「とりあえず」継続雇用ではない暮らし方、老後をどこまでイメージして準備したら良いのか

NISAやiDeCoといった税制優遇制度を老後資金用に活用している方も多いかと思いますが、そもそも老後をどこまで具体的にイメージして準備したら良いのでしょうか? 今回は海外のリタイアメント事情も踏まえ考えてみたいと思います。


「その日」は突然来なくても良い

筆者は現在、大学時代の友人を訪ねてマレーシアに来ております。1週間の滞在ですが、これから自分が望むライフスタイルを考える際にとても刺激になる話を聞けたのでみなさんにもシェアしたいと思います。

筆者は1990年から4年間アメリカにおりました。夫が米国の大学で大学院に進むことになっていたので、早々に結婚式を挙げ一緒に渡米したのです。最初は特に目的もなく家庭にいるつもりでしたが、義理の父が「大学進学」をサポートしてくれることになり急遽英語の試験を受けて州立大学に編入しました。

学生時代は様々なバッググランドを持った人達と交流することができました。大学を卒業してからは家族ぐるみの交流をするなど30年以上にわたるすてきなおつきあいをしています。

今回はその中の一人がマレーシアにコンドミニアムを購入したので、良い機会だと思い訪ねたのです。友人はマレーシア人ですが、アメリカでの生活が長く現在夫と子ども達はアメリカに住んでいます。

彼女自身は大学院を終えた後、ずっとキャリアを積み60歳を機に会社を退職しました。昔から投資にも明るい人だったので、確定拠出年金や株式投資などで得た資金を利用し今回セカンドハウスとしてマレーシアに生活拠点を設けたのです。

会社はリタイアしましたが、投資はもちろん継続していますし、現役時代からNPOの活動に参加し、今はその活動にさらに時間を割いているとのことです。マレーシアには兄弟姉妹が住んでいるので、ここで1年のうちの数ヶ月を過ごしアメリカと行ったり来たりの暮らしをしばらくしようと思っているそうです。

筆者も当然パソコンを持ち込んで遊びに来ているのですが、インターネットがあればどこでも働ける環境にあるのであれば、1年のうちの数ヶ月を海外で過ごすのもまったく問題ないと改めて感じています。また彼女のように、フルタイムで働くことを仮に60歳で辞めたとしても、社会とのつながりを突然遮断することなく、むしろ今まで時間をとれなかった活動にもっと積極的に時間を費やすことができるのであれば、このようなライフスタイルもすてきだと思いました。

日本人の場合、定年後は「とりあえず」継続雇用で5年くらいは働いて、その後は年金暮らしをしようかなどと漠然と考えている方も実際多いのですが、積極的に自身のリタイアメントを楽しんでいる友人の姿はひとつの理想の姿として参考になりました。

考えていた人とそうではない人には違いがある

話好きの友人なので、ここではずっと会話を楽しんでいます。アメリカとはいえ、女性が子育てをしながら働き続けるには様々な苦労があったこと、また外国人であるということで、キャリアを積むにあたり超えなければならない壁もたくさんあったことなども話しました。本当に苦労のない人生を送っている人はいないということを思いながら、彼女の話に聞き入っていました。

そのうち、マレーシアでコンドミニアムを購入することはいつから計画していたのかという話になりました。すると、10年くらいの時間をかけて様々なシミュレーションをしたり、物件をリサーチしたりしながら決めたというのです。

当然その間には、コロナの影響で動きがまったくとれなくなった時期もありますが、だからこそ自分の理想とするライフスタイルを実現するための努力は惜しまずに計画を実行しようという気持ちにもなったと言っていました。

では、彼女の周りの人達も同じように自分自身のリタイアメントをプランニングし実現のために動いているのかというと、積極的に考えている人はむしろ少数派であるというのです。

よくiDeCoの説明をする際に、アメリカの401k制度を引き合いに、多くのアメリカ人が活用し老後資金を準備している税制優遇の制度だということが言われたりしますが、401kの利用についても、「とりあえず」お得だからやっているだけで、特にこれといったリタイアメントプランがあってそれに向かって前向きな努力をしている人は、彼女が知る限りそう多くはないとも言っていました。

アメリカの401kは、日本の企業型確定拠出年金にあたります。日本と異なる点は、まず従業員が401kを利用して掛金を拠出することを決定し、その額にあわせた金額を会社がマッチする仕組みであるということです。従って自分が掛金を出せばその分会社がお金を出してくれるので、そのお得さが分りやすいこともあり利用している人はとても多いと言われています。

またアメリカの場合、自国の市場が過去とても良かったこともあり、実際それほどしっかり投資に対し理解を深める必要もなく、「とりあえず」投資を実行していれば結果オーライだったということも有るようです。

しかし少数派とはいえ、彼女のように積極的に自分自身の人生を切り開いてきた人は、結果的に投資で得た利益も大きいですし、またそのお金を自分の理想の暮らしのために使うエネルギーも莫大で、だからこそここまでの暮らしを手に入れることができたのではないかと、今バルコニーからヨットハーバーを眺めながら筆者は考えています。

老後とは、なにもしない日々なのではなく、これまでできなかったことに取り組める時間と考えると、できるだけ早くから視野を広め、考えを深め、計画をもちながらその日を迎える方がやはり良いのではと想います。

もちろんこれまでのライフスタイルをいきなり変えるとなると、様々なところに影響がでてきてしまいますから、ゆるやかに、様子を見ながら変化を楽しむのは非常に賢い方法です。

実際友人が今NPOで活動していることは、筆者自身もかつてから関心をもっていることなので、その点でも大いに話しが弾んでいます。世界中の人が共通して抱える課題に対して取り組むことでもあるので、情報交換もとても有意義です。

筆者もあと数年で60歳になりますが、彼女のライフスタイルに非常に感銘を受けたので、私自身のこれからの生き方ももう少し視野を広げて考えてみようと思っているところです。

同時に、現在の投資ポートフォリオの見直しも実行します。積立額も少し増やしたいと思うので、日本に帰ったら資産の棚卸しをしながら、投資に回せる資金を発掘するつもりです。積立額を1万円増やせるだけで、将来が大きく変化することはこれまで身をもって体験しているので、こういう細かい努力の価値は見落とさずにいたいと考えています。

改めて彼女とのおつきあいを振り返ると、人生の様々なタイミングで出会い、たくさん会話をしてきたことが思い出されます。そして、彼女の今のライフスタイルは彼女の生き方そのものであるということも理解しています。彼女は、自分の考えを一生かけて熟成させ、自分の想いを一生かけてステージを変えながら実現させているのだということがよく分りました。

いつも彼女にはたくさんの刺激をもらっていますが、今回も「自分の人生」を改めて見つめるきっかけになりました。同時に、お金はやはり道具であり、自分が描く人生をよりよい形にするために有意義に使うものだという認識を深めました。

みなさんの積立投資が喜びに変わるのははるか先のことかも知れませんが、今の延長線上にそのような未来が待っていることを信じて行動できるのなら、理想的な資産形成になるのではないかと想います。

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