イスラエル、ヨルダン川西岸への新たな入植計画を承認 3400戸超

イスラエル政府は6日、占領するパレスチナ自治区ヨルダン川西岸地区に、新たに3400戸以上の入植者向けの住宅を建設する計画を推進すると明らかにした。

住宅の7割はエルサレム東郊のマアレ・アドゥミムに建設される予定。その他は近郊のケダルと、ベツレヘムの南側のエフラトだという。

イスラエル政府高官は、マアレ・アドゥミムで2週間前にパレスチナ人が起こした襲撃事件への対抗措置だと述べた。この事件では死傷者が出ている。

こうした計画が承認されたのは、昨年6月以降で初めて。パレスチナ自治政府は計画を非難している。

ヨルダン川西岸と東エルサレムは、1967年の第3次中東戦争でイスラエルが占領。以来、160以上の入植地に70万人以上のユダヤ人が住んでいる。一方のパレスチナ人は、これらの地域は将来的にパレスチナ国家の一部になると考えている。

国際社会の大多数は入植を国際法違法だとみなしているが、イスラエルとアメリカはこの解釈に異議を唱えている。

イスラエルの現地紙ハアレツによると、ヨルダン川西岸地区でイスラエルの政策を推進している民生局高等委員会は6日、マアレ・アドゥミムに2452戸、エフラトに694戸、ケダルに330戸の計3476戸の入植者用住宅の開発計画を進めた。

同委員会を統括する極右のベザレル・スモトリッチ財務相によると、同地区ではこの1年で1万8515戸の入植者用住宅が承認されたという。

スモトリッチ氏は

「敵は我々に危害を加え、弱体化させようとするが、我々はこの土地で築き、築かれ続けるだろう」と述べた。

これに対し、イスラエルの反入植監視団体「ピース・ナウ」は、「イスラエル政府は将来の希望や平和、安全保障の代わりに、破壊への道を敷設している」と警告した。

同団体は、この計画はパレスチナとイスラエルのそれぞれの国家が隣り合って共存する「2国家解決」案に悪影響を及ぼすとみている。

ヨルダン川西岸地区に拠点を置くパレスチナ自治政府の外務省は、新たな計画とスモトリッチ氏の発言の両方を非難。

「入植はその土台から無効で非合法なものであり、暴力と戦争の連鎖の継続を明確に呼びかけるものだ」との声明を発表した。

ブリンケン米国務長官が批判

スモトリッチ氏は2月22日、マアレ・アドゥミム近郊でパレスチナ人が車を銃撃し、イスラエル人1人が死亡、数人が負傷した事件の数時間後に、住宅計画を提出した。同氏は銃撃事件について「安全保障面だけでなく、入植面からも断固とした措置」を取るべきだと述べていた。

アメリカのアントニー・ブリンケン国務長官は翌23日に、この決定に失望したと表明。さらに、入植は違法と断じ、多くのオブザーバーを驚かせた。アメリカは2019年のドナルド・トランプ政権時代、イスラエルの入植地を国際法違反とみなさないとし、それまでの方針を覆した経緯がある。

ブリンケン長官は当時、訪問中だったアルゼンチンで記者団に対し、「共和党政権下でも民主党政権下でも、新たな入植地は恒久的な和平を達成するためには逆効果だというのが、アメリカの長年の方針だ」と述べた。

「入植地は国際法とも矛盾している。我々の政権は入植地の拡大に断固反対する。我々の判断では、これはイスラエルの安全保障を弱めるだけであり、強化するものではない」

ピース・ナウは今年1月、昨年10月7日のイスラム組織ハマスによるイスラエル襲撃と、それに端を発したガザ地区での戦争が始まって以来、ヨルダン川西岸地区で「入植活動がかつてないほど急増している」と報告している。

同地区では同じ時期に暴力事件も急増している。

国連によると、昨年10月以降、東エルサレムを含むヨルダン川西岸地区とイスラエル国内で、武装グループのメンバーや襲撃者、一般市民を含む、少なくとも413人のパレスチナ人が紛争関連の事件で死亡した。

また、4人の治安部隊員を含む15人のイスラエル人が殺害されている。

(英語記事 Israel approves plans for 3,400 new homes in West Bank settlements

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社