ローマ教皇、ウクライナに「白旗」促す 強い反発と批判の声

キリスト教カトリック教会のトップ、ローマ教皇フランシスコが、今月放送予定のスイスの放送局RSIのインタビューで、ウクライナにロシアとの戦争を終わらせるために交渉し、「白旗を揚げる勇気」をもつよう求めた。ウクライナ側は強く反発している。

このインタビューは2月に収録され、今月20日に文化番組の中で放送される予定。

ロイター通信によると、教皇はインタビューで、ウクライナにロシアとの和解を求める人々と、和解は侵略を正当化することになると主張する人々の間の議論に関してコメントを求められた。その際、インタビューをした人は和解について、「白旗」を振るという表現を使った。

教皇はこれを受け、「最も強い者は、状況を見て、国民のことを考え、白旗を揚げる勇気をもって、交渉する者だ」と発言した。

さらに、「敗北し、物事がうまくいっていないと分かったら、交渉する勇気をもたなければならない」と付け加えた。

ウクライナ大統領らが批判

この発言はウクライナ内外で激しく批判されている。

で、教皇には直接言及せず、「ロシアの人殺しや拷問部屋がそれ以上、欧州へ進撃することができないのは、青と黄の旗の下で武器を手にしたウクライナ人が、ロシアの進軍を抑え込んでいるからだ」と述べ、さらに戦争の最前線にいるウクライナ人の司祭らの働きをたたえた。

「彼らは最前線にあって、命と人間性を守り、祈りと会話、行動でサポートしている」

「これこそが教会だ。人々と共にある。2500キロメートル離れたどこかにいて、生きたい人とこちらを破滅させようとする者たちの仲介を仮想世界でやろうとするのとは違う」

ドミトロ・クレバ外相も同日、「私たちの旗は黄色と青だ。私たちはこの旗とともに生き、死に、勝利する。これ以外のいかなる旗も掲げない」とソーシャルメディアに投稿した。

ウクライナの駐ヴァチカン大使は教皇のコメントを、第2次世界大戦中にアドルフ・ヒトラーとの会談を提唱した声になぞらえた。

多くのウクライナ国民もソーシャルメディアで、教皇発言を強く批判している。その中には、ウクライナ・ギリシャ・カトリック教会のトップも含まれる。

一方、ポーランドのラデク・シコルスキ外相は、教皇はバランスを取るため、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対しても、ウクライナから軍を撤退させる勇気をもつよう促すのかと問いかけた。

ヴァチカンが弁明

こうした反発を受け、ヴァチカン(ローマ教皇庁)のマッテオ・ブルーニ報道官は、教皇は降伏ではなく、交渉によって戦闘を止めようと言っているのだと説明。

「(教皇は)交渉の勇気によって至る停戦について言及するため、インタビュアーが口にした白旗のイメージを使った」と述べた。

また、教皇が「交渉は決して降伏ではない」と明言してきたとも付け加えた。

ロシアの本格侵攻が始まって2年以上がたち、ウクライナは守勢に回っている。ロシアは先月、戦略上重要なアウディイウカを掌握。以来、ロシア軍は西進し、いくつかの村を占拠している。

こうしたなか、アメリカではウクライナに600億ドル(約8.8兆円)規模の支援をする予算案が、議会下院で可決されないままになっている。ヨーロッパでも各国が、ウクライナ支援の方法について合意を形成できないでいる。

(英語記事 Ukraine criticises Pope's 'white flag' comment

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