BTS SUGA、兵役中もファンに注がれる愛情 『シュチタ』で語られてきたエピソードの数々

3月9日は、BTS SUGAの誕生日だ。1993年生まれのSUGAは、2024年で満31歳に。昨年9月22日より社会服務要員として兵役履行中であることから、例年のようにWeverse Liveなどで誕生日の瞬間を一緒にお祝いすることは叶わないが、それでも世界中のARMY(BTSのファンの呼称)が各地でセンイル(誕生日)イベントを開催するなど、大いに盛り上がりを見せた。

兵役に伴いアーティスト活動を休止中にもかかわらず、ARMYたちが彼らに注ぐ愛情は冷める気配はない。その理由は彼らが離れてしまう期間中にもARMYたちをさみしくさせまいと様々なコンテンツを準備していってくれたからだろう。

SUGAは、兵役履行する直前の9月17日にWeverse Liveにてライブ配信を実施。BTSの公式YouTubeチャンネル『BANGTANTV』内にて展開している、トークコンテンツ「슈취타(シュチタ/SUGAと酔う時間)」について「たくさん撮っておいたので、期待してください」と語っていた。その言葉通り、彼が服務開始した後も定期的にコンテンツは更新され、SUGAの姿を待ちわびるARMYたちの心を温めてきた。

2023年10月以降にアップされた動画だけを振り返っても、錚々たるメンバーが名を連ねる。ベテランアーティストのキム・ジョンワン(NELL)に、同じ1993年生まれのテミン(SHINee)、一方で1993年にデビューした歌手・俳優オム・ジョンファに、BTSのJINの親友と呼ばれる俳優のキム・ナムギル。さらに韓国では「国民の妹」の愛称を持つ歌姫・IUに、プライベートでもご飯を食べに行く仲のジョン・ヨンファ(CNBLUE)、SUGAとは正反対な性格に見えるが親睦の深い俳優のイ・ソンギョンに、SUGAを公私共に支えてきた作曲家のチャン・イジョンと、3月8日現在までに27のエピソードが公開中だ。

印象的なのは出演ゲストの口から「『シュチタ』に出たかった」「よく見ていた」という言葉が多く聞かれたこと。お酒を酌み交わしながらざっくばらんに話すという趣旨のバラエティ番組という形はとっているものの、その実は真摯な音楽トークができる場であることが広く浸透しているようだ。その印象を作っているのは、まぎれもなくSUGAの誠実さにある。

楽しいことはもちろん、思い返すのも苦しいこと、なかなか整理しきれない感情をも、音楽にしたためてきたSUGA。トークにも自然とそんな彼の人生観がにじみ出る。SUGAのスタンスに触発される形で、ゲストたちもまた多くの試練を乗り越えて音楽や芝居に思いを込めてきたのだと共鳴するのだ。

エピソード27ではチャン・イジョンが「公の場で、この話をするのは本当に初めてなんだけど……」とステージで歌えなくなった当時の心境を語る場面もあった。原因のわからないその症状は、次第に日常の会話にも影響を及ぼすほどになっていったとも。

そんなチャン・イジョンを車に乗せて、運転しながら「僕はイジョンさんの声に早く戻ってきてほしいんだ」「お金はいくらかかってもサポートするから、そういうことの心配はしないで治療を受けてみて」と寄り添ったのがSUGAだった。家族でさえもそんなふうに声を掛けてくれることはなかったといい、「(SUGAの言葉に)窓を見ながらちょっと泣いたんだよ、知らなかったでしょ?」といたずらっぽく聞くチャン・イジョンに、「運転してたから」と照れ笑いをするSUGAの素の表情が微笑ましかった。

そうした深い話がじっくりと聞けるのも、この『シュチタ』ならではだ。兵役を開始する前の多忙な時期に、いわゆる「撮り溜め」をしたとは思えないほど、1人ひとりとじっくり向き合っているのが伝わってくる。お互いの才能にリスペクトを示し、その背景にある生き様に感銘を受け、そしてまたそれぞれの作品作りに刺激を与え合う。この時間を通じて、表現者たちがいいものを吸収しているのを目の当たりにしているような感覚さえある。

とはいえ、そんな「撮り溜め」も永遠には続くものではなく、一旦このエピソード27までの公開となった。最後の挨拶でSUGAは「堅苦しい挨拶はしたくありません。もう少しお待ちいただけたら7人で元気よく駆け回りながらステージをする僕たちをお見せできると思います。その日を何度も想像しています。目を覚ましたらきっと僕たちがいると思いますよ」と実に彼らしいメッセージで締めくくる。

残念な思いはあるものの、何度も見返したくなる濃厚なコンテンツをこれだけ残してくれたことにまず拍手を送りたい……と、思っていたところに今度は、初ソロワールドツアーの最終公演を記録した『SUGA | Agust D TOUR ‘D-DAY’ THE MOVIE』の公開が発表されたではないか。

4月26日より全国ロードショーするというこの映画は、ライブ映像のほか舞台裏の素顔にも密着。さらにゲストとして登場したRM、JIMIN、JUNG KOOKとのコラボステージも、劇場のパワフルなサウンドで堪能できるというから必見だ。寂しがっている暇を与えない勢いでARMYを楽しませ続けるBTS。SUGAの言った通り「目を覚ましたらその日を迎えていた」という感覚になることを願いながら、再会を待ちたい。

(文=佐藤結衣)

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