インド、不法移民に市民権申請認める「市民権改正法」施行を発表 イスラム教徒は対象外

インド政府は11日、近隣3カ国からの不法移民に市民権を与える市民権改正法(CAA)を施行すると発表した。CAAをめぐっては、適用対象が非イスラム教徒に限定されることから、反イスラム的だとの批判が上がっている。

CAAはインドに不法に入国したヒンドゥー教、シーク教、仏教、ジャイナ教、パールシー教、キリスト教の各教徒について、イスラム教徒が多数を占めるパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンのいずれかの出身だと証明できればインド市民権の申請を認めるというもの。

インド当局は、イスラム教徒が多数派の国で迫害を受ける人々を助けることになるとしている。

この改正法は2019年に可決されたが、差別的だとして大規模な抗議行動が起き、多くの死者や逮捕者が出た。

インドのアミット・シャー内相によると、騒動の直後には策定されていなかった同法をめぐる規則が、現在では定められているという。

CAAの施行を発表したシャー内相はこの日、ナレンドラ・モディ首相が「異なるコミットメントを果たし、これらの国々に住むヒンドゥー教、シーク教、仏教、ジャイナ教、パールシー教、キリスト教に対する憲法制定者の約束を実現した」とソーシャルメディアに投稿した。

CAA施行はモディ首相率いる与党・インド人民党(BJP)にとって、今年の総選挙に向けた重要公約の一つ。

64年の歴史を持つインド市民権法は、不法移民によるインド市民権の申請を妨げてきた。

新法では、市民権を求める者は2014年12月31日までにパキスタン、バングラデシュ、アフガニスタンのいずれかからインドに逃れてきたことを証明する必要がある。

インド政府はこの改正法をいつ施行するのか、期日を明らかにしていない。

「排他的」と批判の声

CAAをめぐっては、排他的であり、宗教を理由に市民を差別することを禁止する憲法の世俗的原則に反するものだと批判の声が上がっている。

例えば、スリランカの少数派のヒンドゥー教徒タミル人など、非イスラム教徒が多数を占める国での迫害から逃れた人々は対象に含まれない。

隣国ミャンマーのイスラム系少数民族ロヒンギャに関する規定もない。

また、現在提案されている全国市民登録簿と併用された場合、CAAがインド国内にいる2億人のイスラム教徒を迫害する手段として使われるのではないかとの懸念も浮上している。

国境近くの住民など一部のインド人は、改正法の施行が移民流入につながることも懸念している。

野党は現政権が次の選挙に影響を与えようとしていると非難しており、CAA施行の発表が受け入れられているとは言い難い。

モディ首相は今年の総選挙で3期目を目指している。

全インド草の根会議(TMC)のママタ・バネルジー党首は記者会見で、「4年間で何度も施行が延期された末に、選挙戦開始の2〜3日前に施行が発表された。これは、政治的な理由で行われていることを示している」と述べた。

インド最大野党・国民会議派のジャイラム・ラメシュ氏は「CAAの規則を通達するのに時間を要したことが、首相があからさまなうそをついていることをまたしても証明している」とソーシャルメディアに投稿した。

(英語記事 India to enforce migrant law that excludes Muslims

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