『M-1グランプリ』準々決勝に進出し、所属する「ヨシモト∞ホール」でもレギュラーメンバー入り、パーソナリティを務めるラジオ『N93カラタチの最果てのセンセイ!』(TBS Podcast)も好評放送中と、今、目が離せないお笑いコンビ・カラタチ(大山和也、前田壮太)。
アイドルオタク(櫻坂46・武元唯衣推し)の前田と、PCゲーム(エロゲ)オタクの大山が対立する漫才やラジオは斬新で、お笑いファン以外の新たなファン層も獲得している。今回、そんな“気になりすぎる”二人にニュースクランチ編集部がインタビューした。
▲カラタチ(大山和也 / 前田壮太)【WANI BOOKS-“NewsCrunch”-Interview】
「2ちゃんねる」に悪口を書いていました
――芸人になろうと思ったきっかけから教えてください。
前田壮太(以下、前田):大学に入るタイミングで地元の宮崎から関東に出てきたとき、『AKBINGO!』(日本テレビ系)を見て、AKB48の握手会に行くようになったんですけど、見ているうちに“この番組に入ってみたい”と思うようになりました。
当時、MCのバッドボーイズさんのほかにも、元カナリアのボン(ざわーるど)さん、南海キャンディーズの山里(亮太)さんもたびたび出ていて。“僕は、お金を払って会いに行っているのに、この人たちは、タダでメンバーとゲームをやってる……いいなぁ”と思ったんです。
――(笑)。そのお二人に対しては、エピソードがあるとお聞きしました。
前田:はい。当時、大学生だったんですけど、「2ちゃんねる」に山里さんとボンさんの悪口を書いていました。
大山和也(以下、大山):本当に良くない!
▲前田「2ちゃんねるに山里さんとボンさんの悪口を書いていました」
――(笑)。大山さんはいかがですか?
大山:僕はリーマンショックが原因ですね。大学の友達の影響もあって、少しずつお笑いに興味を持ち始めたんですが、その友達に誘われて、2008年のM-1敗者復活戦に行ったんですよ。
その年、オードリーさんが勝ち上がって、次の日から爆発的に売れたんです。お二人の芸歴を調べたら8年目。当時、お笑いを知らなさ過ぎて“お笑いって、8年やったら必ず売れるんだ!”と勝手に思っちゃって。
リーマンショックで就職活動もキツイし、“8年我慢したら、オードリーさんみたいになれるんだったら”と勘違いして、大学4年のとき、NSC(吉本興業の養成所)に通い始めました。
▲大山「8年我慢したら、オードリーさんみたいになれんだと思ってました」
山田ナビスコやノンスタ石田からのアドバイス
――お二人の出会いはNSCですが、コンビを組んだきっかけは?
大山:こいつ(前田)の前のコンビは、元相方がぶっ飛んだネタを書いていたんですけど、こいつが書いたネタを1回だけ披露したことがあって、それを見たときに“とんでもないセンスがあるかもしれないぞ”と思ったんですよ。(前田が)コンビを解散したとき、僕から声をかけてコンビを組みました。
――今のスタイルには、どのようにしてたどり着いたのですか?
前田:作家の山田ナビスコさんに、ネタ見せで「お前、普段は何やってんの?」と聞かれて「アイドルが好きで、握手会に行っています」と答えたら「じゃあ、それで1本ネタ作ってきて」と言われて。
最初は僕がアイドルオタクで、一般人(大山)がツッコむ形でやっていたんですけど、ナビスコさんから「お前は(大山)何やってんだ?」と聞かれて。「アニメとかエロゲが好きです」と返したら、今度はアニメでネタを作ることになって……。
――そうして現在のアイドルオタクとアニメオタクの対立構造のネタになるわけですね。ネタの練習はどうやってされているんですか?
