貴重な路線が7月に終了! フライトわずか8分と日本で最も短い路線の沖縄「南大東~北大東」レポ

By 会田 肇

空港間距離はわずか13km足らず、飛行時間はわずか8分! そんな日本国内線で最も短い路線が南大東~北大東の区間で、日本航空グループの琉球エアコミューター(RAC)によって1997年10月に開設されました。まさにレア極まりない路線ですが、残念ながら2024年8月から運休となることが決定。この貴重な路線があと半年足らずでなくなってしまうことになりました。そこでメモリアル的な意味も込めて、この2つの島の紹介とフライト8分間の全記録をお伝えします。

↑沖縄県の離島を中心に結ぶ琉球エアコミュータ-(RAC)の「DHC8-Q400CC」。日本で最も短い路線「南大東~北大東」も結ぶ

那覇から東へ約360km! 絶海の島「南大東島」と「北大東島」

南大東(島)/北大東(島)と聞いて、それぞれの位置をきちんと言える人は少ないかもしれません。それでも台風の季節になると、天気予報で「南大東島の○○km沖合を毎時○キロで北上中」なんて解説されることがありますよね。

この2つの島は那覇からは東へ約360km離れた、台風の通り道としても知られるルート上に位置している島なのです。島自体は海底から隆起して作られた珊瑚の島で、周囲は断崖絶壁に囲まれていることもあって、南の島によくあるビーチとは一切無縁の島となっています。

↑南大東島、北大東島ともに珊瑚礁が隆起してできあがった島だけに周囲にビーチはなく、断崖絶壁が続く。写真は南大東島にある天然プール。この日は波が荒く近づけなかった

南大東島は人口1198人(2023年9月)で、島の面積は30.52平方km。島の中央に行くにしたがい海抜が低くなるすり鉢状の地形となっており、その影響もあって島の中央には雨水が溜まってできた池がいくつもあります。

一方の北大東島は人口547人(2022年3月)、面積が11.9平方km。南大東島よりも島のサイズは小さく、住んでいる人も少ないです。北大東島の街は周囲を小高い山が囲んだ中にあることもあって、そこから海は一切見えず、島の中にいると南大東島とは雰囲気がまるで違います。

両島の存在は古くから知られていたようですが、日本の国土とされたのは1885年(明治18年)のことで、人が定住したのは今から120年ほど前の1900年(明治33年)。八丈島からの移民によって島が開拓されています。

そのため、関東の文化と沖縄の文化が混ざった、独特の文化が受け継がれてきているといわれます。その文化を受け継ぐ八丈島の「島ずし」をルーツとする「大東寿司」は、魚の切り身をタレに漬けて握り寿司にした絶品の一品。また、総数で20頭前後しか存在しないと言われる貴重な犬種「大東犬」の故郷でもあります。

↑「大東寿司」(左)と「大東そば」のセットメニュー。八丈島と沖縄の文化を組み合わせたメニューとも言える
↑現在、20頭ほどしかいないという「大東犬」。足は短いものの、耳と尻尾は立っている

空港間の距離が13kmしかない区間はなぜ運休になるのか

そんな南大東~北大東の空港間の距離は直線で13kmほど。わかりやすくたとえると、東京駅と羽田空港の距離に相当します。この区間を旅客機が飛んでいるのですから、フライト時間が短いのも当然ですね。使われている機材は、RACが持つ総座席数50席となるカナダのボンバルディア社製ターボプロップ機「DHC8-Q400CC」です。

↑南大東空港
↑南大東空港(右手前)の先に見えるのが北大東島。島と島自体の距離は8kmしかない(動画よりキャプチャー)

実はこの路線、一般的な同じ路線を単純往復するのではなく、那覇空港を基点として“三角運航”と呼ばれる、ちょっと変わった運用をしています。具体的には、曜日によって那覇→北大東→南大東→那覇となったり、那覇→南大東→北大東→那覇となったりしているのです。

今回の運休発表はこのうち南大東~北大東の区間が対象で、代わりに那覇を軸に南大東とは2往復/日、那覇~北大東とは1往復/日の運航が始まります。

今までは南大東/北大東から那覇へ行くには、どちらかを経由する必要があったわけで、“日本最短路線”がなくなってしまうものの、那覇へ行くことが多い両島民にとっては利便性が大幅に増すことになると言っていいでしょう。

さて、南大東島と北大東島を結ぶ貴重な“超ショート路線”ですが、時刻表を見ると所要時間は20分となっています。これは地上走行を含めているからで、離陸して着陸するまでの所要時間は8分程度です。

ただ、わずか13kmの距離ですから、そのまま飛び立っていけばほんの数分でたどり着くはず。しかし、実際はそれよりも時間がかかっています。これはどうしてでしょうか?

フライト中はシートベルトサインが消えないまま

理由はそのまま真っ直ぐ向かうと高度が稼げず、着陸に不都合が生じてしまうからです。そこで飛び立った後、機体は一回り旋回して高度約1600フィート(約488m)程度にまで一旦上昇。そこからゆっくりと着陸へと向かうのです。

この日は、北寄りの風ということで、滑走路の南側「02」からのスタートとなりました。そのまままっすぐ行けば北大東空港ですが、この日は飛び立った後で南大東島上空を左旋回し、すり鉢状の南大東島の風景を空から眺め、眼下には旧南大東空港、そして飛び立った現南大東空港が捉えられ、その先に北大東島が見えてきました。

↑搭乗した日は、奥にある南大東空港を飛び立った後、左旋回して南大東島上空を周回する形となった。真ん中には旧南大東島空港が見える
↑南大東島の上空。島の基幹産業であるサトウキビ畑が広がる

この間、シートベルトサインは消えることはなく点きっぱなし。なので、トイレに行くこともできません。南大東空港を過ぎたあたりで、着陸のためにシートベルト確認のアナウンスがあり、そこで離陸後6分。その後間もなく車輪を降ろして高度を下げていきました。そして、北大東空港へ着陸。離陸から着陸までちょうど8分でした。

↑北大東空港

ちなみに那覇へ向かう人もここで一度降りて、再び新たな席を割り当てられて搭乗することになります。この三角運航がなくなることで、こうした煩わしさの解消にもつながるというわけですね。一方でこの“超ショート路線”を体験できるのは今年の7月末まで。残すところあと半年足らずとなってしまいました。

↑動画をチェック! 8分間の全行程が動画で見られます

北大東島の夕焼け

フライト時間がわずか7分しかない路線が存在する!

“超ショート路線”としては、奄美大島~喜界島の26km区間にバトンタッチすることになります。この路線は、同じく日本航空グループの日本エアコミューター(JAC)が、ターボプロップ機「ATR42-600」を使って運航しています。

↑奄美大島から喜界島に到着した日本エアコミューター(JAC)の「ATR42-600」

この路線も実は見逃せない注目点があります。それは飛行時間がもっと短い7分しかかからないということです。

これは、区間距離が長いことで南大東~北大東のように旋回して高度を稼ぐ必要がないから可能になったものです。そのため、機体は奄美大島を飛び立った後、真っ直ぐ喜界島へ向かってそのまま空港に着陸します。これにより飛行時間を短くできるんですね。

その意味で、この区間は今も“日本で最もフライト時間が短い路線”ということになります。こちらは今後も運航される予定になっておりますので、機会があればぜひ体験してみてください。

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