カナダ、国連のガザ支援機関に資金拠出再開へ

カナダ政府は8日、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)への資金拠出を再開すると発表した。イスラム組織ハマスによる昨年10月7日のイスラエル奇襲攻撃に一部のUNRWA職員が関与していたというイスラエルの指摘を受け、カナダを含む16カ国が資金拠出を停止していた。

カナダ政府は、イスラエルが資料を提出した一部のUNRWA職員に関する調査は継続するものの、資金拠出を再開すると発表した。

カナダ政府のアーメッド・フッセン国際開発相は8日午後に記者会見し、「カナダは、パレスチナの民間人が直面する緊急事態に今よりも対応できるよう、UNRWAへの資金拠出を再開する。カナダは引き続き、一部のUNRWAスタッフに対する疑惑を深刻に受け止め、その責任追及や改革のため、カナダは今後もUNRWAや国連と緊密にかかわっていく」と述べた。

フッセン氏は、拠出再開は、職員への疑惑について「精力的な調査が進行中だという認識」のもとで決定したと説明した。

これに加えてカナダ空軍は、ガザ地区への援助物資投下に使うための物資用パラシュート300個をヨルダンに寄付するという。

カナダ政府は、「資金拠出を一時停止していた間、UNRWAへの通常の定期的な資金提供が行われなかったことはない」と説明。「カナダの拠出が予定どおり行われると明確にすることは、この不可欠な機関の間もない破綻(はたん)を回避する一助になる」とした。

2022年統計によると、UNRWAへの拠出国としてカナダは11番目。

UNRWAの一部職員がハマスによる攻撃にかかわっていたと示す資料を、イスラエルはアメリカなどに提出。これを受けて国連が内部監査に着手するほか、フランスのカトリーヌ・コロナ前外相が独自調査を主導している。

UNRWAはガザ地区で活動する最大の国連機関。ガザ地区のほか、ヨルダン川西岸、ヨルダン、レバノンでパレスチナ人に医療や教育など人道支援を提供する。ガザ地区内では約1万3000人を雇っている。ガザに対しては欧州連合(EU)、イギリス、アメリカなどが8日、ガザに海から援助物資を届けるため、海上援助回廊の運用を週末にも開始すると発表した。

アメリカのジョー・バイデン大統領は7日、「食料、水、医薬品、仮設シェルターなどを積んだ大型船の受け入れを可能にするため、地中海に面するガザの海岸に仮設の埠頭(ふとう)を設置する、緊急任務の先頭に立つよう米軍に指示する」と述べた。

アメリカは2日、ヨルダン空軍と共にガザ地区への援助物資投下を開始した。

国連は、支援を届けるための行動を起こさなくては、ガザが飢饉(ききん)に襲われるのは「ほぼ避けがたい」事態だと警告。世界保健機関(WHO)は、援助物資がほとんど届いていないガザ北部では、子供たちの餓死が続いていると報告している。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を奇襲し、約1200人を殺害、253人をガザ地区へ連れ去った。イスラエルは報復としてガザ地区への大規模な空爆と地上作戦を開始した。

ハマス運営のガザ保健省によると、同地区ではこれまでに女性と子供を中心に3万800人以上が殺害された。

(英語記事 UNRWA: Canada to resume funding for UN agency for Palestinian refugees

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