メルセデス・ベンツ新型Eクラスを国内で初試乗。真骨頂はお買い得なPHEV?それともスポーティなディーゼル!?ゴルフのお供に選ぶなら・・・【公道試乗】

2024年1月12日、日本向けに発表されたメルセデス・ベンツ新型Eクラスに初試乗。ゴルフ場での試乗会で、ゴルフにあんまり興味がない向きでも、思わずゴルフに行きたくなってしまうくらいに、ゴルフの帰り道がとっても心地よい・・・そんな魅力をプラグインハイブリッド、ディーゼルターボの2タイプでチェックしてみた。

あえてコスパで選んでも幸せなPHEV仕様

新型Eクラスの試乗会は、千葉県富津市にあるブリストルヒルゴルフクラブをベースに、一般道を巡るコースで行われました。小高い丘(いうより低めの山?)の上にあるコースはとにかく見晴らしがよく、アップダウンに富んだレイアウトでプレイを楽しむのは体と心の健康促進にぴったり、かも。

「Sensual Purity(官能的純粋)」のデザインテーマが、独特な光の戯れを演出する立体的で彫刻のような造形を生み出した。(写真は、E 350 e スポーツ エディションスター)

朝、早めの現地集合ということもあって、マイカーでアクアラインを走っているあたりから実はすでに「ゴルフに行く気分」に浸っていたような気もします。

そのためでしょうか。試乗車を借りて走り出してすぐに感じたのは、「ああ、これはゴルフ帰りがらくちんなクルマだわ~」という、非常に「シーン」にマッチした第一印象でした。とりもなおさず「Eクラスの使い方としては王道」と思しき魅力を、真っ先に実感することができたのです。

試乗用に用意されていたラインナップのうち、ハンドルを握ったのは以下の2台でした。それぞれの基本的な情報をお伝えしておきましょう。

全モデルにオプション設定の「MBUX スーパースクリーン」(助手席一体型ディスプレイ)。ガラス面の上側の輪郭に沿ってエアアウトレットの細長いノズルバンドが納められており、キャビン中央と左右両脇のエアアウトレットをつないで一体化している。

【E 350 e Sports Edition Star(プラグインハイブリッド)】

パワートレーン:2L直4DOHCガソリンターボ+電気モーター
最高出力:150kW(204ps)+95kW/最大トルク:320Nm+440Nm
WLTCモード燃費×使用燃料・タンク容量:12.7km/L×プレミアム・50L
EV最高速度:140km/h/航続距離(WLTCモード):112km
車両本体価格:988万円/オプション装備を含む価格:1222万3000円

E 220 dのインテリア。レザーエクスクルーシブパッケージ選択時の本革(ナッパレザー)シートは、キルティングとパーフォレーションを施したシートの形をなぞるダイヤモンドステッチとなり室内の高級感を高める。

【E 220 d AVANTGARDE(ISG搭載モデル)】

パワートレーン:2L 直4DOHCディーゼルターボ
最高出力:145kW(197ps)/最大トルク:440Nm
WLTCモード燃費×使用燃料・タンク容量:18.5L×軽油・66L
車両本体価格:921万円/オプション装備を含む価格:1201万4000円

PHEVはセダンのみに設定。オプションを含む価格を見比べていただければわかるとおり、試乗車におけるディーゼルとPHEVの価格差はわずかに20万円ほど。ですが、後者は政府からの補助金が55万円もらえるので、実質的な購入価格は逆転します。

Eクラスに関して「お買い得感」を語るのも我ながらどうかと思いますが、ひいき目抜きでPHEVの価格設定は極めて戦略的、と言えるでしょう。試乗する前から先進性、機能性、走行性能だけでなくコスパまで含めて、これはPHEV一択か!?と思われましたが、さすがにEクラス。そんなに浅いものではないですよね、やっぱり。

どちらかと言えば癒し系?リラックスして乗るのが似合う

「らくちんだわ~」な気分を真っ先に実感させてくれたのは、とりもなおさずPHEVのE 350 eでした。取り回しの良さ、引き締まっていながら尖ったところのない乗り心地やハンドリング、エンジンと電気モーターの絶妙なコラボレーションなど、E 350 eは総じて、ドライバーを無駄に刺激することのない「包容力」に満ちています。

