追憶の商店街、30年かけミニチュア再現 岡山・美作の女性、古里愛込め 寄贈受けた地元公民館が特別展示

春名さんが丁寧に仕上げた生活用品店や映画館のミニチュアハウス

昨年8月に76歳で亡くなった岡山県美作市の春名和子さんは30年近く、ミニチュアハウスの制作を続けていた。「無くなってしまった商店街を再現したい」。題材は、生まれ育った同市江見がにぎわっていた1955(昭和30)年前後の商店や施設。思いの詰まった作品が古里江見の作東公民館で特別展示され、温かな郷愁の世界へと誘う。

椅子やテーブル、ショーケースの見本も再現された食堂

丼ものやカレーライスの見本を収めたショーケースが目を引く食堂、ほうきに七輪、食器など多様な商品を扱う生活用品店、スター俳優のポスターが入り口付近を彩る映画館―。実物の10分の1以下のサイズながら、丁寧に仕上げた作品からは商店街の活気が伝わってくる。

和服だけでなく学生服も扱っていた呉服店

「呉服店なのになぜか学校の制服が置いてあり、ワンサイズ大きめを買うのが定番でした」。生前に書き残された説明文も、当時の生活をうかがわせる。

春名さんは、思い出を形にしようと木や粘土、発泡スチロールを使い、独学で制作を始めた。がんを患ってから10年以上に及ぶ闘病中も体の調子が良いときに少しずつ進め、約20点を残した。

作品は「処分して」と語っていたというが、作東公民館から保管の申し出を受けた家族が、主に江見に関係する10点余りの寄贈を決めた。夫の正則さん(79)は「作品と一緒に思い出も古里に帰り、本人も喜んでいると思う」と話す。

公民館では「『昭和の江見』回想展」と題して4月18日まで、当時の商店街に近い店の並びで作品を展示。同年代の写真も掲げ、会場は懐かしい雰囲気に包まれている。平日午前8時半から午後5時まで。入場無料。作品は会期終了後も飾り棚に入れて常設展示する予定。問い合わせは作東公民館(0868―75―0890)。

春名和子さん

(まいどなニュース/山陽新聞)

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