スマートで都会的なSUVであることの「必然」と「理想」。スバル レヴォーグ レイバックの実力を試す【公道試乗】

洗練された都会的なデザインと快適な乗り心地を持つSUBARU(以下、スバル)の新型SUV、レヴォーグ レイバック。今回は街乗りからワインディングロードまであらゆるシチュエーションで試乗してその性能を確かめた。(MotorMagazine 2024年3月号より再構成)

最低地上高200mmのゆとりが、優れた悪路走破性を生む

スバルにはフォレスターという本格SUVの他にも、レヴォーグレイバックやクロストレックといったステーションワゴン/ハッチバックベースのSUVがラインナップされている。

レイバックやクロストレックのように「全高の低いSUV」は他のメーカーにもあるが、スバルが立派なのはどちらのモデルにも200mmという余裕ある最低地上高を与えている点にある。

荒れた道路や雪道を走る際に心配なポイントのひとつはアンダーフロアを擦ることだが、路面と「ボディ」の間にどの程度の空間があるかを示すのが最低地上高であり、したがって悪路での走破性能を示す重要な指標といえる。

ちなみに、全高が1.8mほどもある巨大なSUVであっても、最低地上高が200mm前後であるケースは少なくないので、レイバックやクロストレックは本格SUVと遜色のないオフロード性能を持っているといえるだろう。

その一方で「全高の低いSUV」特有のメリットも存在する。

たとえば、全高が低ければ必然的に前面投影面積が減り、空気抵抗も小さくなる。空気抵抗が小さくなれば高速燃費が向上するのは当然のこと。つまり、一般的に「全高の低いSUV」は経済性が高く、しかもCO2排出量が少ないと捉えることができるのだ。

都市型ユーザーの使い方にもマッチする全高の低いSUV

全高が低いことのメリットは、まだある。常識的に考えて、全高が低ければ重心高も低くなる。重心高が低いと、コーナリング中にボディが傾くローリングも必然的に減少する。

裏を返せば、重心高の高いSUVのなかにはこのローリングを抑えるためにサスペンションを硬め、結果として乗り心地が悪化している例が少なくない。

一方、「全高の低いSUV」はもともと重心高が低いからコーナリング中に踏ん張らせるためにサスペンションを固める必要性が低く、結果的に良好な乗り心地が得やすいことになる。

もちろん、重心高が低ければ、コーナリング時の安定性も高まる。重心が低い水平対向エンジンを積んでいれば、なおのことその傾向は強まるはずだ。

それでも、視点の高さや室内高に余裕があることを重視する場合には「全高の高いSUV」が選ばれるだろうが、個人的には、走りの性能や燃費性能で優位に立つ「全高の低いSUV」に強く惹かれる。

それはまた「雪道やオフロードを走る機会もあるけれど、普段は都市部での使用が中心」という都市型SUVユーザーの使い方にもマッチしているように思う。

そんなスバルから登場した最新の「全高の低いSUV」がレヴォーグレイバックである。

レガシィツーリングワゴンの思想を受け継ぎながら、日本の道路環境に見合ったサイズで作り直されたレヴォーグは、2013年に誕生するとたちまち好評を博し、2020年には2代目にモデルチェンジ。

先ごろ誕生したレヴォーグレイバックは、この2代目レヴォーグをベースとしながら、最低地上高を145mmから200mmに引き上げて優れたオフロード性能を確保。さらに大径のオールシーズンタイヤを装着し、専用のフロントグリルやブラックのホイールアーチを盛りこむことでSUVらしさを演出している。

さらにインテリアはブラックとアッシュカラーを組み合わせたうえでカッパーステッチを添えることで上質さを表現。それでいてベース車両の価格は税込399万3000円(試乗車は429万円)とギリギリ300万円台に収めたバリューフォーマネーなモデルなのである。

柔らかいだけじゃない、バランスの良い足まわり

レイバックとともに街を走り始める。高速走行やコーナリング性能に重きを置いた結果、ソリッドでフラットな乗り心地となったレヴォーグに比べると、こちらは足まわりの動き方がいちだんとソフトで快適性は高い。

とりわけ、余裕あるサスペンションストロークを生かして、大きな路面のうねりをフワリとやり過ごす際の心地よさは特筆に値する。それでいながら高速道路でもフラットな姿勢をおだやかに保ってくれるので、ロングツーリングも苦にならないはず。

しかも、オールシーズンタイヤを履いているにもかかわらず、ロードノイズもうまく抑え込まれているので静粛性は高い。もっとも、ここまでソフトな乗り心地だとワインディングロードでの安定性などに不安を抱かれるかもしれない。

事実、佐渡島のクローズドコースで行われたレイバックプロトタイプの試乗会では、大きなギャップを乗り越えた際にボディがふわりと軽く浮き上がる傾向が見られたが、その後、何らかの対策が施されたのか、今回は積極的にコーナーを攻めても安定した挙動を保ち続けた。

しかも、最低地上高が高めだからといってコーナーの進入で姿勢が落ち着くのを待つ必要も感じられない。この、どちらかといえば快適性重視だけれども、ハンドリング面でも妥協が見られない足まわりのバランスの取り方は、私の理想と極めて近いものだ。

著しいシャシ性能の向上が、スバルSUVの走りを高める

パワートレーンは、ファンにはお馴染みの水平対向4気筒エンジンにリニアトロニックと呼ばれるCVTが組み合わされたもの。

決して強烈なパワーで人を驚かせるタイプではないけれど、クルージング時には静粛性が高くて滑らかなドライビングフィールを生み出してくれる一方、マニュアルモードでエンジンを高回転域に維持すればワインディングロードでも期待どおりのパフォーマンスを発揮してくれる。

レイバックのキャラクターを考えれば必要にして十分以上の動力性能といえる。

スタイリングはスバルらしい実直さのなかにも個性を感じられるタイプ。そしてキャビンには大人4人が快適に過ごせるスペースが確保されている。広角単眼カメラを採用した新世代アイサイトならびにアイサイトXの動作も正確で、安全性の向上に間違いなく寄与してくれるはずだ。

それにしても、最近のスバル車はハンドリングや乗り心地のバランスなどに見られるシャシ性能の改善が著しい。これにはフルインナーフレーム構造の採用によってボディ剛性を高めたことが大きく影響しているはず。

しっかりとしたボディ骨格は走りの基本であり、ここがていねいに作り込まれていれば、ハンドリングと乗り心地の両方を改善するのに役立つ。

今回試乗したレヴォーグレイバックも、フルインナーフレーム構造によってボディ剛性を強化した結果、スバルのエンジニアが理想とする走行性能の実現にまた一歩近づいたように思う。(文:大谷達也/写真:永元秀和)

スバル レヴォーグ レイバック リミテッドEX 主要諸元

●全長×全幅×全高:4770×1820×1570mm
●ホイールベース:2670mm
●車両重量:1600kg
●エンジン:水平対向4 DOHCターボ
●総排気量:1795cc
●トランスミッション:リニアトロニック(CVT)
●駆動方式:フロント縦置き4WD
●WLTCモード燃費:13.6km/L
●タイヤサイズ:225/55R18
●車両価格(税込):399万3000円

© 株式会社モーターマガジン社