元日入籍の松井玲奈、小説家としての顔も持つ才女が語る「幸せの真理」好きな作家はサン=テグジュペリと谷川俊太郎

松井玲奈 撮影/有坂政晴

役者としての活動を中心に、趣味のアニメや新幹線好きを活かして多くのバラエティでも活躍する松井玲奈。2018年には小説家としてもデビューを果たした。いくつものステージを経てきた松井さんにとっての「CHNANG」とはーー。【第3回/全3回】

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役者業の他に小説家としての顔も持つ松井さん。2019年に発表した初の短編集『カモフラージュ』は発売日に即重版が決まる程のヒットとなった。

「自分では小説を書くとは思っていなくて、書けるとも思っていませんでした。でも、本を読むのは好きで、書評とか映画を観てのコラムやエッセーを時々書いていて、それを読んだ当時のマネージャーさんが文章を書く才能があると思って下さったのか、“短いモノでも良いから何か書いてみないか”っていう提案をして下さったんです。
最初はファンクラブにだけ出すということでほんとにショートショートみたいなすごく短いものを書いていたのを出版社の方にプレゼンして下さって、“じゃあ、これで書きましょう”みたいな感じで話が進んでいったんです」

──自分では気付かなかった才能を人に見つけてもらった……って感じ?

「そう。みんなが船を用意してくれたので、じゃあ、ちょっと私の腕で頑張って漕いでみようと船に乗り込んだ感じでしたね」

そんな松井さんにとっての読書の原体験でとても印象に残ったのは、『星の王子さま』だという。フランスの作家・サン=テグジュペリが書いた児童書で、サハラ砂漠に不時着した操縦士の「ボク」と遠い星からやってきた少年(王子さま)との出会いを描いた世界的名著のひとつだ。これまでに何度も映画化や舞台化、アニメ化もされている。

「このお話に出てくるキツネが王子さまに言う“一番大切なものは目には見えないんだよ”というセリフがあるのですが、“それって本質だな~”って思っているんです。子供の頃からずっと好きな言葉ですね」。

今年最も縁起が良い日とされる元日に入籍!

詩人・谷川俊太郎さんも好きな作家の一人だそうだ。

「私、スヌーピーが好きなのですが、谷川さんが翻訳を手掛けられているんですね。それと好きなアニメでジブリが制作に携わっている『レッドタートル ある島の物語』という作品があって、この映画のキャッチコピーを谷川さんが書かれているんです。谷川さんが書かれた詩を読むと、いつも“いいなぁ~”って思うんですね」

──どんなところが「いいなぁ~」って思えるんですか? と尋ねると、「それは難しい質問ですね」と苦笑しつつもこう答えてくれた。

「詩って、その時の自分の状況によって刺さるモノが変わってくると思っていて、それを楽しんでいる感じなんです。今日はこの言葉が自分に届くな~とか、この詩に書かれている気持ちがやっと判るようになったとか。そういう部分に私は面白さを感じています」

松井さんが谷川さんの作品群の中でも特に好きなのは『幸せについて』(ナナクロ社刊)。この中の「幸運は神頼み、幸福は自分頼み」という一節が一番お気に入りだそうだ。

「『幸せの真理』ってこれだよなって思える一節ですよね。納得というか腑に落ちた感じがしましたね」

プライベートでは今年1月1日に結婚したばかり。この日は天赦日と一粒万倍日と天恩日が重なって、今年最も縁起が良い日だと言われた。とすれば、プライベートではどこか変化があったかと思われたが、「それが無いんですよ。よく訊かれるんですけどね。すみません。ご期待に沿えず、ごめんなさい。面白い答えじゃなくて」と笑いながら答えてくれた。

最後に、今後どんな風に変わっていきたいかを尋ねてみた。

「常に穏やかな人でいたいなと思っています。心広く、イライラせず、何事も大きく受け止められるような器の広い人間に成りたいですね。そうなれば、みんながハッピーかなって思うんですよ。私自身も、日々変わっているとは思うんですけどね」

これからも日々変わっていく松井さんに興味が尽きない。

松井玲奈(まつい・れな)
1991年7月27日、愛知県生まれ。O型。2008年デビュー。主な出演作は、映画『よだかの片思い』、NHK朝ドラ『まんぷく』『エール』、大河ドラマ『どうする家康』など。24年3月8日には映画『ゴールド・ボーイ』が公開。18年小説家デビューし、翌年初の単行本『カモフラージュ』を刊行。23年12月より「小説すばる」にて『カット・イン/カット・アウト』を連載中。

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