静粛性の高さは満足感が高いドライビングにつながる。イルミネーションの配分も、非常に洗練された印象があった。ちなみにリア・アクスルステアリングを装備すると、最小回転半径は5.0m(非装着モデル:5.4m)を実現している。

6代目となる新型Eクラス(E 350 e)のボディサイズは全長4960mm、全幅1880mm、全高1485mmと、先代よりも長く、広く、低くなりました。ホイールベースは20mm伸びて2960mmに達します。

一方で、短いオーバーハングやEQシリーズのテイストを盛り込んだメルセデスの最新デザイントレンドは非常にすっきりと引き締まった印象で、一見して「無駄な大きさ」を強く意識することはありません。

乗りこんで見ると、さらにクルマとの一体感がまたちょうどいい感じ。ポイントは、MBUXスーパースクリーンと、別体化された眼前の小ぶりなディスプレイの組み合わせにありそう。高い機能性と豊かな広がりを感じさせながらも、運転に集中できるインターフェイスのレイアウトは、先進性やスポーティ感といったエモ的演出とのバランスも絶妙です。

エネルギー回収率(回生ブレーキの強さ)を変更したい場合は、ステアリングホイールの裏側にあるパドルスイッチを使って 3段階で直接切り替えできる。D Auto モードでは、システムが交通状況に応じて回生電力のレベルを自動で選択。ワンペダル感覚での走行も可能だ。

30km/h制限の速度制限がかけられた場内の取付道路にはところどころに小ぶりなランナウエイ的交差点もありましたが、流している間もよぶんな大きさは感じられませんでした。E 350 eにはオプションの後輪操舵機構(リア・アクスルステアリング)が装備されていたこともあって、駐車場での転回なども含めて、取り回しは非常に「らくちん」です。

一般道、高速道路を問わず非常に洗練された乗り心地もまた、ストレスフリーなゴルフドライブを楽しませてくれる「才能」と言えるでしょう。E 350 eにのみオプション設定される連続可変ダンピングシステムADSとエアサスペンションAIRMATICの組み合わせは、純粋なガソリンモデル(E 200 アバンギャルド)に対しておよそ370kgも重いPHEVであっても、最適な乗り味に調律してくれるようです。

切りはじめのレスポンスが妙に鋭すぎないステアリングの操舵感も、リラックスしたい時のセッティングとしてはぴったり。路面との対話感はしっかり残しながら、むやみにドライバーを煽らないフィールは、メルセデスというブランドが伝統的に持ち続けている美点のひとつだと思えます。

「精度感」がより高いディーゼルターボ

プラグインハイブリッドの強みであるEVとしての走行性能に関しても、むやみに力強さを強調するのではなく、豊かなトルクとスムーズさが調和しながらスピードを伸ばしていきます。

E 350 eのディスプレイ。アクティブディスタンスアシスト・ディストロニックが EV 走行に適応し、EV 走行の際、これ以上アクセルを踏むとエンジンがかかるモーター走行の限界点でアクセルペダルの抵抗を増して、消費を抑えるドライビングを促してくれる。

第4世代のバッテリーシステムはエネルギー容量が25.4kWh(うち19.5kWhをEV走行に使用)、EV走行時の最高速度は140km/h、航続距離は112kmまで伸びています。日常的には、ほぼほぼBEVとして利用することが前提、と考えていいでしょう。

ドライバーが、積極的に効率的な運転をしやすいインターフェイスも好印象でした。前面ディスプレイの右メーターは中立を境にEVマネジメントとエンジン回転数が切り替わるレイアウト。ちょうどセンター付近でアクセルペダルの踏み込みを調整しやすいように思えました。

ペダルの踏み込み加減次第で即座にエンジンがかかりますが、切り替えもまたシームレス。ちょっとスポーティに走りたい時などには、電気モーターとガソリンエンジンの使い分けを積極的に楽しめそうです。

