レシピに出てくる「だし」って何?どんな種類を使えばいいの?「だし」の疑問を徹底解説!

料理に関するちょっとしたお悩みに対して、解決方法をわかりやすく教えていただく料理研究家・井上かなえ(かな姐)さんのフーディストノート公式連載。今回のテーマは、和食のレシピで特によく出てくる「だし」について。考え方を理解することで、いろいろなレシピで応用がきくようになるのでぜひ一度ご覧くださいね。

こんにちは!かな姐です。

おかげさまでこちらの連載がスタートして丸2年がたちました。

4月スタートの1クール12か月のシリーズで、みなさまからいただいたご質問をもとに月ごとにテーマを定めて書かせていただいているのですが、そういえば普段これって言ってなかったけどわたしはこうしていますという調理に関する細かいところをお伝えできたり、また、わたし自身も気付いていなかった素朴な疑問に対して、解決法はないか探ったり、時には納得のいくまで試作を繰り返したりするので、みなさんお気付きではないかもしれないんですが、けっこうな熱量で書かせていただいています(笑)。

みなさまに楽しんで読んでいただけているならば幸いです。

というわけで、来月からの3年目に入るこちらの連載、また1年書かせていただくことになりましたのでどうぞよろしくお願いいたします!

来年度に向けてたくさんのご質問もありがとうございました。

さて、今月はこんなお悩みをピックアップしてみました。

・料理本の材料に「だし」と書いてある場合、だいたい何だしでしょうか。だしって、いろいろあると思うのでそれだけではわからないです。何系の料理には何だしが合うとかありましたら教えていただきたいです

・だし200mlって一体何?わが家はだしの素とか使わず、煮干しや昆布等を使っています。一般的なだしって、だしの素を使わない場合、何をどれだけで作るの?

・だしの素などを使わずに素材の味をいかすシンプルなだし。プロの方が作ればおいしいとは思うけど、自分が作ると何か(コクとか旨味)物足りなく感じます。材料を入れる順番とか、アクを丁寧にとるとか、コツってありますか?

料理に使う「だし」に関する疑問です。

こちら…実は料理を始めたばかりのころ、まるっきり同じ疑問を持っていたわたし。

そのころは市販のだしの素と呼ばれるあの顆粒のおだしを常備していたので、あれを既定の分量で(箱の裏や各メーカーのサイトに載っています)水で溶いたものを「だし」として使っていました。

が、そのうちに料理によっては「これってだしの素を入れないほうがおいしいんじゃない?」「入れないほうが好きかも」というものがあることに気付いたのです。

そこからは、「だしの素」に頼らない料理を作ることに夢中になり、(面倒な)だしを使わなくてもおいしいのはどんな料理でそれはなぜか、面倒でもだしがどうしても必要な料理は何か、その場合どんなだしが最適かを考えて料理をするようになりました。

なのでわたしの料理には単なる「だし」という表現のものが出てきません。

料理本に出てくる「だし」って?どんな料理にどんな種類のものを使えばいい?

1つ目と2つ目のご質問にあったレシピの中に出てくる「だし」なのですが、最近のネットなどに載っている一般的な料理レシピの場合はこれはほとんどだしの素を既定の水で溶いたものを指すことが多い気がします。

和食の料理人の方が書かれたレシピだと「昆布とかつおぶしで取ったもの」等、親切に書いてくださっているものもありますが、だしの素をお使いにならない方の場合ですと、基本的にはこの昆布とかつおぶしでとっただしのことと考えて間違いないと思います。

個人的には(正解かどうかはわからないですが)、野菜の味をシンプルに味わう煮物には昆布だしが合うかなと思います。例えばふろふき大根、関西風の白みそのお雑煮、おでん、里芋の煮物など。

昆布のまろやかで奥深く繊細なうまみが野菜のおいしさをぐっと底上げしてくれるようなイメージです。

肉や魚介類が入った煮物を作る場合、基本的にはそれらからだしが出るので、だしは必要ないです。水や素材の持っている水分だけで充分。

例えば、筑前煮、いかやたこと里芋の煮物、肉じゃが、魚の煮物、豚肉・鶏肉・ぶりなどと大根を炊いたもの、などなどがそうです。

これらは素材から旨味が出てくるので、煮るときにだしは必要ありません。

ただ、仕上げにかつおぶし(削りぶし)を振ることで香りをつけ、あたかもだしを使ったかのような(言い方があれですが)雰囲気を出してあげることはたまにあります!