大山:コンビって、2人そろってネタ合わせするのが普通だと思うんですけど、僕らは基本的にコンビでネタ合わせをしないんですよ。お互いソロで練習したあと、本番直前に集合してちょこっとやるだけ。
こいつ(前田)が望んでるからやっていることなんです。それでやるのは構わないんですけど、(2人で練習しないから)間(ま)が全然合わないし、こんなに下手なんだったら、一緒にやったほうがいいとは思うんですけどね。
前田:自分の中で“このセリフつまづきそうだな”という部分があるとき、自分1人だったら、同じところを何回でも練習できるじゃないですか。
大山:そこばっかり練習するから、他の部分がおろそかになってんだよ!
――(笑)。早口ではありますが、お二人の言葉がすごく聞き取りやすいので、鍛錬をしているのかと思っていました。
大山:それは、単純に“オタクだから”じゃないですかね。プライベートでは、オタクの友達もいるので、会話のスピードもこんな感じ。日常であのスピードだから、早口でも伝わるように、自然と身についているのかもしれないですね。
前田:一度、作家さんに「後ろの席の人が聞こえないかもしれないから、もうちょっと声を張ったほうがいいんじゃないか」と言われたこともあったんですけど、NON STYLEの石田(明)さんに見てもらったら「逆に今のままのほうが、お客さんが聞こうとするからいいんじゃない?」と言われたことがありました。
10年以上も結果が出せなかったのに続けられた理由
――ラジオ『最果てのセンセイ!』が人気急上昇中です。お互い好きなことを話せる場所になっているんじゃないですか。
前田:確かにそうですね。今までは、この1週間で起きたオタ活のことを話す場所がなかったんですけど、話せる場所があるというのはいいですね。
大山:芸人さんがよくラジオのことを「ホーム」と言いますけど……。
前田:相方にとっては完全に「アウェイ」です。
――リスナーからイジられたり、アンチが出てきたりしていますよね(笑)。
大山:こいつが煽るからいけないんですよ!
――ラジオがネタに良い影響をおよぼしていることはありますか?
前田:自覚はないですし、ネタも良くなったとは思わないですけど、ただ体感としてウケやすくなっているとは思います。
大山:ラジオで人柄を知ってもらえたのが大きいかもしれないですね。
前田:今までだったら、劇場でウケても客票が入らないことが多かったんですけど、ラジオを始めてから露骨に票数が入るようになりました。
――コンビとしてのターニングポイントとなる出来事があれば教えてください。
大山:本当に10年以上、なんの結果も出していなかったんで、よく「なんで続けてんの?」と言われていたんですよ。なぜ続けられたかと言うと、お互いお笑いが2番目とか3番目に位置しているからなんです。二人とも趣味に逃げているから、お笑いの結果が気にならなさすぎない。お笑いだけに集中していたら、たぶん折れていたんじゃないですかね。
前田:M-1に憧れて芸人になっていたら、たぶん3~4年目でやめていたと思います。『AKBINGO!』に憧れていたから続けられたんだと思います。
――(笑)。
前田:僕は、芸人としてのターニングポイントは何もないんですけど、オタクとしてのターニングポイントとしては、『アメト――ク!』(テレビ朝日系)に出たときに、櫻坂46が好きだと話したら、オタク仲間がいっぱいできたことです。一晩で6000人ぐらいオタクからフォローされて、いっぱいDMも来て、会場でも話しかけられるようになりました。
▲趣味に逃げている部分があったから続けてこれたと話す二人
相席山添に「どうなるかわかっていますよね?」
――ここからは、それぞれのことをお聞きしたいです。前田さんは推しの武元さんのどこに魅力を感じたんですか?
前田:正直、顔ですね。あと、初めて認知してくれたのも大きかったです。初めて認知された日、僕は「いきなりステーキ」を食べに行きました。“オタクってテンションが上がると、ステーキを食いに行くんだ!”と思いましたね。
大山:そんなことないだろ。お前だけだよ。
――握手会などで言われてうれしかったことや印象的だったことは?
