南寧3月3日】中国北京市で間もなく開幕する今年の全国両会、全国人民代表大会（全人代）と中国人民政治協商会議（政協）全国委員会の会議を前に、全人代代表の陳家科（ちん・かか）氏は両会で発表する提言を毎日何度も読み返し、修正や追加が必要な箇所がないか検討している。

　陳氏は、ベトナムとの国境に近い広西チワン族自治区東興市江平鎮潭吉村の党総支部委員会書記。「今年は主に『辺民互市貿易（国境付近の住民間の自由市場での取引）』発展のさらなる強化、東興の越境観光への支援拡大、東興口岸（通関地）二橋の貨物輸送ルートにおける週末通関の早期実現などを提言する予定。よりハイレベルな対外開放を通じて国境付近に暮らす少数民族の共同富裕への道を後押しする」と語った。

2023年の全国両会会期中、広西チワン族自治区代表団の審議に参加する全人代代表の陳家科氏（前列右から2人目）。（2023年3月11日撮影、北京＝新華社配信）

　少数民族ジン族の陳氏は、東興市で生まれ育った。ジン族は中国唯一の海洋民族で、約3万人の人口を有する。同市の「ジン族三島（山心、万尾、巫頭）」が主な居住地域で、陳氏が暮らす潭吉村は人口約1800人のうち75％をジン族が占める。

　東興市はベトナムのモンカイと北侖河（カロン川）を隔てて向かい合う。東南アジア諸国連合（ASEAN）加盟国と陸路・海路でつながる国内唯一の都市で、辺民互市貿易は重要な貿易形態となっている。市内には辺民互市貿易向け商品の加工企業が60社以上ある。

広西チワン族自治区の東興口岸で、出入境検査と通関手続きをする観光客。（2月14日撮影、東興＝新華社配信/林珉正）

　陳氏は「辺民互市貿易は中国国境地域の経済・社会の発展を促す重要な力で、『興辺富民（国境地域を振興し、住民を豊かにする）』と『穏辺固辺（国境地域の安定化と強化）』を実現するための重要な手段でもある。東興で辺民互市貿易に関わる住民は2万人を超え、1人当たりの年収は平均で1万元（1元＝約21円）以上増えた」と述べた。

広西チワン族自治区東興市の「辺民互市貿易区」で、出入境検査のため列を作るトラック。（2023年4月10日撮影、東興＝新華社記者/黄耀滕）

　同市出入境検査所のデータによると、2023年に東興口岸経由で出入境した人の数は530万人余り。24年の春節（旧正月）連休期間（2月10～17日）は11万人余りで、うち団体旅行客の入境は約380組、6100人余りに上った。

広西チワン族自治区東興市の「ジン族三島」にある金灘風景区で楽しむ観光客。（2月14日撮影、東興＝新華社配信）

　陳氏によると、ジン族の居住地域はここ数年、質の高い発展という最重要任務をしっかりと中心に据え、経済が新たな段階に進展、生活水準が大きく向上し、産業の構造転換と高度化が進んでいる。陳氏は、辺民互市貿易への支援や東興の国境・越境観光の全面推進、国境地域のハイレベルな対外開放と質の高い発展の推進が、国境地域に暮らす少数民族の共同富裕への道を後押しするとの見方を示した。（記者/黄耀滕、田子駿）