ガザへの海上輸送による最初の食料支援、海岸に到着

危機的な食料不足が続くパレスチナ自治区ガザ地区の海岸に15日、海上輸送による最初の人道支援物資が到着した。

食料200トンを積んだスペインの船「オープン・アームズ」が12日、キプロスを出航し、ガザに向かっていた。

この日、食料を載せたはしけが小型ボートに押され、急造の専用桟橋に着岸した。

オンライン投稿された動画には、はしけの上の荷箱をクレーンでトラックに移す様子が映っている。

国連はガザの状況について、飢餓の寸前だとしている。支援物資の陸路での運搬や空からの投下が危機改善につながらないなか、この日の物資到着は、海路での輸送の効果を測る最初の取り組みと位置付けられている。

今回の食料運搬は、NPO「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」がアラブ首長国連邦(UAE)と連携して実施。ガザには機能している港がないため、WCKのチームが海岸に桟橋を作った。

届けられたのは、米、小麦粉、豆類、野菜やタンパク質の缶詰。これらがどのように分配されるのかは不明。

WCK創設者で有名シェフのホセ・アンドレス氏は、すべての食料がはしけからトラック12台に積み込まれたと

「やった!」とアンドレス氏は書き、今回の作業は今後最大で「週に数千トン」まで運び込めるかのテストでもあると説明した。

ガザで軍事行動を続けるイスラエルは、声明を発表。今回の船と積荷はキプロスで検査しており、ガザの海岸ではイスラエル国防軍(IDF)の部隊が警備に当たったとした。

今回の取り組みとは別に、アメリカも海上輸送を強化するため、沖合での「浮きドック」の建設を計画している。ホワイトハウスは1日200万食をガザに運べるようになるとしており、ドック建設の機材を積んだ米軍用船が現場に向かっているが、実際にどう物資を運ぶのかの疑問は残ったままだ。

ガザでは軍事行動と社会秩序の崩壊で、支援物資の流通が著しく困難になっている。農場、パン製造所、工場などが破壊されたりアクセス不能になったりしており、食料の生産にも深刻な影響が出ている。

支援物資の搬入で、最も素早く効果的なのは陸路だ。だが、イスラエルの規制によって必要な量のごくわずかしか運び込まれていないと、支援機関は説明している。

世界食糧計画(WFP)の陸路による支援物資の輸送は、車列が銃撃や略奪に遭うなどしたため一時中断を余儀なくされた。空からの物資投下をめぐっては先週、パラシュートが機能しなかったことで物資が人々に直撃し、5人が死亡したとされている。

ハマス停戦案は「非現実的」とネタニヤフ氏

国連はガザの状況について、緊急の行動が取られなければ、飢餓は「ほぼ避けられない」と警告している。欧州連合(EU)のジョセップ・ボレル外務・安全保障政策上級代表は、イスラエルが「人災」を作り出し、飢えを戦争の武器として使っていると非難している。

イスラエルは、ガザでの食料不足はイスラエルの責任だとする見方に激しく反発。同国南部の2カ所の検問所から支援物資がガザに入るのを認めているとし、支援機関の物流の失敗だと主張している。

ガザでの停戦に向けた交渉は15日も続いた。イスラエルは、イスラム組織ハマスの最新の停戦案をはねつけた。

ハマスは停戦の「包括的ビジョン」を仲介者に提示したとしている。一方、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、同ビジョンを「非現実的」だと評した。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃し、約1200人を殺害、253人を人質に取った。それをきっかけに始まった戦争では、ガザでこれまでに3万1400人以上が殺害されたと、ハマスが運営する保健当局は発表している。

(英語記事 Gaza aid reaches shore in first sea delivery

© BBCグローバルニュースジャパン株式会社