なるべく薄味で作りたい場合これはとても有効で、塩味が少なくても充分においしく感じることができますし、だしをわざわざ取らなくてもとってもおいしくできます。

かつおぶしの香りは強いので、このおいしそう!というだしの香りはそれだけで料理全体をワンランクアップさせてくれます。

素材から旨味が出る「だし」となるものは、なにも昆布やかつおぶし、いりこばかりではありません。

先ほど申し上げた肉や魚のほかにも、きのこ類、玉ねぎ、トマト、いも類、豆類、海藻などなどたくさんあるんですね。小麦粉や牛乳、バターも旨味があります。卵も旨味があります(ちょっと物足りない汁物に溶き卵を流し入れて仕上げると旨味がアップしますよ)。

だしは単体で使うよりも組み合わせて使う方がより旨味を感じられるので、例えば玉ねぎとトマト、きのこと海藻、バターと玉ねぎ、などと組み合わせて使うとよいと思います。そうそう、ちなみにおみそ汁にわかめを入れる場合は昆布でだしを取る必要もない。その理由は、もうお分かりですね?

だしの味が物足りない…その理由って?

だしのことを書くとほんとにいっぱいありすぎて、何からお話すれば…という感じなのですが、ご質問に戻って、3つ目の自分で取っただしがプロのだしと違って何か物足りない、と感じる理由。

これは実はずばり、素材の差なんです。

わたしはいつもスーパーで一番安い昆布を買っていたんですが、あるとき、ちょっといいとこのスーパーで売られていたお高めの昆布を買ってみたところ、あまりにもそのだしが濃厚で、旨味があっておいしく、本当にここまで違うものなのか!と、ひっくり返るほどびっくりしたんです。

あまりに濃厚なので、使用量も普段の昆布の量の半分以下、1/4くらいでもいいくらい!!

見るとやはり、いつもの安いものより昆布の厚みもしっかりしているし、戻すとめちゃくちゃ大きくなる。

こんなことならお買い得な昆布をいっぱい使うよりも、ちょっとお高いけどこの昆布を買って、細かく切って使えば逆にお買い得なのでは?と思いました。

ちなみにだしを取り終わった昆布ですが、捨てるには惜しいし、毎度毎度佃煮にしてもご飯がすすみすぎてしまうし…ということで、わたしは日々使うこの昆布はそのまま具として食べちゃっています。

昆布は糖質や脂質の吸収を抑え、コレステロール値の上昇を抑えてくれますし、過食を防いでくれるうれしい効果もあるそうですよ。

味付けなしの昆布なので塩分の摂り過ぎも気にしなくてもよいのはありがたいですよね。

そうそう、おみそ汁にも相性があって、わたしは赤みそにはいりこだし、白みそには昆布だし、お吸い物には昆布とかつおぶしのだし、普段のおみそ汁(信州みそなど)には昆布かいりこのだし、と使い分けています。

いりこもお値段で全然味が違うし、身の大きさも違うことに最近気が付きました(これはお安いいりこですが、身が薄くてほそ~い!笑)

頭と内臓は外して、わが家では主におみそ汁のだしにします。

生臭みが気になるときは、使用する前にいりこをフライパンで乾いりにしてから使うといいですよ。

最後に、だしを使って作るわが家の定番料理を最後にご紹介しますね。

簡単だけどきちんとおいしい関西風のおうどんです。

関西のおうどんって本来はうすくちしょうゆを使うのですが、わが家には常備していないので、塩と普通の濃い口しょうゆ(少なめ)を組み合わせることで、再現しています。

「わが家の普通のおうどん」レシピ

分量

2人分

材料

・冷凍うどん…2玉

・豚バラ薄切り肉…120g

※牛切り落とし肉でも◎

・油揚げ(しっとりタイプ)…1枚

・刻みねぎ…適量

・水…700ml

・昆布(利尻、羅臼など)…5cm角1枚

・かつおぶし(削りぶし)…小1パック(2.5g~3g)

A

・酒…大さじ1

・塩…小さじ1と1/2

・しょうゆ…小さじ2

作り方

1. 鍋に昆布と水を入れ、30分ほど室温におく。鍋を中火にかけ、ゆっくり煮だしていく。豚肉と油揚げは食べやすい大きさに切る。

2. 煮立ってきたら豚肉を入れ、あくを丁寧にすくう。

※このとき、昆布は入れっぱなしでOK

3. 油揚げとAを入れひと煮立ちさせたら、かつおぶしを加える。冷凍うどんを加えてあたため、器に盛り、刻みねぎをのせる。

※味見をして、物足りなければ塩を、逆に濃く感じれば水を足して調整します

※昆布もかつおぶしも引き上げたりせず、そのままにしています。家庭ではこのくらいラフで充分!どちらも具として食べちゃってください

レシピをみて、材料の中に出てくる「だし」を使わずに作れそうだなって思ったら(肉や魚が入っているか等をチェック)、それを水にかえて、調味料にひとつまみの塩を加えるとよいです。

最後に味見をして、物足りなければかつおぶしを加える、などをしてもよいかなと。

また、最初に材料をこめ油やごま油、オリーブオイルなどでしっかりと炒めたり、焼き付けたりして(そのときに少量お塩を振るといいです)素材の旨味を充分に引き出すこともだしを使わずともおいしいものができあがる秘訣かとも思います。

だしを使う料理をするときに、ぜひ参考にしてくださいね!

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