がんの放射線治療で生じる「二次がん」 発症確率は5年~20年間で1% デメリット上回る治療メリット

[命ぐすい耳ぐすい 沖縄県医師会編](1326)

 外科医が行う手術療法、抗がん剤などの薬物療法、そして放射線治療は、がん治療の3本柱と呼ばれています。科学技術の発展や新規抗がん剤との併用などにより、放射線治療の効果は年々高まっており、それに伴って放射線治療を受ける患者さんも右肩上がりで増えています。

 私は放射線治療を専門にしているのですが、患者さんに治療について説明する際に「放射線治療をするとがんになりませんか?」という質問をいただくことがあります。今回は放射線治療によって生じるがん、いわゆる「二次がん」についてお伝えします。

 がん細胞であれ、正常な細胞であれ、放射線が細胞に当たると、細胞内のDNA損傷・切断が生じます。この時、同じ放射線の量でも、がん細胞のように盛んに分裂・増殖している細胞には、より大きなダメージを与えることができます。このダメージでがんを細胞死に導くのが放射線治療です。

 通常であれば、DNAが損傷した正常細胞は増えることなく死んでいきますが、極めてまれに損傷した細胞が増殖し続け、がん化してしまうことがあります。これを二次がんといいます。

 放射線治療の後に、二次がんを発症する確率は5~20年間で1%と報告されており、一般的にはまれな合併症と考えられています。また、5年以上の長期生存が望めるがんでも放射線治療による生存率の向上が証明されていることから、二次がんが生じるデメリットよりも、治療のメリットが大きいと考えて放射線治療を行っています。

 放射線治療による生存率向上については、世界各国の乳がん患者4万2千人を15年間追跡した論文があります。手術の後に放射線治療を行った患者は、再発が少なくなり、生存率は上昇したと報告されています。

 がん治療で大切なことは、患者さんとご家族が治療内容について理解・納得した上で治療に臨むことです。ささいな疑問でも医師を含めた医療従事者にお尋ねいただければ幸いです。(山形航、琉球大学病院放射線科=西原町)

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