「ハマスの奇襲」歌ったとされる候補曲、イスラエル側が歌詞変更に応じる姿勢 欧州歌合戦「ユーロヴィジョン」

ヨーロッパ各国が参加する毎年恒例の歌合戦「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」のイスラエル代表の候補曲について、イスラエル公共放送KANは3日、曲の歌詞を変えるよう要請した。候補曲は昨年10月のイスラム組織ハマスによるイスラエル奇襲を歌ったものとされ、主催者側が先週、政治的中立性に関する規則に反するとして除外を決めていた。

エントリー曲「October Rain」(10月の雨)をめぐっては、イスラエル公共放送KANは当初、歌詞を変更しないと約束していた。

しかし、イスラエルのイツハク・ヘルツォグ大統領は、同国代表がコンテストに参加できるよう「必要な調整」を行うよう求めた。

イスラエルは「ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト」で過去4度、優勝している。今年は、昨年優勝したスウェーデンで5月に開催される。

「芸術的自由保ちつつ変更を」

KANはエントリー曲として第1候補に「October Rain」を、第2候補に「Dance Forever」を検討している。

KANは3日の声明で、それぞれの曲の作詞家と連絡を取り、「芸術的自由を保ちつつ、歌詞を見合うものに変更する」よう依頼したと明らかにした。

声明によると、ヘルツォグ大統領は、「我々を憎む者たちがイスラエル国家を抑圧し、排斥しようとしている時だからこそ」、イスラエルは国際的な場で「声を上げなければならないと強調した」という。

欧州放送連盟(EBU)が先月、歌詞について評価中だと明らかにした際には、KANは「曲を差し替えるつもりはない」としていた。

イスラエルのエントリー曲は20歳の歌手エデン・ゴラン氏が歌う予定で、10日に正式決定される。

「戦死者を指す内容」

英語で書かれた「October Rain」のオリジナルの歌詞は、先月にKANのウェブサイトで公開された。

歌詞には「みんないい子だった、だれもがいい子だった」、「男の子は泣かないって誰が言った?/何時間も何時間も/そして花を/人生は臆病者のゲームなんかじゃない」といった文言が含まれる。

戦死者を指すことが多い「花」への言及は重要な意味を持つと、イスラエル紙ハヨムは報じている。

EBUはこれまでも、各国代表に歌詞の変更を迫ったことがある。

2009年にはジョージアが提案した「We Don't Wanna Put In」を、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領への言及であるのは明らかだとして受け付けなかった。ジョージアは参加を辞退した。

今年のコンテストに出場するほかの国のミュージシャンたちは、パレスチナ自治区ガザ地区でのハマスとイスラエルの戦争を受け、イスラエルの出場停止を求めている。

そうした訴えをしているのは、アイスランド、フィンランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデンなどのアーティスト。2022年にウクライナ全面侵攻を開始して以来、出場資格を失っているロシアの例に言及する人もいる。

コンテストの主催者はこれまでのところ、ウクライナとガザ地区では状況が異なるとして、こうした要求に抵抗している。

(英語記事 Eurovision 2024: Israel agrees to October Rain lyrics change

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