ガザに臨時港、米軍が設置へ 支援物資届けるため

多くの人が飢餓にひんしているパレスチナ自治区ガザ地区で、人道支援を海から届けられるよう、米軍が仮設の港湾施設を設置すると、ジョー・バイデン米大統領が7日夜(日本時間8日午前)の一般教書演説で発表した。

バイデン大統領は連邦議会で行った一般教書演説で、「我々は、ガザ地区に入る人道援助を増やすため、国際的な取り組みの先頭に立ってきた」として、「私は今晩、米軍に対して、食料、水、医薬品、仮設シェルターなどを積んだ大型船の受け入れを可能にするため、地中海に面するガザの海岸に仮設の埠頭(ふとう)を設置する、緊急任務の先頭に立つよう指示する」と述べた。

大統領は、「アメリカ軍が地上に展開することはない」と強調したうえで、「この仮設埠頭によって、ガザに毎日入る人道援助の量を大幅に増やせるようになる」と述べた。

米当局によると、米軍は海上の船から海岸まで支援物資を運ぶため、臨時の桟橋などを設置する。これにより、パレスチナ人への人道支援は1日あたり「トラック数百台分増える」という。

埠頭の設置には「数週間」かかる。食料、水、医薬品、一時的なシェルターなどを積んだ大型船が停泊できるようになる。

最初の積み荷はキプロス経由で運び込まれる予定。キプロスではイスラエルが積み荷を検査する。

道路の建設や陸上での安全確保を、誰が担うのかは不明。そのため、この計画が成功するのかは不透明な状況だ。

米軍がガザに駐留する予定はないという。

国連は、ガザの人口の4分の1が飢餓寸前の状況にあると警告している。

ガザでは、イスラエル軍が空爆や地上作戦を続けている。ガザのイスラム組織ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害、253人を人質として連れ去った。

ハマスが運営するガザ保健当局は、イスラエル軍の作戦が始まって以降、ガザでは3万800人以上が殺害されたとしている。

国連特別報告者がイスラエルを非難

ガザには水深の深い港がない。そのためアメリカは何週間か前から、支援物資を緊急に運び入れる方法を検討してきた。アメリカはガザの危機的状況をめぐり、改善を求めてイスラエルへの圧力を強め、いら立ちを表明してきた。

BBCがアメリカで提携する米CBSニュースに米当局者が語ったところでは、ヴァージニア州フォート・ストーリーを拠点とする第7輸送旅団が桟橋を設置する計画がある。この旅団は機動的な迅速展開が可能だが、軍の船舶はまだアメリカを出発していないという。

世界保健機関(WHO)は今週、ガザ北部で子どもたちが餓死していると警告した。推定30万人のパレスチナ人が、食料も清潔な水もほとんどない状態で暮らしているとした。

支援物資を運ぶ車両は現在、エジプトが管理するラファ検問所と、イスラエルが管理するケレム・シャローム検問所を通ってガザ南部に入っている。一方、イスラエルが地上作戦を最初に開始したガザ北部では、ここ数カ月、支援がほぼ届かなくなっている。

中東地域で展開する米海軍第五艦隊の司令官だったケヴィン・ドネガン退役中将は、BBCラジオに対して、港湾設置計画は「実施可能」だが、大量の物資の搬入という意味ではやはり陸路経路が最も効率的だと話した。さらに、港から陸揚げした援助物資を安全に住民に届けるための、「しっかりした配布ネットワーク」が重要だと指摘した。

絶望的な状況が悪化するなか、先週には支援物資の車列に近づいた100人以上が命を奪われた。パレスチナ人らは、死者の大半はイスラエル軍によって射殺されたとした。物資輸送を管理する立場のイスラエル軍は、ほとんどは群衆の殺到によって死亡したとした。

世界食糧計画(WFP)は2月20日、ガザ北部への3週間ぶりの支援の車列が、秩序の崩壊による暴力的な略奪などに遭ったため、北部への食料輸送を中断すると発表した。

アメリカなどの国々は、支援物資を空から投下している。人道支援団体は、この方法は最終手段であり、需要の急増に応えるものではないとしている。

食料の権利に関する国連特別報告者のマイケル・ファクリ氏は7日、国連人権理事会で演説し、イスラエルを「ガザのパレスチナ人に対して飢餓キャンペーン」を展開していると非難。各国に向けて、「ガザでの飢餓の映像は耐え難いが、あなたたちは何もしていない」と訴えた。

これに対し、イスラエル国連代表部の法律顧問イエラ・シトリン氏は、「イスラエルが飢餓を戦争の道具として使っているという主張を、イスラエルは完全に否定する」と述べ、抗議のため退席した。

ハマスが停戦協議を離れる

一方、エジプト・カイロで開かれていたガザでの停戦をめぐる協議で、ハマスの代表団は合意のないまま現地を去った。イスラエルとの間接的な交渉は続けるとしている。

イスラム教のラマダン(断食月)が来週始まるまでに、40日間の停戦が実現することが期待されていた。

仲介役のエジプトとカタールは、ハマスがイスラエル人の人質を解放し、イスラエルが刑務所に収監しているパレスチナ人を釈放するという条件での停戦合意を目指しているが、困難な状況が続いている。

(英語記事 US to set up temporary port on Gaza coast for aid delivery

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