ウクライナ拠点のロシア人準軍事組織、ロシアに入り交戦と発表

ウクライナに拠点を置くロシア人準軍事組織が12日、国境を越えてロシアに入り、政府軍と交戦したと発表した。

「自由ロシア軍団(FRL)」と「シベリア大隊(SB)」は、ロシア南西部ベルゴロド州とクルスク州にいるとされる戦闘員らの映像を公開した。

また、FRLと亡命中のロシア人政治家は、この地域の2カ所の村が「解放軍」の手にあると主張した。

一方、ロシア軍は侵略を阻止したと発表。ウクライナ兵234人を殺害し、複数の戦車を破壊したとした。

ベルゴロド州のヴャチェスラフ・グラトコフ知事は、ロシア地域軍の兵士1人が殺されたほか、民間人10人が負傷したと述べた。

BBCはこれらの数字について独自に検証できていない。

ウクライナ軍は、12日の襲撃への関与を否定している。軍情報機関のアンドリイ・ユソフ報道官は、ロシア人による「独立した組織」である準軍事組織が「自国」で活動しているとの見方を示した。

「プーチン氏の独裁からの解放」が目的と

FRLはこの日、ロシアとウクライナの国境で撮影したという映像を投稿。

映像では、武装したFRLの戦闘員が、「すべての市民がそうであるように、我々もプーチンの独裁から解放されたロシアを夢見ている。だが、我々は夢を見るだけでなく、その夢を実現するためにあらゆる努力を惜しまない。我々は1センチずつ、政権から我々の土地を奪い取っていく」と言っているのが聞こえる。

SBは、「ロシア連邦領内で激しい戦闘が行われている」とし、ロシア政府軍と交戦中の戦闘員らを撮影したとする映像を公開した。

また、15~17日に予定されている大統領選を非難。この選挙では、ウラジミール・プーチン大統領が勝利を宣言すると予想されている。

SBは、「この選挙の投票用紙や投票所はフィクションだ。武器を手にしてこそ、自分の人生を本当に良い方向に変えることができる」と主張した。

同じくウクライナを拠点とするロシア人準軍事組織「ロシア義勇軍団(RVC)」も、ロシア政府軍との戦闘の模様だとする映像を公開。「クレムリン(ロシア大統領府)の軍は、戦闘が始まる前に武器を下ろした」と述べた。

これらの映像は、第三者によって検証されていない。

国境沿いの村を掌握と主張

クルスク州の国境沿いにあるテトキノ村は、12日の襲撃の標的の一つだったようで、FRLは「解放軍」がこの集落を完全に支配したと主張している。

BBCは、テトキノでの装甲兵員輸送車への攻撃を映したFRLの映像を検証し、実際ののものだと確認した。

州都クルスク市のイーゴリ・クツァク市長は「最近の出来事に関連し」、13日から15日まで、同市のすべての学校をリモート授業にするよう命じた。

また、40万人以上の人口を抱える同市では、「ミサイル警戒」体制がまだ続いていると警告した。

12日未明には、ウクライナを拠点とするロシアの野党政治家イリヤ・ポノマレフ氏が、ベルゴロド州の国境沿いの村ロゾヴァヤ・ルドカが「解放軍の完全な支配下にある」と主張した。

ロシア国防省は12日の声明で、軍が国境警備隊とロシア連邦保安庁(FSB)の治安部隊と共に、ロシアに侵入しようとするウクライナの試みを阻止したと述べた。

声明によると、戦車や装甲兵員輸送車に援護された敵の戦闘員が、「ベルゴロド州の三つの集落に同時に」侵入しようとしたという。

さらに、テトキノを狙った4件の攻撃もあったが、「撃退された」と付け加えた。

ウクライナを拠点とするロシア人の武装集団は、ロシアのウクライナ全面侵攻が始まって以来、国境を越えた襲撃をたびたび行っている。

昨年5月にもベルゴロド州で同様の襲撃があったが、ロシア軍は武装反乱軍を撃退したとしている。

ウクライナのドローン攻撃を阻止と発表

ロシア政府はこの日、ウクライナがロシア各地に計25機のドローン(無人機)による攻撃を仕掛けたが、阻止したと発表した。

しかし、ロシア国内のいくつかの石油施設で火災が発生している映像が浮上している。

また、ロシアの国営通信社によると、ロシア国防省はこの日、モスクワのすぐ東に位置するイヴァノヴォ州で、乗客7人乗員8人が乗った軍輸送機「IL-76」が離陸直後に墜落したと発表した。

同省はエンジン火災が墜落の原因だとしているという。生存者についての詳細は不明。

炎上した飛行機が上空を旋回し、その後、墜落現場から黒煙が立ち上る様子を映したとされる映像も浮上している。

ロシアがアパートをミサイル攻撃

一方、ウクライナでは、中部のクリヴィー・リフで12日夜、ロシアのミサイルが2棟のアパートを直撃した。イホル・クリメンコ内相によると、少なくとも3人が殺され、38人が負傷した。

クリメンコ内相は、犠牲者の中には子供も含まれていると発表。捜索・救助活動が続けられており、死者数はさらに増える可能性があると述べた。

ウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、ウクライナは「対抗措置としてロシアに損失を与えるだろう。まったく当然だ」と述べた。

ロシアのプーチン大統領が開始したウクライナへの本格的な侵攻は3年目に入った。第2次世界大戦以降のヨーロッパで最大の戦争は、すぐに終わる兆しはない。

(英語記事

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