“東昇の前に朝陽が現れてくれて良かったと思う”『ゴールド・ボーイ』岡田将生インタビュー

中国のベストセラー作家・紫金陳(ズー・ジンチェン)の代表作の一つであるサスペンス「坏小孩」(悪童たち)を原作に、舞台を沖縄に移して映画化された『ゴールド・ボーイ』が3月8日(金)より全国公開される。この度、SCREEN ONLINEでは主演・岡田将生へのインタビューを実施。劇中で頭脳戦を繰り広げる羽村仁成ら子役陣との共演、そしてある意味追い詰められていく東昇というキャラクターの役作りについて語ってくれた。(取材・文:清水久美子/写真:稲澤朝博/編集:SCREEN編集部)

「毎シーンが新鮮で、とても楽しかった」

――映画『ゴールド・ボーイ』は沖縄を舞台に、岡田さんが演じる東昇が、羽村仁成さんが演じる安室朝陽、星乃あんなさんが演じる上間夏月、前出燿志さんが演じる上間浩という子どもたち3人に脅され、主に東昇と朝陽が頭脳戦を繰り広げるクライム・エンターテインメントですよね。羽村さんたちとの共演はいかがでしたか?

「子どもたちとこういったお芝居をするのは、すごく楽しかったです。3人とも、何をするか分からないというところがあって。やっぱり大人になってくるとある程度、『こういう風に動くのかな』とか『こういう風にセリフを言うのかな』とか、いろいろ想像しながら現場に行くんですけど、子どもたちがどんなお芝居をするのか本当に一切、前情報がなかったんです。なので、毎シーンが新鮮で、とても楽しかったです」

Ⓒ2024 GOLD BOY

――殺人犯の東昇を演じるのは精神的に大変だったかと思いますが、子どもたちとのお芝居は楽しんで演じられたのですね。

「そうですね。東昇という役と向き合うのは自分自身がかなり消耗しましたが、羽村くんたちのお芝居はとても素敵だったので。僕が出ていない、子どもたちのシーンがたくさんありますが、撮影をした次の日にスタッフの方々からお話を聞くと、毎回すごく良かったとおっしゃっていたので、僕もより一層気を引き締めて東昇を演じなければと思いました。スタッフの方々とお話ししながら撮影を進められたことは、すごく良い現場だったなと思っています。スタッフ、キャストのみなさんが楽しみながらこの現場に臨んでくれていた気がして、それが作品にとっても良い方向に働いていたのではないかなと思います」

「東昇と朝陽は“表裏一体”だと思います」

――今回、東昇を演じる上で、声の出し方がいつもの岡田さんと違う印象を受けました。

「本当ですか? 特に意識してはいなかったのですが、この映画を撮影していた時、仕事の移動が多くて肉体的に疲労していたので、それを追い詰められている東昇の役に活かそうとは思っていました。今回はどのシーンも、ものすごく悩みながら演じていて、子どもたちにも『こういう風に動いた方がいいかもしれない』と話したりする場面もありました。今までとは違う目線で演じたのかもしれないですね。終わった後は本当にやり切ったという気持ちになって、スッキリした状態で気持ち良く沖縄から東京に帰れました」

――頭が良いはずの東昇が子どもの朝陽に先回りされたりしますよね。そんな東昇を、どのような気持ちで演じましたか?

「これは僕の個人的な意見なんですけど、僕は朝陽が東を上回る方がいいと思っています。僕は東昇の前に朝陽が現れてくれて良かったと思うし、東昇と朝陽は“表裏一体”だと思います。やっぱり、この映画は子どもたちが輝く映画なんですよね。犯罪なので、ダメな輝きなんですけど」

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――金子修介監督との共同作業はいかがでしたか?

