海洋高×近畿大 ノドグロの稚魚8000尾放流 地震の難逃れ「能生の海」へ

漁船からホースを通じて稚魚を放流した(糸魚川市筒石沖)

「アカムツ等の養殖および種苗生産に関する高大連携協定」を結んでいる県立海洋高と近畿大は12日、協力して育ててきた高級魚ノドグロ(アカムツ)の稚魚約8000尾を糸魚川市筒石沖に放流した。

同協定は平成30年に締結され、両者はノドグロの安定した種苗(稚魚)生産技術確立に向けて共同研究を進めている。海洋高は近畿大水産研究所富山実験場(富山県射水市)の指導を受けて研究に取り組み、令和元年に人工授精・45日齢までの飼育に高校として全国で初めて成功するなど成果を上げてきた。

ノドグロ稚魚の放流は今回が初めて。前日の11日に海洋高で記者説明会を開き、同校の中田匠校長は「約6年間の歳月を要したが、ここまでたどり着くことができた。確保した受精卵を、放流できる稚魚に育てるまで、大変多くの課題があった」と振り返りながら、「(ノドグロが)安定して漁獲できる状況が維持されることで、地元糸魚川や上越などの活性化に寄与できるのでは」と力を込めた。

12日の放流は地元漁業者の協力を得て実施。能生漁港内にある海洋高栽培漁業臨海実習棟から稚魚を漁船に積み込んで出港し、ホースを通じて筒石沖に放流した。富山実験場場長の家戸敬太郎教授は「スムーズに放流できて、ほっとしている。協力していただいた漁業者の方に(成長したノドグロを)取っていただくのが一番の希望」と振り返りながら、今後への意欲を示した。

今回放流した稚魚は元々富山実験場で飼育していたもので、放流に向けて育てる中間育成のために昨年12月、海洋高に移していた。同実験場は能登半島地震で大きな被害を受けたので、偶然にも難を逃れた格好。漁船からの放流作業に携わった海洋高水産資源科資源育成コースの生徒からは「奇跡的に生き残って、うまく育成できた稚魚を、能生の海に放流できてとてもうれしい」といった声が聞かれた。

稚魚の積み込み作業の様子(海洋高栽培漁業臨海実習棟)
ノドグロの稚魚

© 株式会社上越タイムス社