骨粗しょう症で認知機能低下が加速 中国の学者が発見

骨粗しょう症で認知機能低下が加速 中国の学者が発見

人体の老化とアルツハイマー病が進行する過程で、骨細胞から分泌されたスクレロスチンが血液脳関門を突破し、認知機能の低下を引き起こすプロセスを示す図。(資料写真、南京=新華社配信)

 【新華社南京3月4日】中国の南京大学(江蘇省南京市)は1日、同大医学院付属鼓楼医院の研究チームが、骨粗しょう症により認知機能の衰えが加速することを発見したと発表した。アルツハイマー病など神経退行性疾患の臨床治療に新たな思考の筋道を示す発見であり、関係論文はこのほど、国際学術誌ネイチャー・メタボリズム電子版に掲載された。

 論文の共同責任著者、同大医学院の蔣青(しょう・せい)副院長によると、臨床では骨粗しょう症を患う高齢者に認知機能の低下がしばしば見られる一方、骨代謝が異常な水準になるアルツハイマー病患者も少なくないという。

 蒋氏は「人体の骨格が支持や運動の役割を持つだけでなく、非典型的な内分泌器官でもあることはこれまでの研究で示されている」と指摘。骨粗しょう症の高齢患者は骨形成を阻害するたんぱく質の「スクレロスチン」が骨から放出されることから、血液や脳脊髄液中のスクレロスチン濃度が高くなると説明した。

骨粗しょう症で認知機能低下が加速 中国の学者が発見

南京大学医学院の研究チーム。(資料写真、南京=新華社配信)

 骨格と大脳にはどのような内在的関係があるのか。研究は6年余りにおよんだ。論文の共同責任著者の一人、同大医学院の郭保生(かく・ほせい)副教授によると、マウス実験では、高齢マウスの骨細胞から分泌されるスクレロスチンが、血液から脳組織への病原体や有害物質の侵入を防ぐ血液脳関門を突破し、中枢神経細胞の信号伝達を抑制して神経細胞どうしの接合部「シナプス」の可塑性と完全性を損ない、認知機能を低下させたという。

 アルツハイマー病に罹患(りかん)したマウスのモデル実験では、スクレロスチン濃度が増加すると、認知機能を低下させる脳の染み「アミロイドプラーク」の形成速度が速まり、罹患マウスの認知機能が一層低下することも分かった。

 郭氏は「スクレロスチンが大脳に入ると健康な高齢者の認知機能がダメージを受け、アルツハイマー患者は病状が悪化することが研究を通じて明らかになった」と語った。

 蒋氏は、研究チームが現在、学際的臨床研究による今回の基礎研究成果のさらなる検証を計画していると説明。アルツハイマー病など神経退行性疾患の予防と治療に向け、新たな思考の筋道を探求していく考えを示した。(記者/陳席元)

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