プーチン氏、圧倒的勝利でロシア大統領5選 アメリカの民主主義をあざける

ポール・カービー、BBCニュース

ロシア大統領選挙で17日、ウラジーミル・プーチン大統領が政府寄りの3候補者を相手に地滑り的に勝利し、5選されることが確実となった。

選挙管理当局は、プーチン氏の得票率が87%を超えたと発表した。プーチン氏は、ロシアの民主主義は西側の多くの国のものより透明性が高いと述べた。

ただ現実には、今回の選挙で本来の意味での対立候補は1人も立候補を認められなかった。

プーチン氏を厳しく批判していた故アレクセイ・ナワリヌイ氏の支持者らは、象徴的な抗議活動を展開した。

「反プーチンの正午」と名付けられたこの抗議活動では、モスクワやサンクトペテルブルクなどの国内都市や、諸外国のロシア大使館の前で、有権者らが長い列を作った。だが、選挙結果に影響は及ぼさなかった。

人権監視団体「OVDインフォ」によると、今回の選挙では少なくとも80人のロシア人が拘束された。投票初日の15日には一部の投票所で妨害行為があったが、その後にそうした行為はみられなかった。

西側各国はそろって、今回の大統領選を自由でも公正でもないと非難した。ドイツは、検閲、弾圧、暴力を利用する権威主義的な支配者の下での「擬似選挙」だと批判した。

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、「ロシアの独裁者はまたしても、選挙をしたふりをしている」と述べた。

故ナワリヌイ氏の盟友で、亡命先のリトアニアにおいて先週、肉用ハンマーで襲撃されたレオニード・ヴォルコフ氏は、「プーチンの得票率は、もちろん現実とは何一つ関係ない」とコメントした。

ロシア各地の有権者は3日間、投票が可能だった。ロシアが占領しているウクライナの地域では、さらに長い投票期間が設定され、当局が住民らに投票を働きかけた。

報道などによると、占領下のウクライナの都市ベルディアンスクで17日、選管職員1人が殺害された。住民らは、親ロシアの協力者らが投票箱を持って、武装兵士を連れて家々を回っていたと話した。

当局によって慎重にコントロールされている国営テレビ局は、今回の選挙結果を勝利だとたたえた。

記者の1人は、「ウラジーミル・プーチンという人物を中心とした、驚異的なレベルの支持と団結だ」、「西側諸国にシグナルを送るものだ」と興奮状態で伝えた。

プーチン氏は当選が確実になった後、記者団からの質問に答え、控えめな態度を見せた。ただ、ロシアの大統領選はアメリカよりはるかに進んでいると称賛し、800万人が投票したとされるオンライン投票の活用に言及した。

今回の選挙ではプーチン氏自身もキーボードを押してオンライン投票し、その様子が映像で紹介されていた。

「透明性があり、完全に客観的だ」とプーチン氏は述べた。「票を10ドルで買えるアメリカの郵便投票とは別物だ」。

プーチン氏はまた、有権者にこぞって投票するよう呼びかけた反政権派の運動家らをたたえる余裕も見せた。一方で、投票を妨害しにした人々を非難し、相応の措置が取られるとした。

プーチン氏はこの日、自らのことを強く批判してきたナワリヌイ氏の名前を初めて口にした。ナワリヌイ氏は先月、北極圏の刑務所で死亡した。

プーチン氏は、ナワリヌイ氏の殺害を命じたとの疑惑を打ち消そうとしてか、西側で収監されているロシア人とナワリヌイ氏の交換を検討していたとの報道について、正しいと認めた。ナワリヌイ氏が二度とロシアに戻らないことが条件だったという。

「私は賛成だと言ったが、残念なことに、ああいうことが起きてしまった。どうしようもない。それが人生だ」

ナワリヌイ氏の妻ユリア・ナワルナヤ氏は、抗議の投票活動として、ドイツ・ベルリンのロシア大使館の前で6時間並んだと話した。投票用紙には亡き夫の名前を書いたとし、集まった人々について、「すべてが無駄ではないという希望」を与えてくれたと称賛した。

イギリス・ロンドンで抗議の投票をした1人は、票を投じるために7時間以上並んだと話した。

ロシアの大統領選は決して公平ではなかった。クレムリンは政治制度、メディア、選挙を、厳しい統制下に置いている。

共産党の候補ニコライ・ハリトーノフ氏の得票率は4%強だった。他の候補はさらに低い得票率だった。

対立候補3人は誰も、実質的な選挙運動をしなかった。ハリトーノフ氏は選挙前、プーチン氏を称賛すらしていた。

ハリトーノフ氏は、「(プーチン氏は)すべての地域での勝利を目指して、国をまとめようとしている。これは実現するだろう」とBBCのスティーヴ・ローゼンバーグ・ロシア編集長に話した。

何百万人ものロシア人が通算5期目を迎えるプーチン大統領に投票したのは、他にまともな選択肢がなかったのも理由の一つだ。

ただそれは純粋に、挑戦者となる可能性がある人物をクレムリンが政界から排除してきた結果だ。反政権派は、投獄されるか、国外に逃れるか、命を落とすかしている。

一時期、ウクライナ侵攻に反対する政治家ボリス・ナデジディン氏の立候補が認められる可能性が取り沙汰されていた。しかし、同氏のメッセージに共感し、支持を表明するロシア人が増えるなか、選管は先月、同氏を選挙から排除した。

(英語記事 Russian election: Putin claims landslide and scorns US democracy

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