[社説]オスプレイ飛行再開 住民無視の暴走行為だ

 県が強く抗議し、宜野湾市が懸念を示し、県民が不安を訴える中、米軍普天間飛行場のオスプレイが飛行を再開した。

 昨年11月の鹿児島県屋久島沖での墜落事故を受け、12月7日に全世界で飛行停止してから約3カ月。この間、県や宜野湾市は事故原因や安全対策について説明を求めてきた。だが具体的な説明もないままの飛行強行は、住民を無視した「暴走行為」だ。

 14日飛行したのは海兵隊仕様のMV22オスプレイ。午前8時50分に1機目が飛び立った後、午後6時過ぎまでに延べ13機が離着陸した。那覇市上空でも独特の重低音を響かせ、伊江島でも確認された。

 米軍は当初、段階的に再開するとしたが、実際は県内の広範囲を飛び回った。玉城デニー知事は「強い憤りを禁じ得ない」と怒りをあらわにし、宜野湾市の松川正則市長も「納得できない」と不快感を示した。

 あらゆる事故において重要なのは、徹底した原因究明とそれに基づく再発防止策、住民への説明責任だ。事故は「特定の部品の不具合」で生じたとするが、部品が何なのか、なぜ不具合が生じたか、などの疑問への回答はない。

 少なくとも米軍の調査報告書が公表されるまで、飛行を停止するのが筋である。

 日本政府も米側に徹底した説明責任や安全性の担保を迫るべきだ。だが木原稔防衛相は、米側から「訴訟や懲戒処分の対応などもあり、米国内法上、詳細を明らかにできない」とされたと説明した。

 国民の命や生活を守るために力を尽くすどころか「子どもの使い」のようだ。主権の放棄に等しい。

■    ■

 沖縄の軍事要塞(ようさい)化が急速に進んでいる。

 オスプレイ飛行再開と同じ日、米軍は嘉手納飛行場でパラシュート降下訓練を行った。本来は伊江島補助飛行場での実施が原則だが、滑走路の不具合などを理由に「例外」とした。県の中止要請を聞き入れず、4カ月連続の実施は日米合意の軽視である。

 うるま市の陸上自衛隊勝連分屯地では、住民への説明がないまま地対艦ミサイル部隊の配備が進んでいる。

 石垣では米海軍のミサイル駆逐艦が石垣港に入港し、3日間停泊。県内の民間港に米駆逐艦が入るのは初めてという異例の事態となった。

 米軍が自衛隊の駐屯地を共同使用し、日米が共同訓練を重ねる日米一体化が進む。沖縄の要塞化が進めば、相手国からの攻撃対象となる危険性も高まる。負担軽減どころの話ではない。

■    ■

 住宅が密集する宜野湾市中心部にある普天間飛行場は「世界一危険」といわれる米軍基地だ。そこから再びオスプレイが離着陸し人々の頭上を飛び回るとなれば、県民の不安や恐怖は尽きない。

 玉城知事は県民軽視の現状に「オスプレイ配備の即時撤回を求める」と語気を強めた。重大事故を起こしてもまともに説明せず、わが物顔で飛行する状況は腹に据えかねる。普天間の危険性を除去するにはオスプレイの配備撤回しかない。

© 株式会社沖縄タイムス社