ただし、走行しながらチャージする専用のモードは設定されていないことには、注意しましょう。ドライブモードを「SPORT」モードにするとエンジンが充電してくれますが、バッテリー残量計の数値が「みるみる増えていく」という感じではありません。

「Battery」モードはブレーキング時の回生力を高め、バッテリーの減りを抑制してくれますが、やはり積極的に増やしてくれるものではありません。市街地で効率よく走るための余裕を残しておくように、アクセルの踏み具合に気を配るのもお忘れなく。

とはいえ、最大60kWのCHAdeMO充電に対応するので、いざとなったら途中で充電してもいいし、そもそもガソリンで走る時にも環境に配慮したドライビングを心がければ済むハズ。そういう意味での自由自在感もやはり「らくちん感」につながりそうです。

E 220 d においては、高トルク、省燃費が売りのクリーンディーゼルエンジンに、MHEVによる緻密なサポートが組み合わされている。エンジンとトランスミッションの間に配置される電気モーターのISGによって、短時間だが最大で23ps(17kW)、205Nmのブーストが可能だ。

そんなPHEVからディーゼルターボのE 220 dに乗り換えると、新型Eクラスが持つもうひとつの一面が見えてきます。それは、Eクラスがとびきりのドライバーズセダンでもある、ということ。心地よい脈動感をともないながらリニアに湧き上がってくる強トルクは、電気モーター以上に雄弁な「楽しさ」を味わわせてくれます。

試乗車に装着されていたピレリ Pゼロのおかげもあるのでしょうか、ハンドル操作に対するレスポンスはより自然(E 350 eはミシュランのeプライマシーでした)。メカニカルなラグを細かなところで詰めていったかのような、一体感とダイレクト感が生まれています。エアサスも後輪操舵もなく比較的コンサバな仕様だからこそ、新型Eクラスが秘めた「本質」が見えてくるように思えました。

それにしてもこのディーゼル、楽しすぎてちょっと問題ありかも。ゴルフの帰りに近場のワインディングで「寄り道」したくなってしまいそう。早朝から出かけて夕方になっても帰らず、「お父さんは朝早くから遊びに行って、今頃どこで油を売っているのかしら・・・」なんて家族に訝しまれたりしないように、ご注意を。(写真:井上雅行/メルセデス・ベンツ日本)

E 350 e スポーツ エディションスター 主要諸元

●エンジン:直4DOHCターボ
●総排気量:1997cc
●最高出力:150kW(204ps)/6100rpm
●最大トルク:320Nm(32.6kgm)/2000-4000rpm
●WLTPモード燃費:12.7km/L
●CO2排出量:18-12g/km
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:92kW(129ps)/2100-6800rpm
●モーター最大トルク:440Nm(44.8kgm)/0-2100rpm
●WLTCモード一充電EV走行距離:112km
●全長:4960mm
●全幅:1880mm
●全高:1485mm
●ホイールベース:2960mm
●車両重量:2170kg
●駆動方式:FR
●トランスミッション:9速AT
●ブレーキ:フロントVディスク・リアVディスク
●タイヤサイズフロント245/40R20・リア275/35R20
●価格:988万円

E220 d ステーションワゴンアバンギャルド 主要諸元

●エンジン:直4DOHCディーゼルターボ
●総排気量:1992cc
●最高出力:145kW(197ps)/3600rpm
●最大トルク:440Nm(44.8kgm)/1800-2800rpm
●WLTPモード燃費:19.4km/L
●CO2排出量:133g/km
●モーター:交流同期電動機
●モーター最高出力:17kW(23ps)/1500-2500rpm
●モーター最大トルク:205Nm(20.9kgm)/0-750rpm
●全長:4960mm
●全幅:1880mm
●全高:1470mm
●ホイールベース:2960mm
●車両重量:1930kg
●駆動方式:FR
●トランスミッション:9速AT
●ブレーキ:フロントVディスク・リアVディスク
●タイヤサイズ:フロント225/55R18・リア225/55R18
●価格:955万円

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