映画撮影中の発砲死傷事件、武器担当者に有罪評決 米俳優ボールドウィン氏と共に訴追

米ニューメキシコ州で映画の撮影中、米俳優アレック・ボールドウィン氏(64)が小道具の拳銃を発砲し、撮影監督ら2人が死傷した事件をめぐり、撮影の武器担当者に6日、有罪評決が言い渡された。

同州で2011年に行われていた映画「Rust」の撮影では、ボールドウィン氏がリハーサル中に使用した小道具の拳銃から実弾が発射された。これにより撮影監督のハリナ・ハッチンス氏(42)が死亡し、監督のジョエル・ソウザ氏がけがを負った。

この事件をめぐり、ニューメキシコ州サンタフェの地区検事事務所は昨年2月、ボールドウィン氏と、武器担当だったハナ・グティレス=リード氏を過失致死罪などで訴追していた。

同州での裁判で、陪審員らは6日、3時間の審理の結果、グティレス=リード被告は過失致死罪について有罪との評決を出した。一方、証拠改ざんの罪については無罪とした。

同被告は、最長で禁錮1年6カ月の実刑判決が言い渡される可能性がある。

グティレス=リード被告は、評決を聞いている間、無表情のままだった。

ロイター通信によると、同被告は2人の係官に連行される際、泣いている母親に「大丈夫だから」と声をかけたという。

ハッチンス氏の両親と妹は、評決に「満足している」と述べた。

声明の中で遺族は、「私たちは、ハリナの死に責任のある他のすべての人が、その行動による法的結論に直面するよう、司法制度が継続して機能することを期待している」と付け加えた。

グティレス=リード被告に対する有罪評決は、ボールドウィン氏にとって朗報と受け止められそうだ。

ボールドウィン氏の弁護士は今後、武器はグティレス=リード被告の責任の下にあったため、ボールドウィン氏が撮影現場に実弾が紛れ込んでいることは予見できなかったと主張できるからだ。

検察側は、グティレス=リード被告が武器にダミーの弾丸だけが装填(そうてん)されていることの確認を怠ったと指摘。

「この事件は、絶え間なく続いた安全性の失敗が、結果的に人間を死に至らしめたものだ」と、カリ・T・モリッシー検事は6日の最終弁論で述べた。

同検事は陪審員らに、グティレス=リード被告は、撮影現場で弾薬の箱の中に実弾とダミー弾が混ざっていたことに気づかなかったのは「過失」であり、「不注意」かつ「軽率」だったと語った。

そして、そうした弾丸の一つが、ボールドウィン氏が使用した銃器に入っていたのだと主張した。

検察はさらに、同被告は事件の後、犠牲者のことよりも「自分のキャリアを心配していた」と付け加えた。

グティレス=リード被告は2週間の裁判で証言しなかったが、同被告の弁護人は最終弁論で、検察は同被告が銃撃事件の唯一の責任者であることを証明できなかったと述べた。

ジェイソン・ボウルズ弁護士は、「3、4日前に何が入っていたかわからないのだから、(弾薬の)箱は問題ではない」と陪審員に語り、被告は撮影現場に実弾があるとは知らなかったと主張した。

ボウルズ氏はまた、ボールドウィン氏は撮影スタッフに銃を向けた時に「脚本から外れた」のだと主張し、ボールドウィン氏を非難した。

「ボールドウィン氏が銃を向けることは脚本になかった」

「彼女(グティレス=リード被告)はボールドウィン氏があんなことをするとは知らなかった」

被告側は控訴する方針だという。

監督も証人として出廷

この裁判には、この事件で負傷したソウザ監督も証人として出廷した。

ソウザ氏は、自分が撃たれた後にグティレス=リード被告を見上げた時、 「ごめんなさい、ジョエル」と繰り返していたのを覚えていると証言した。

陪審員らは、ボールドウィン氏が持っていたコルト45口径リボルバーが暴発した銃撃直後の、感情を揺さぶる悲惨な映像も見せられた。

その中には、ハッチンズさんの最期の瞬間を映したとみられる、救急隊員が必死に救命活動をする映像もあった。

グティレス=リード被告は、銃撃後に麻薬の入った小さな袋を処分しようとしたという告発に起因する証拠改ざんについては、無罪となった。

映画のキャストとスタッフは昨年、ハッチンズさんを追悼するために同映画の撮影を終えた。ハッチンズさんの夫がエグゼクティブ・プロデューサーを務めた。

(英語記事 Hannah Gutierrez-Reed: Rust armourer guilty of Halyna Hutchins' death

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