台湾の〈大手IT系企業〉経営者が「営業部」も「会議」もない会社で“莫大な利益”を生み出せる理由【ベストセラー作家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

「生きるうえで、何を大切にするか」は私たちにとって永遠のテーマかもしれません。「もっとお金を稼ぎたい」「もっと買いたい」となにかを得ることが最優先になることで「膨大な時間を使い、いましかない時間が奪われてしまう」と、ベストセラー作家の有川真由美氏は言います。有川氏の著書『お金の不安がなくなる小さな習慣』より、「時間」を有効に使うことの重要性について見ていきましょう。

「時間をお金で買う」という発想をもつ

“時間”は有限で、私たちの命そのもの。だれにも1日24時間、等しく与えられています。時間をどう配分するかがお金のゆたかさ、人生のゆたかさにもつながるのです。

お金の稼ぎ力・遣い方だけでなく、生活の知恵、信頼関係など自分のなかの“資産”をふやして不安をなくすためにも、時間の有効な使い方をしたいもの。

そこで、まず、取り入れていただきたい習慣が「時間をお金で買う」という考え方。私たちは、とかく「もっと稼がなきゃ」「もっと安く買わなきゃ」とお金のために動き回って忙しく、“時間貧乏”になりがち。いつも「もっと時間があれば〇〇できるのに」などと考えてしまうのではないでしょうか。

多少、お金を支払ったり、損したりしても、“時間”をとったほうが得策なこともあります。たとえば、数百円の安売りを求めて、往復1時間かかるスーパーに行くなら、往復10分のコンビニで買ったほうが、50分ほかのことに使えます。いちいち損得を考えて細かいところでケチらないほうが、自分の活動に専念できます。

忙しいのに節約しすぎると、疲れとストレスでまいってしまうでしょう。お金を支払っても、時間とエネルギーを温存したほうが、笑顔で家族と過ごせたり、いい仕事ができたりするはず。

そもそも「もっとお金を稼ぎたい」「もっと買いたい」となにかを得ることが生活の最優先になると、膨大な時間を使い、いましかない時間が奪われてしまいます。

死ぬときに後悔することは「挑戦すればよかった」「健康を意識すればよかった」「人との時間を大切にすればよかった」「仕事ばかりしなければよかった」とか。

これらは“時間配分”と、“時間を買うこと”で解決できるのです。私たちは自分を幸せにする責任があります。自分にとっての“大切な時間”をつねに見直して、自分の時間を取り戻し、“時間リッチ”になろうではありませんか。

「優先事項」をつける習慣が、時間とお金の「浪費」を減らす

お金がなかなか貯まらない、いつも時間が足りないという人の最大の原因は、「優先順位」をつける習慣がないことです。「いま、なにを優先すべきか」を意識する習慣がないから、なんとなくお金や時間を使って、いつの間にか足りなくなってしまう。だらだらとSNSを見たり、ゲームをしたり、ショッピングセンターをふらついたりと時間を浪費しがちな人は、お金もムダに遣っているはずです。

そうならないために「一日の優先事項」を3つ以内に絞って“先取り”する習慣をつけましょう。給与を“先取り貯金”するように、最初にその時間を確保するのです。

たとえば「午後は仕事、18時からは家族団らん、21時からは英会話レッスン」などと決めて、ほかのことはしないようにします。休日は「親孝行メインの日」「大掃除と買い出しの日」「読みたかった本に没頭する日」などの優先事項があるでしょう。

また、今日の仕事の優先事項も3つに絞って、できるだけ大事なことから先に終わらせましょう。優先する仕事がわかっていないから、あれもこれも手をつけたりして、一日の終わりに「結局、なにも終わっていない!」となるわけです。

1年の始まりに今年やりたいことの優先事項を決めて、先にスケジュール帳に書き込んでしまうのもおすすめ。家族旅行、絵画制作、資格試験の勉強と受験、ボランティアへの参加など大切なことは大抵、「緊急でないけれど、重要なこと」なので、「時間があるときにしよう」などと考えていると、いつまでたっても実現しません。

時間には容量があるので、器のなかにまず大きくて大事な“石”を入れる。初めに小石ばかり入れていては、大事な石が入らなくなってしまうのです。

頭のなかで「優先事項、優先事項」と考えるクセをつけると、むやみに浪費することが劇的に減って、時間とお金に困らない生活になってくるはずです。

「やらないこと」を決めて、お金と時間と心の余裕をつくる

台湾の大企業の社長を取材したとき、こう言われたことがありました。

「うちの会社は営業部がない。いい商品を作ることだけに専念すれば、世界中から買いに来てくれる。私は会議もしないし、出社も月数回。それでじゅうぶん事足りる」

高齢の社長は、先見の明があり、最先端のIT技術で大富豪になった人。のんびり暮らしているように見えて、つぎつぎと莫大な利益を生み出していく。また、「子孫に財産を残さない」とも決めていて、その理由は「お金を与えては、彼らが自分でお金を生み出す楽しみと喜びを奪ってしまうから」だとか。

社長はものごとの本質を見つめていて「自分のやるべきこと」を徹底的に追求するために、ほかのことは全部、「やらない」と決めているのです。

それに感化され、私も「やらないこと」を決めて、まず自分の仕事だけに専念したところ、ものごとがうまく回り始めました。とくに、心が後ろ向きになる仕事やつき合いはすべて「やらない」。すると、時間と気持ちの余裕ができるので、新しい挑戦や身近な人間関係など、そもそも大切だったことに目が向くようになったのです。

私たちはたくさんこなすことが有効な時間術と思い込み、スケジュール帳に多くのタスクを詰め込みがちですが、時間の使い方の基本は“足し算”ではなく“引き算”。「やること」より「やらないこと」を決めたほうが、自分を生かせます。

「やらないこと」は小さなことでいいのです。「ランチ外食につき合う」「課金してまでゲームをする」「仕事帰りにコンビニに寄る」「新機種のスマホを買う」など経済的にも悪影響なのにルーティン化している習慣があるかもしれません。

やめるのがむずかしいときは、なにか別の行動に置き換えるのも一策です。

時間の“断捨離”もものと同じで、時間とお金のムダをなくすだけでなく、頭をすっきり整理して、自分の価値観を見つめ直すことにつながるのです。

有川 真由美
作家

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