新NISAで「個別株」を買うなら…知っておきたい「投資信託との違い」と「チャートの読み方」【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

ネット上で「新NISA_初心者」などと検索をかけると、「初心者は投資信託1択!」といった内容の記事やウェブサイトがたくさん出てきます。しかし、資産形成を始めるうえで、個別株などへの投資に興味を抱く人は少なくありません。そこで今回は、『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』著者でCFPの小山信康氏が、投資初心者へ向けて「投資信託と株式投資の違い」や「チャートの読み方」を解説します。

投資信託と株式投資の「5つ」の違い

今は投資初心者を自認している人でも、「いつかは成長投資枠を使って、個別銘柄の株式を自分で選んで投資してみたい」と考えている方もいることでしょう。

ある程度投資に慣れた段階で「自分でやってみる」というのは、前向きなステップアップと考えられます。将来、「株式投資家」を名乗る日を夢見ることも、決して悪い野望ではないでしょう。

ただし、投資信託の購入と、上場株式を自分で選んで投資することを、同一で考えることはできません。違いも多いので、それらを意識しながら、慎重に検討しましょう。

1.ランニングコストがゼロ

投資信託には信託報酬の負担がありました。一方、新NISAで購入した個別銘柄の上場株式に対し、信託報酬のようなランニングコストはかかりません。つまり、コストゼロで投資を続けることができます。

そのため、株式投資に慣れている人の中には、「信託報酬をとられるのがバカらしい」と言って、投資信託の購入を避ける人もいるくらいです。

2.売買手数料がかかる

購入時に手数料がかかる場合、投資信託は投資額に対する割合で計算します。一方、株式を購入(売却)する場合は、取引1回あたりで手数料が計算されます

なお、投資信託の売却(解約)時において、手続きに対する手数料はかかりません(信託財産留保額は除く)。ただし、金融機関によっては、それぞれ無料になったり計算の条件が異なることもあります。

3.個人での分散投資が難しい

「新NISAで投資できる上場株式は国内の銘柄のみ」となっている証券会社もあります。その場合は、国際的な分散投資は当然できません。上場株式の売買に夢中になっていると、国内株式に偏った資産配分になりかねないので注意しましょう。それ以上に問題となるのが、bs銘柄分散bssです。

たとえば、国内の株式で運用する投資信託の場合、複数の上場株式に投資して運用しています。少なくとも数十種類の銘柄、商品によっては2000前後の銘柄に投資するものもあります。

もちろん、新NISAにおいて「1人〇〇銘柄まで」という制限はないので、自分自身で銘柄を分散することも可能です。ただし、成長投資枠をフルに使っても総額1200万円までです。現実的にそこまで投資資金を確保できる人は少ないでしょうから、銘柄分散を意識して株式投資するのは難しいと言えるでしょう。

株式投資の場合は「銘柄分析」も自分で

4.銘柄分析が大変

国内には、今後の成長が期待できる企業もあれば、衰退の一途をたどる企業もあります。倒産寸前かと思いきや、新規事業に活路を見出す企業もあります。

もちろん、上場企業はさまざまな情報を開示しているので、それらを分析すれば、今後成長する、つまり株価が上がる銘柄を見つけることができるかもしれませんが、3000を超える上場企業を分析するのは大変です。

現実的には、たまたま興味を持った企業から順に分析することになるでしょうが、チームを組んで銘柄分析を行っている投資信託に比べると、体制的にやや不利な形で株式投資を行うことになります。

5.相場のチェックが大変

株式投資はハイリスクです。短時間で急激に値上がりすることもあれば、値下がりすることもあります。多くの人が働いている昼間に株式相場は開いているので、みなさんが仕事で手が離せない時間に急落することもあります。

投資信託であれば、運用の担当者が機動的に対応することができますが、自分自身で株式投資をしている場合は、傍観することさえ間に合わないといったケースも想定されます。

[図表1]個別銘柄の株式と投資信託の違い 出所:『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

ローソク足は「1日単位の値動き」を示す

チャートを訳すと、「図」や「図表」になります。もっと簡単に言えばグラフのことです。投資の結果をチャートで表すと、過去の推移や傾向を把握しやすくなります。とくに株式投資においては、チャートを読めることが常識と言っても過言ではありません。

株式チャートでよく使われるのがローソク足です。初めて見ると、「なんだ、これ?」と感じるかもしれませんが、意外と簡単なので、モチベーションを落とさず、見てみてください。

ローソク足は、主に1日単位の値動きを示す際に用いられます。その日に株価が値上がりすると、四角いローソク部分が白抜きになります。

[図表2]株価が上がった時(A)と株価が下がった時(B) 出所:『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

[図表2]のAのケースでは、その日の最初の取引が1株あたり490円で売買され、最後の取引は500円だったので、1日で10円値上がりしたということになります。上下に伸びている線は、その日の最高値と最安値を示します。

Aのローソク足を読み取ると、「株価490円でスタートして、一時484円まで値下がったものの、その後切り返して503円まで値上がった。ただ、最終的には500円で落ち着いた」と考えられます。ローソク足によって、その日の取引が大まかにイメージできるようになっています。

Bのように、ローソク部分が黒く塗りつぶされている場合は、その日の株価が値下がりしたことを意味します。しかも、上に伸びている線が無いので、最初の取引でついた株価を上回る場面が1度もなかったことが分かります。

Bを読み取ると、「株価500円でスタートしたものの、値下がりし続けて一時は481円まで至ることに。ただ、その後はやや落ち着いて、490円まで株価は戻った」と考えられます。なお、1日単位で作ったローソク足を「日足」1週間単位で作ったものを「週足」、1ヵ月単位で作ったものを「月足」と呼んでいます。

株価予測でよく使われる「移動平均線」とは?

また、ローソク足の終値を結んでチャートを作れば、株価の推移を把握することができます。

ただ、株価はその日ごとの値上がり・値下がりだけでも大きいため、チャートの形がギザギザになって見えづらくなってしまいます。そこで、単純に1日ごとの終値でチャートを作るのではなく、数日、または数週間・数ヵ月間の平均値を繋いで株価のチャートを作るのが一般的です。

これを「移動平均線」と呼んでいるのですが、将来の株価を予測する際に、この移動平均線がよく使われています。

比較的短い期間の平均値を用いるものを短期線、長い期間の平均値を用いたものを長期線と呼んでいますが、この移動平均値の推移をみて、今後の株価動向を予測するのです。

[図表3]デッド・クロスとゴールデン・クロス 出所:『ファイナンシャルプランナーが手取り足取り教える新NISA』(彩図社)より抜粋

たとえば、[図表3]のようなチャートがあるとします。短期は1年ごと、長期は5年ごとの移動平均線です。Aで、短期線が長期線を下に追い越しています。この形は「デッド・クロス」と呼ばれ、下落相場の予兆と考えられています。

Bでは逆に、短期線が長期線を上に追い越す形になっています。これを「ゴールデン・クロス」と呼んでいて、その後のさらなる値上がりの予兆と言われています。

ただし、これらはあくまでも傾向であるため、必ずそのように値動きするという訳ではありません。

とくに個別銘柄の長期的な値動きは、それぞれの企業の業績や成長力が基本となります。チャート分析を過信するのではなく、参考程度に活用した方がベターと言えるでしょう。

小山 信康
CFP®
1級企業年金総合プランナー

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