年金の支給開始年齢が65歳→70歳に引き上げ!?…日本の年金制度にささやかれる“恐怖の改定案”【メガバンク出身のコンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

日本の年金制度は、人口構成の変化に対応するため何度も改定を重ねています。そのようななか、今後の年金制度の改定では「年金支給開始年齢の引き上げが進んでいく」と予想するのが『50代 お金の不安がなくなる副業術』(エムディエヌコーポレーション)著者の大杉潤氏です。日本の年金制度を待ち受ける“恐ろしい未来”についてみていきましょう。

年金制度の将来展望から見える日本の現状

世の中にある統計データ予測の中で、最も外れることが少ないと言われているのが人口統計です。

戦争やパンデミックのような天変地異が起こらない限り、人口予測は大きく外れることがありません。株価、為替、金利やGDP成長率の予測がよく外れるのとは対照的です。

そうした中で、日本の人口減少、少子化、高齢化、労働人口の減少がいずれも今後、急加速していくことは確実です。さらにこのトレンドが少なくとも30~50年単位の長期にわたることも間違いないでしょう。

以上のことから言える日本の年金制度の将来展望のポイントは、次の3点です。

1. 年金保険料を負担する労働人口が減少する一方、新たな年金受給者は当面増え続けるため、年金財政が逼迫する

2. 人口構成の歪みに対応するために導入された「マクロ経済スライド」という調整措置により年金受給額は物価上昇率ほど上がらず、実質の年金収入は減少する

3. 年金収入の金額が現役時代の平均手取り収入額の何%に相当するかを表す「所得代替率」は、現在の61.7%から50%(現役時代の半分)に下がっていく

日本の年金制度は、これまでも人口構成の変化に対応するために、何度も改定を重ねて複雑な制度になってきた歴史があります。もはや専門家でもすべての制度変更を正確には記憶できないほどです。

これらの3点は、これまでの年金制度改革の過程で公表されてきたものですが、5年に1度の「財政検証」と呼ばれる、年金制度が持続可能かどうかのチェック(健康診断)で今後も制度変更が議論されることになります。ちなみに次回の財政検証は2024年の予定です。

厚生労働省は、人口推計や経済成長率などの前提条件ごとに毎回、6パターンの年金財政見通しのシミュレーションを公表しているのですが、現実の実績値は過去に予測した「最悪パターン」に近い数字で推移しているのです。

年金財政の改善には「支給開始年齢の引き上げ」しかない!?

年金財政を持続可能なように改善するには、①保険料水準を引き上げる、②年金支給水準を引き下げる、③年金支給開始年齢を引き上げる、の3つしか方法がありません。

これまでは3つとも総動員して立て直してきたのですが、①、②ともに限界に近づいており、もはや③の年金支給開始年齢の引き上げしか手段がない、と私は予測しています。

具体的には、現在、65歳支給開始となっている年金を段階的に70歳支給開始に移行していくことになるでしょう。

さらにそれで止まらずに、中長期的には75歳支給開始も十分にあり得ると私は見ています。

実は、現在の厚生年金は、60歳支給開始を65歳支給開始に移行している最終段階にあります。2026年4月以降、ようやく男性は全員が65歳支給になります(女性はその5年後)。

現在進行中の移行措置から考えると、おそらく据え置き期間も考慮して16~17年という長い期間をかけて、66歳支給開始、67歳支給開始、……というように移行措置を取り、段階的に70歳支給に向けて進んでいくことになると思われます。

そのように計画しているからこそ、まずは「70歳まで働ける労働環境」を整備するという趣旨で、高年齢者雇用安定法の改正(通称「70歳就業確保法」)を行って、2021年に70歳までの就業機会確保が大企業の努力義務となりました。

翌2022年には、年金の繰り下げ受給を70歳までの5年だったものを75歳までの10年とすることを可能にしました。いずれも、年金の70歳受給開始に向けての地ならしと見るのが常識でしょう。

年金が70歳からの受給となると、70歳まで働くのが当たり前の社会になります。そうした長く働き続ける時代に、みなさんはどんな働き方をしたいですか?

私なら、好きな仕事で長く楽しく働くライフスタイルを目指します。50代から長く続けられる「副業」を始めて、ゆっくり育てていけば、それはだれにでも可能です。

大杉 潤
経営コンサルタント/ビジネス書作家/研修講師

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