「誰にどう助けを」 重度の障害ある娘と暮らす母親 個別避難計画の作成、順番はまだ 募る不安 長崎

ベッドで横になる渚沙さん(手前)。令子さんは「停電になったら誰にどう助けを求めたらいいか」と不安を口にする=長崎市内の自宅

 「(避難せず)ここにいようと決めました。建物がつぶれない限りは」。長崎市内のマンションに暮らす令子さん(62)は災害が発生したら、自力で動けない長女と自宅に残ると決めた。だが「停電になったら誰にどう助けを求めたらいいか」と不安を口にする。
 長女の渚沙さん(34)は、難病に指定されている「アイカルディ症候群」で生まれつき、重度の身体障害と知的障害がある。目はあまり見えず、気管切開したため、声が発せず、意思表示も難しい。
 令子さんらが渚沙さんを抱えて車いすに移し、週6日はデイサービスに通う。自宅に戻ると、令子さんがたんの吸引など医療的ケアをする。酸素吸入のため電動の医療機器は欠かせず、移動時や停電に備え、酸素ボンベも常備する。
 6年前、自宅をリフォームし、棚が倒れても大丈夫な場所に、渚沙さんのベッドの位置を変えた。受診する病院に災害時の受け入れを相談しているが、ベッドが確保されないため、長いすなどで横になることになる。
 今年1月の能登半島地震を受け、夫(60)と災害が起きた際、避難するか話し合った。出した結論は「自宅にとどまる」。ただ、停電すれば、自宅にはいられない。1階に下りるエレベーターも止まるため、渚沙さんを抱えて階段を下りないといけない。
 1月末、長崎市の担当課に避難行動要支援者の対象になっているか電話で問い合わせた。名簿に登録されていて、関係者への情報提供にも同意しているとのことだった。だが、個別避難計画の作成には「優先順位に沿って作成するので、まだ順番が回ってこない」という趣旨の回答があった。
 市は優先度の高い要支援者の計画作成を2025年度中に終えたい考えのため、渚沙さんの計画はそれ以降になるとみられる。「娘と2人で家にいて、停電したら。車いすに乗せることはできるが、それ以上は無理。どうしたらいいか」。令子さんの不安は尽きない。

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