前田:最近だと、M-1の準々決勝のワイルドカードに投票してくれたことです。あと、(武元は)明るい子なので、握手会に行ったら「ヤッホー!」みたいな感じなんですけど、『アメト――ク!』で僕の存在を知ってくれたのか、それ以降は、挨拶が「お疲れさまです」に変わって……。
ただのオタクの1人にすぎなかった僕が、売れてはないけど業界の先輩だと知って、しっかり挨拶をしてくれるようになりました(笑)。そこは優越感もあるし、寂しい部分もあるというか……。
――武元さんはバラエティーでも活躍中です。共演している芸人さんに対して、どう思っているんですか?
前田:ムカついてます。
――(笑)。武元さんは、相席スタートの山添寛さんと共演されている印象があります。許せないエピソードなどありますか?
前田:櫻坂46がフランスでライブをしたとき、番組内でお土産を渡すために、(武元が山添に)モナリザのライターをプレゼントしたのに、それを山添さんが捨てたんですよ! 山添さんが空港でライターを3つ持っていたらしいんですけど、2つだったら飛行機に持ち込めると。その3つから、武元さんのやつを捨てたらしくて。
大山:オイルが切れたからでしょ。使い捨てだったし、しょうがないよ。
前田:それで僕はブチギレまして。山添さんにLINEで「どうなるかわかっていますよね?」と警告しました。
――警告!(笑) そんな武元さんとリモートで共演されたんですよね?
前田:そうですね。でも、僕のことを危険だと思ったのか、挨拶もさせてもらえませんでした。隣のスタジオで撮影をしていたのでドキドキしていたら、(収録後に)スタッフさんがレッドブルとウィダーinゼリーを渡してきて、そのままタクシーに押し込まれました。
――(笑)。『ウチのガヤがすみません!』(日本テレビ系)では、同じく推しがいる日向坂46さんとも共演されました。
前田:収録前、僕だけディレクターさんに個別で呼びだされて「抱きついたりするのはやめてくだい」と言われました。
大山:やるわけないのに(笑)。
大山は昨年の『M-1』をエロゲしながら見てた?
――大山さんがエロゲに興味を持ったきっかけは?
大山:一時期、パソコンでゲームをするのがオシャレという時代があったんですよ。で、友達が「すごいゲームがあるぞ!」と持ってきたのがエロゲで、そこからハマりました。当時は、自分のパソコンを持っていなかったんで、家族共有のパソコンに、バレないようにインストールして、夜中にこっそりプレイするっていう。デスクトップにアイコンを作っちゃうとバレちゃうんで、アイコンを消してやっていましたね(笑)。
――昨年のM-1はエロゲをしながら見ていたという噂がありますが……。
大山:違うんですよ。エロゲのなかにも、ゲーム性のあるエロゲがありまして。冒険するタイプのエロゲだったので、ネタのときはネタに集中して、合間にモンスターを倒してレベル上げをする……という作業をやっていただけなんですよ。
前田:山田邦子さんが話しているときにレベル上げしていたってこと?
大山:なんでそこを切り取るんだよ。
――(笑)。エロゲ業界には、貢献したい気持ちも大きいんですか?
大山:そうですね。ラジオで、お互いの好きなジャンルのニュースを紹介する「最果てのオタニュース」というコーナーがあるんですけど、そこで紹介するエロゲを常に探していて、魅力的な部分があったら積極的に紹介しています。隠れて普及している感じですね。
▲ラジオを始めてから劇場での反応も変わったという
――最後に今後の目標を教えてください。
大山:どちらもオタクなんで、それぞれ特化した仕事があればやっていきたいですね。自分だったら、好きなシナリオライターさん、絵師さんにお願いして、エロゲのプロデュースをしてみたいです。僕が爆発的に売れたら、クラウドファンディングでお金を集めることもできると思うので、オファーをかけて作っていただきたいです。
前田:直に推しに会いたいです。推しと直接会える「リアルミーグリ」というイベントもあるんですけど、それはアクリル板越しなんですよ。僕、コンタクトをつけているんですけど、これもコンタクト越しになっちゃうじゃないですか。だから、コンタクトを外して裸眼で推しに会いたい。推しと共演できたら、あとは余生みたいなものです。
(取材:浜瀬 将樹)