税のメリットはどのくらい?
住宅ローンの返済や教育費の支払いのために老後資金準備が後回しになって、50歳代から本格的に始める人は少なくないでしょう。
iDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)は老後資金準備に特化した制度ですが、加入には年齢制限があります。そのため、50歳代からの加入は遅いと考える人もいるかもしれません。
この記事では、50歳代からのiDeCo加入のメリットを解説し、実際にいくらの老後資金を準備できるかをシミュレーションします。
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50歳代でiDeCoを始めるのは遅いのか?
最初にiDeCo(イデコ)の制度の概要と、50歳代からスタートするメリットについて解説します。
iDeCoの特徴
iDeCoは公的年金に上乗せするための、任意で加入する私的年金制度です。加入者が積み立てる掛金を自分で運用し、運用成果によって将来受け取る老齢給付金の額が決まります。iDeCoに加入すると、以下のような税の優遇が受けられます。
- 掛金が全額所得控除の対象になる
- 運用益には課税されず、再投資される
- 受け取り時も受け取り方法ごとに所得控除が適用される
iDeCoは原則として60歳まで引き出しができません。老齢給付金は、以下の方法で受け取ります。
- 一時金
- 年金
- 一時金と年金の併用(金融機関によっては選択不可)
iDeCoには加入者の資格によって掛金の上限が以下のように異なります。
なお、企業型DCとは企業型確定拠出年金、DBとは確定給付企業年金・厚生年金基金・石炭鉱業年金基金・私立学校教職員共済を指します。
- 第1号被保険者:月額6万8000円
- 勤務先に企業年金がない会社員:月額2万3000円
- 企業型DCのみに加入する会社員:月額2万円
- 企業型DCとDBに加入する会社員:月額1万2000円
- DBのみに加入する会社員:月額1万2000円
- 公務員:月額1万2000円
- 第3号被保険者:月額2万3000円
iDeCo は50歳代からの老後資金準備に適している
老後資金準備のスタートが50歳代からとなる人は少なくないでしょう。iDeCoは50歳代からの老後資金準備にも適した制度です。
iDeCoの掛金は全額所得控除の対象となるため、収入の多い50歳代の人は若年層に比べて税制メリットを享受しやすいといえます。また、60歳まで引き出しができない点はiDeCoのデメリットとされていますが、加入期間の短い50歳代からでは大きな不利益となりにくくなるでしょう。
60歳以降もiDeCoに加入できる人は?
iDeCoの加入期間は60歳までですが、以下の条件を満たす人は65歳まで加入できます。
- 60歳以降も厚生年金に加入して働く会社員・公務員
- 60歳以降に国民年金に任意加入している人(海外居住者含む)
定年延長によって60歳以降も同じ勤務先で働く人は多いでしょう。正社員でなくても社会保険に加入していればiDeCoに加入できるため、スタートが遅かった人も挽回は可能です。また、自営業者やフリーランスで国民年金の学生納付特例制度などで保険料を満額支払っていない場合、60歳以降に任意加入できます。
60歳以降にiDeCoに加入する人は公的年金の受給額を増額でき、さらにiDeCoでも老後資金を上乗せできるのです。
50歳から65歳までiDeCoに加入していくら老後資金を上乗せできるか
50歳代でiDeCo(イデコ)に加入して65歳まで掛金を積み立てると、老後資金をいくら準備できるでしょうか。
最終的にいくら準備できるか
金融庁の資産運用シミュレーションを利用して、掛金額と想定利回り(年率)ごとの最終積立金額を試算してみます。
【月額1万円(元本180万円)】
- 年率2%:209万7131円
- 年率3%:226万9727円
- 年率5%:267万2889円
【月額2万円(元本360万円)】
- 年率2%:419万4261円
- 年率3%:453万9454円
- 年率5%:534万5779円
【月額2万3000円(元本414万円)】
- 年率2%:482万3400円
- 年率3%:522万372円
- 年率5%:614万7646円
【月額3万円(元本540万円)】
- 年率2%:629万1392円
- 年率3%:680万9181円
- 年率5%:801万8668円
【月額5万円(元本900万円)】
- 年率2%:1048万5653円
- 年率3%:1134万8634円
- 年率5%:1336万4447円
【月額6万8000円(元本1224万円)】
- 年率2%:1426万488円
- 年率3%:1543万4143円
- 年率5%:1817万5648円
iDeCoの運用商品は定期預金や保険などの元本確保型と投資信託です。現在の低金利では、1%以上の利回りを狙うには投資信託を活用しないと難しいといえます。投資信託の運用成績は一定ではなく、元本割れする可能性もあるため、上記のシミュレーションはあくまで参考にするとよいでしょう。
上記の表から50歳からの積み立てでも、15年続けるとまとまった金額となることがわかります。家計を見直し、無理のない積立金額を設定するようにしましょう。引き出しのときの元本割れは避けたいので、リスクの高すぎる運用は控えたほうが無難です。
税のメリットはどのくらい?
50歳の会社員(年収500万円)が15年間iDeCoの積み立てをした場合の、所得税と住民税の軽減額を紹介します。試算には、国民年金基金連合会の「かんたん税制優遇シミュレーション」を使用します。
【掛金額 月額1万円】
- 1年間の税の軽減額:2万4000円
- 15年間の税の軽減額:36万円
【掛金額 月額2万円】
- 1年間の税の軽減額:4万8000円
- 15年間の税の軽減額:72万円
【掛金額 月額2万3000円】
- 1年間の税の軽減額:5万5200円
- 15年間の税の軽減額:82万8000円
運用成績と違い、税の軽減は掛金を支払えば必ず受けられます。掛金1万円でも1年間で2万4000円もの税の軽減効果があるのは、iDeCoならではのメリットです。
50歳代でiDeCoに加入する場合、受給開始年齢に注意
iDeCo(イデコ)に預けた資産を60歳から受け取りたい場合、通算加入者等期間が10年以上必要です。通算加入者等期間とは、加入者期間と運用指図者期間を合算した期間のことをいいます。ただし、60歳到達月の翌月以降は合算対象になりません。60歳時点での通算加入者等期間ごとの老齢給付金の受給可能年齢は、以下のとおりです。
- 10年以上加入:60歳
- 8年以上10年未満:61歳
- 6年以上8年未満:62歳
- 4年以上6年未満:63歳
- 2年以上4年未満:64歳
- 1ヵ月以上2年未満:65歳
上記のように60歳までの通算加入者等期間が10年に満たない場合は、受給開始が繰り下げになることを知っておきましょう。
50歳代からの老後資金準備にiDeCoを活用しましょう
iDeCo(イデコ)は他の制度にはない税制メリットがあり、50歳代からの加入でも老後資金準備に有効であると考えられます。ただし、20代や30代から始めるよりも運用期間が短くなるため、あまりリスクの高い運用はしないほうがよいでしょう。
加入にあたっては、公的年金の受け取りや何歳まで働くかといったライフプラン全体でiDeCoをどのように位置づけるかを考えましょう。
参考資料
- 厚生労働省「iDeCoに加入できる年齢の要件などが拡大されます」
- 国民年金基金連合会iDeCo公式サイト
- 金融庁「資産運用シミュレーション」
- 国民年金基金連合会「かんたん税制優遇シミュレーション」