サンリオキャラクターの声、なぜ耳から離れない? シナモンの楽曲がTikTokでバズった理由を考察

白くてふわふわとした見た目と、優しい雰囲気が特徴的なサンリオの人気キャラクター・シナモン。世代や性別を問わず多くの人から愛されているシナモンは、2019年に『第32回ジュノン・スーパーボーイ・コンテスト グランプリ』に出場し審査員特別賞を受賞、2020年にはアイドルプロジェクトの一環として『ふれーふれーがんばれ!/しあわせのラベル』でポニーキャニオンからCDデビューするなど、音楽シーンにおいても注目すべき存在である。

そんなシナモンの楽曲「キミのこと、だいだいすきだもん☆」がTikTokで流行中。JO1、INIも所属するLAPONEエンタテイメントのDXTEEN・大久保波留や、6人組メインボーカル&ダンスグループLienel、SMILE-UP.のジュニアメンバーをはじめとする著名人はもちろん、多くのTikTokユーザーが曲に合わせてリップシンクとダンスをする様子などを投稿している。

なぜ、この楽曲が多くのユーザーから愛されるのか。考察してみると、同楽曲のみならずサンリオキャラクターたちのオリジナル楽曲にも通ずる理由が隠されているように感じた。

まず1つは、幼い頃からなじみのあるサンリオキャラクターの優しい声色だ。アニメやTVCM、SNSなどを通して、なんとなく耳なじみのあるサンリオキャラクターの声。その声と楽曲は、いつだってワンセットのように思える。キャラクターソングに限らなくても、例えば“ハローキティのポップコーンの歌”と言われたら、歌詞の細部はわからずとも、元気よくスタッカート気味な歌い方で〈ハローキティ こんにちは〉と歌っているキティの声色が、頭の中に流れるに違いない。

今回TikTokでブームを巻き起こしている「キミのこと、だいだいすきだもん☆」に関しても同様。頭の中で同楽曲を思い返そうとすると自然とあの声で再生される。シナモンの歌と、シナモンの歌声は切っても切り離せない、ワンセットで記憶に残るのだ。

そんなキャラクターたちの歌声が、より広く知れ渡るようになったのには、近年キャラクターたちが“歌ってみた”企画に積極的に参入していることが考えられる。

例えば、コギムーナ(小麦粉の精)の女のコ・こぎみゅんはJ-POPの楽曲を中心にYouTubeで“歌ってみた”に挑戦。Perfumeの代表的な楽曲「チョコレイト・ディスコ」では、複雑な恋心を理解しているのか・していないのかがイマイチ掴みきれないマイペースな性格のこぎみゅんらしい歌い方をし、時折「みゅんっ」とオリジナル要素を入れ込みながら歌唱。一度聴いたら病みつきになる歌声でファンを魅了した。

シナモンに関しては、ゆこぴの「寝起きヤシの木」の“歌ってみた”が動画の公開から約4カ月で500万回以上再生されるヒットコンテンツに。舌足らずなシナモンの歌い方がクセになると好評で、この動画を機に「他の楽曲も……」と漁っていくうちに、気づけば“シナモン沼”にハマっていったという人もいることだろう。

サンリオの楽曲が多くの人から愛される理由を語る上で、外せないもう1つの要素はストレートな歌詞にある。

「キミのこと、だいだいすきだもん☆」に関して言えば、なんと言っても〈ぼくはシナモン うさぎじゃないもん おとこのこの こいぬだもん〉という直接的すぎる自己紹介がサビの頭であり、一度聴いたら忘れることはない。そのかわいらしいフォルムから「うさぎなの?」「女の子じゃないの?」と言われがちなシナモンが、正面からその疑惑を払拭する歌詞なのだが、楽曲を聴いていると、不思議とトゲがなく「~もん!」という歌詞であざとく否定するのも、彼の優しくて、ふわっとしたイメージそのもの。まさに「かわいい」とも「かっこいい」とも言われるシナモンの良さがぎゅっと凝縮された歌詞なのだ。

他にも、サンリオの楽曲においてストレートな歌詞のものは目立つ。東京・多摩にあるサンリオの屋内型テーマパーク・サンリオピューロランドのショー「Miracle Gift Parade」内の楽曲「KAWAII FESTIVAL」は、先述したサンリオキャラクターたちの“歌ってみた”企画で常に上位に君臨するほどの人気ぶりだ。その歌詞は、サンリオキャラクターの名前やいちご、リボンといった“かわいい”ものを連呼し 〈KAWAII! KAWAII!〉と合いの手を入れるど直球っぷり。

このストレートっぷりは、サンリオの楽曲が言葉を覚えたての子どもたちも聴く楽曲であるからこそだろうと考える。

しかし、あくまでも“子ども向け”というわけではないということは強調したい。

実際に「KAWAII FESTIVAL」の終盤〈世界の人 全てにありがとう!〉〈あなた 私 みんなに おめでとう!〉は聴けば聴くほど「世界中が“KAWAII”の力で平和になるのではないか」という気持ちにしてくれる上、自分のことも今同じ場所にいる人のことも褒め称えたくなるようなハッピーな気持ちで満たしてくれる。サンリオを愛するすべての人を包み込んでくれる包容力があるのだ。

このように、サンリオソングの魅力といえば、サンリオキャラクターの持つかわいくて優しい気持ちになれる歌声と、キャッチーで優しい気持ちを思い出させてくれるストレートな歌詞にあるのではないかと考える。

もしも「子ども向けでしょ……」と構えている人がいるのならば、ぜひ一度騙されたと思って好きなキャラクターによる楽曲を聴いてほしい。きっとふとした時に頭の中で再生される病みつきソングに出会えるはずだ。

(文=於ありさ)

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