値上がり益・配当・優待で生活防衛…5万円から始める「株式貯蓄」のススメ【経済評論家が解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

先進諸国と比べ投資比率の低い日本。理由はさまざまですが、「まとまった金額がなければ株式投資をする意味がない」と投資を躊躇しているのであれば、その必要はありません。本記事では『これから3年 株で攻める!』(すばる舎)から、手元に5万円あったら今すぐ株貯(株式貯蓄)を始めるべきだという、著者の杉村氏の考えをご紹介します。

日本人の金融資産2,121兆円のうち、株式は12.9%という現実

日本の個人が保有する金融資産は、2023年9月末時点で約2,121兆円と過去最高を記録した。これは、前年(2022年)9月末の2,020兆円より5%増えたことを示している。日銀が四半期ごとに発表している「資金循環統計」によると、その内訳は「現金・預金」が1,113兆円であり、これは金融資産の52.5%に相当する。その次は「保険・年金」が539兆円で25.4%を占める。

これに対し、「株式等」は273兆円(全体の12.9%)、投資信託は101兆円(同4.8%)にとどまっている。しかし、前年の四半期との比較では、「現金・預金」が1.2%増、「保険・年金」が0.4%増にすぎなかったのに対し、「株式」は30.4%増、「投資信託」は17.4%増と大きく伸びている。株高の効果があろう。

筆者はかねてより、「手元に5万円あったら預・貯金ではなく〝株貯〟に」と主張してきた。株貯とはすなわち、株式貯蓄のこと。コツコツと優良株を買い増していけば、それがやがて「資産」になる、というのが株貯の考え方である。

多くの人は、「まとまった金額がなければ株式投資をする意味がない」と考えている。その論理は、「100万円分の株式を買い、2割上がったところで売れば20万円儲かる。しかし、5万円分の株式を買って2割上がったところで売っても、儲けは1万円にしかならない」という図式だ。しかし、この図式は間違っている。

お金(投資資金)のない人ほど、目先の小さな利益ばかり考えてしまう。そして、なるべく多くの資金を元手に儲けようとする。結果的に、そのような考え方では、お金はなかなか増えない。いや、「お金は酷使すると、去る」というが、増えるどころかお金が逃げていってしまう。株貯は投機とは違う。

筆者は、株貯で財を築いた人を何人も知っているが、預・貯金だけで財を成した人を見たことがない。また、退職金など大切な大金を元手に株式投資を行ない、大成功をおさめたという人も聞いたことがない。筆者が無理をせず、少しずつ着実に資産をつくりあげる株貯を強く勧める理由はここにある。

定期預金から株貯に方向転換し、年85万円の配当をもらう人も

株貯には、デイトレード(1日で売買を完結させる投資手法)のようなごく短時間で利ザヤを稼ぐ楽しみはない。しかし、コツコツと丹念に安値を仕込む株貯には、値上がり益(キャピタルゲイン)とともに、配当(インカムゲイン)、株主優待をもらえる楽しさがある。

筆者は、みずほフィナンシャルグループ(8411)の株貯を長年続け、現在、保有株数が1万株に達したという人の話を聞いたことがある。

よく聞くと、その人は10年前にみずほ銀行の定期預金を止め、株貯に方向転換したようだ。原稿執筆時点で同社株の株価は2,400円近辺だが、その人の平均買いコストは1,800円ほどだという。したがって、3割以上利が乗っていることになるが、年間の配当総額は2023年3月期ベースで85万円(税引き前の金額)になる。

さらに、株式分割を何度も実施するような銘柄には、「夢とロマン」がある。保有し続けている間に株式数が増え、株価も値上がりすれば大きな資産となる。【図表】の銘柄は、東証プライム市場の主な高配当利回り銘柄だが、株貯の対象となり得るものも複数あるのではないか。

【図表】東証プライム市場の主な高配当利回り銘柄

株貯をするときの銘柄選びで意識すべきポイント

2024年1月より開始される新NISAは、株貯の優位性を後押しする。株貯は長期投資を前提とするため、税制上の優遇措置は何よりの力水となる。

筆者が2024年以降の3年間、株貯をしてみたいと思う銘柄(※)を選ぶ際には、「ウォーレン・バフェット氏の投資戦術」を強く意識した。すなわち、事業の継続性(ビジネスモデルに問題はないか)、成長性と安定性、株主を重視した経営姿勢(配当などに配慮)などである。また、「日本株配当貴族インデックス・オープン」の組み入れ上位銘柄についても参考にしている。

※具体的な10銘柄は著書『これから3年 株で攻める!』(すばる舎)で紹介している。

政府は正社員には賃上げを、パート・アルバイトには最低賃金の引き上げを提唱、インフレ(物価高)対応策を打ち出している。しかし、リタイアした高齢者はどうするのか。これは株式投資(新NISA)の活用だろう。タンス預金だけでは、資産が目減りするばかりだ。株式貯蓄は、物価高に苦しむ高齢者にとって、最善の「生活防衛策」になり得ると思う。

杉村 富生

経済評論家、個人投資家応援団長

※本記事は『これから3年 株で攻める!』(すばる舎)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。また、投資による結果に編集部は一切責任を負いません。投資に関する決定は、自らの判断と責任により行っていただきますようお願いいたします。

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