イモジェン・フォウクス、BBCニュース、スイス・ジュネーヴ
スイスで3日、年金制度をめぐる国民投票が行われ、毎年の年金受給額の引き上げが決まった。
投票の結果、年金受給額の増額には有権者の60%が賛成票を投じた。一方、年金受給開始年齢を65歳から66歳に引き上げる案には75%が反対した。
政府は、増額は財政的に難しいと警告していた。
スイスの国民年金は最大で月額2550ユーロ(約41万5000円)だが、多くの人が、同国で生活していくには不十分だとしている。
スイスの生活費は、特にチューリヒなどの都市部で世界で最も高いとされている。
全国民に納付が義務付けられている健康保険料は急上昇しており、高齢者はその支払いに苦労することもある。
特に、家庭を築くために仕事を中断していた女性や、スイスの工場やレストラン、病院で数十年前に採用されて働いてきた移民などは、生計を維持するのが難しい場合があるという。
スイスでは必要に迫られて70代まで働く人が増えている。一方、若い世代では、仕事に関連したストレスや燃え尽き症候群が増加している。
年金受給額の引き上げは労働組合が提案した。政府や議会、ビジネス界のリーダーたちは、財政的に無理だと反対していた。
「退職者のための歴史的勝利」
スイスの有権者は、お金の問題に関しては政府のアドバイスに従うことが多い。数年前には、年に1週間、休暇を延長するのを拒否した。
しかし今回、有権者はスイスの直接民主制を利用し、年金支給額を1カ月分、上乗せすることを決定した。
また、一般投票に加え、国内26州のほとんどでも賛成が反対を上回った。これにより、決定に必要だった二重多数決(ダブル・マジョリティー)をクリアした。
国民投票の結果について、スイス年金受給者権利団体「アヴィヴォ」は、「退職者のための歴史的勝利」だと述べた。
これにより、国民年金はスイスの給与制度と同じ13分割払いとなり、受給者は11月に二重の支払いを受けることになる。
この制度はもともと、クリスマスを前にした人々と、毎年の納税を助けるために作られたもの。スイスの退職者らは、年金にも税金がかかる一方で、クリスマスの楽しみは65歳で終わるわけではないと指摘してきた。
仕事ばかりで遊びのない人生であってはならないというスイス人の強い意志の表れとして、定年退職(年金受給開始)の年齢引き上げも圧倒的多数で否決された。
政府は、これらの施策には費用がかかると繰り返し述べた。
しかし有権者は、スイスの好景気と、その成功の大部分が自分たちの勤勉さのおかげであることを考えれば、こうした費用も十分にまかなえると信じているようだ。