「金子監督は基本的に何も言わないんです。本当に自由にやらせてもらった感じなんですが、だからこそ今回の役では不安になる部分も多々ありました。映画は監督のもので、監督について行こうと思って演じていましたが、『東昇としてこういう風にやった方がいいのではないか』と思った時は監督とお話させて頂くこともありました。広く意見を受け止めてくださる監督なので、現場はスムーズに、あまりストップすることなく撮影できました。そこは監督の懐の深さだと思います。僕のことを信頼してくださったのもうれしかったです。撮り方やカット割りはとても映画的で、ワクワクしました」

今年の目標は「自分の平均点を上げること」

――ここからはSCREENならではの質問なのですが、最近観た洋画と海外ドラマを教えてください。

「洋画は『いつかの君にもわかること』。とても好きな映画でした。時間ができたら『哀れなるものたち』を映画館に観に行きたいです。海外ドラマは『THE LAST OF US』。とても良くできていて、僕は第3話が大好きです!」

――観る作品はどのように選びますか?

「ジャンルは問わず、話題になっているものをチェックします。中でも家族をテーマにしているものは大好きなので、そういうジャンルのものは優先的に選びます」

――海外の監督や俳優で一緒に仕事したいのは誰ですか?

「機会があれば、どなたとでもご一緒したいです。アカデミー賞の授賞式で、『ドライブ・マイ・カー』の役柄から僕のことを“バッドボーイ”と言ってくれたジェーン・カンピオン監督とご一緒できたら最高ですね。俳優で言うと、ティモシー・シャラメは授賞式で遠くから見させていただきましたけど、メチャメチャかっこ良くて目が釘付けでした(笑)。いや、でも一緒に仕事をしたい人として名前を出すのはちょっと憚られるな……」

――口に出せば言霊になりますよ(笑)。今日は素敵なお話をたくさん聞かせていただき、ありがとうございました。では最後に、今後新たに挑戦してみたいことを教えてください。

「挑戦というか、自分の平均点を上げることを今年の目標にしています。2024年はスケジュールがパンパンなんですが、自分の精神面と体力面をコントロールして、一つ一つの仕事に向き合って精度を上げることが今年の目標であり、挑戦です。それと、人間的にもっと深くなりたいというのもあります。何事にも日々、集中力を高めることを極めていきたいです」

岡田将生 Masaki Okada

1989年8月15日生まれ。東京都出身。2006年、CM出演で芸能界でのキャリアをスタートさせ、翌07年『アヒルと鴨のコインロッカー』でスクリーンデビュー。初主演作『ホノカアボーイ』や『重力ピエロ』(ともに09)などで国内映画賞の新人賞を多数受賞し、主演ドラマ「オトメン(乙男)」シリーズ(09)で一躍人気の若手俳優となる。映画『告白』と『悪人』(ともに10)で日本アカデミー優秀助演男優賞を受賞し、その後もNHK大河ドラマ「平清盛」(12)、TVドラマ「リーガル・ハイ」(12、13)、「ST 赤と白の捜査ファイル」シリーズ(ドラマ版14、劇場版15)、「ゆとりですがなにか」(16)、NHK連続テレビ小説「なつぞら」(19)、「大豆田とわ子と三人の元夫」(21)など映画やドラマで幅広く活躍。近年の映画出演作に『ドライブ・マイ・カー』(21)、『1秒先の彼』(23)、『ゆとりですがなにか インターナショナル』(23)などがある。また、ナレーションを務める「SWITCHインタビュー 達人達」(Eテレ)は毎週金曜日に放送されている。

『ゴールド・ボーイ』2024年3月8日(金)全国公開

<STAFF>
企画:許 曄
製作総指揮:白 金(KING BAI)
監督:金子修介
原作:小説「坏小孩」(悪童たち)by ズー・ジンチェン(紫金陳)

<CAST>
岡田将生
黒木華
羽村仁成
星乃あんな
前出燿志
松井玲奈
北村一輝
江口洋介

配給:東京テアトル/チームジョイ
宣伝:ブシロードムーブ
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