部下と良好な関係を築くために「褒める」より100倍大切な「あること」とは?【マネジメントのプロが解説】

「部下をどう褒めたらいいのかわからない」と悩む上司は少なくありません。自然に褒めることができなければ、部下を育成するために「意識して褒める」ことも必要です。今回は、横山信弘氏による著書『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)から、部下を褒めるときのポイント、そして「褒めるよりもっと大切なこと」を解説します。

部下を褒める 「イフゼンルール」とは

今回は「優しさ」の考え方についてお伝えしていこう。まずは褒め方について。

叱るのも褒めるのも「発生型」の行為だ。「設定型」ではない。挨拶や声かけは計画的にできるが、叱るのも、褒めるのも、計画してできるものではないし、やってはならない。
だが、意識しないと部下を褒められない上司も多いだろう。

部下育成のために意識して褒めることを、私は「ホメジメント」と呼んでいる。「褒める」と「マネジメント」をくっつけた造語だ。

意識しないと、部下を褒めることができないマネジャーは、まず褒めるプラン(P)を考える。そしてプランどおりに実行(D)する。さらに、定期的に「正しく褒めている?」「褒めるタイミングを逃していないか?」とチェック(C)し、問題があれば改善(A)する。このようにPDCAサイクルを回すことが「ホメジメント」だ。

褒めるプランとは、「イフゼンルール」のことだ。

・もしも部下が○○をしたら、褒める ・もしも部下の行動(成果)が○○を超えたら、褒める

このような感じで、褒める「イフゼンルール」を自分の中で決めることだ。そうすることで、部下も学習するようになる。

「なるほど、こうすると褒められるのか」

「やっぱり、これぐらいでは褒められなかった」

「ホメジメント」が正しく機能すれば、上司に言われなくても部下は率先して褒められる行動をするだろう。

芯のあるマネジャーは、この基準がブレない。褒めるときは、褒める。褒めないときは、褒めない。

「褒める」よりも100倍大事なことがある

「ホメジメント」は部下が褒められる行動をしたとき、成果を出したときしか使えない。それでは、日々決められたルーティンワークをしているだけの部下を褒めてはいけない
のだろうか?

もちろん、褒めない。どんなに難易度が高くても、ルーティンワークを淡々とやっている部下を褒めることはできない。「イフゼンルール」が適用できないからだ。

それでは、何もアクションを起こさないのか?いや、それは絶対ダメだ。

おそらく、ほとんどのマネジャーはコレができないから、部下と良好な関係を築くことができないのだ。

それが「日々の感謝」である。過去と比較しての変化や、明確なお手柄がない限り「褒める」ことは難しい。だから、そんなに頻繁に部下を褒めることなんて、ないのだ。

そこで大事になってくるのは、「ありがとう。すごく助かっているよ」

この一言が言えるかどうか。

「褒める」は発生型だが、「日々の感謝」は設定型にできる。「週に2回は褒めるぞ!」
とは宣言できないが、「週に2回は感謝しよう」と計画することはできる。

照れ臭いかもしれないが、「日々の感謝」を習慣化しよう。「褒める」よりも100倍大事なことだ。

部下の「存在承認」を満たす効果的な方法

「日々の感謝」のことを、コーチング用語で「アクノリッジメント」と呼ぶ。存在承認と表現すれば、わかりやすいだろう。

とはいえ、「君のおかげで、助かっている。ありがとう」と、毎日のように言える人は少ないだろう。照れ臭いから、言えても1週間に1回だ、という人も多い。

しかし、誰だって毎日のようにできることがある。それが、そこに部下が存在していることを認めることだ。

これが存在承認である。やり方は、とても簡単。シンプルだ。

名前を呼んで、挨拶するだけ。声をかけるだけでいい。

「田中さん、おはようございます」
「吉田さん、お疲れ様」

これでいい。短いフレーズだが、効果抜群だ。こんなに「タイパ」の高いコミュニケーションはないだろう。

「即レス」も存在承認の1つだ。部長や課長、他の先輩からのメールにはレスが早いのに、自分のメールへのレスが遅いと、「自分の存在が軽んじられている」と思い込むものだ。

どんなに傾聴を心がけていても、いつもメールのレスが遅いのであれば、マイナス効果のほうが高い。

自分の都合のいいタイミングで「何でも話を聞くぞ」「困ったことがあったら、いつでも相談してくれ」と呼びかけても、部下はその気にならない。日ごろから自分の存在をスルーしておいて、それはないだろう、と部下は思うからだ。

評価や待遇を改善するより、まずは日ごろの「アクノリッジメント」に力を入れよう。

横山 信弘

株式会社アタックス・セールス・アソシエイツ代表取締役社長

経営コンサルタント

※本記事は『若者に辞められると困るので、強く言えません』(東洋経済新報社)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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