トランプ氏、罰金4.64億ドルの保証金確保できずと弁護団 一族企業の不正訴訟

アメリカのドナルド・トランプ前大統領と一族企業が、保有資産の価値を操作して得た不正利益を返還するようニューヨーク州地裁に命じられた民事訴訟で、トランプ氏の弁護団は18日、控訴手続きに必要な保証金約4億6400万ドル(約690億円)を確保できないと表明した。

トランプ前大統領は、これほどの額の保証金を全額確保するのは「事実上、不可能」だと述べた。

前大統領は声明で、このような額の保証金支払いは「どんな企業にとっても不可能だ。私のほど成功した企業にとっても不可能だ」、「保証会社はこれほど大きい保証金など聞いたことがなかった」と述べた。

トランプ氏側は保証金の支払い担保を求め、大手保険会社など約30社と交渉したが、「それほどの額の保証金を検討してくれる会社はほとんどなく」、交渉がとん挫したのだと、弁護団は裁判所に提出した資料で説明した。

弁護団は、「これほどの規模の保証金支払いが課せられる異例の事態では、それは世界最大級の企業に提示されるものだ。個人や、個人所有の事業に対してではない」と声明で述べた。

トランプ氏が期日までに罰金または保証金を支払わなければ、ニューヨーク州が資産の一部を差し押さえる可能性がある。

一方、保証会社が保証金を担保してトランプ氏が控訴し、敗訴した場合、もしトランプ氏がその時点で罰金を払えなければ、保証会社が罰金全額を州地裁に支払うことになる。

ニューヨーク州地裁は2月16日、トランプ前大統領が所有資産の価値を過大に申告し、不正な利益を得たとして、約3億5490万ドル(約533億円)の罰金支払いを命じた。さらに、前大統領に向こう3年間、ニューヨーク州内で企業経営者になったり、州内の金融機関から融資を得ることを禁止した。

州地裁のアーサー・エンゴロン判事は、前大統領に命じた罰金に加え、共に被告となった息子2人に対してもそれぞれ400万ドルずつ罰金を命じ、州内での企業活動を向こう2年間禁止した。

トランプ氏に対する企業経営禁止命令はいったん差し止められているものの、罰金に対する保証金の額を1億ドルに減額するよう求めたトランプ氏側の請求は、却下されている。

前大統領と一族企業に対する民事訴訟を提起したニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ司法長官は、罰金の支払いがなければ前大統領の資産を差し押さえると表明している。罰金に対する1日11万2000ドルの金利も、累積している。

弁護団は、保証会社が「不動産などの資産を担保として」受け入れず、現金か簡単に現金化できる金融資産などしか担保として認めなかったと説明した。

元連邦検事のダイアン・フローレンス氏は、これほど巨額な罰金は通常、大企業に課せられるものだと指摘。トランプ前大統領がおかれている法律上の立場は前例がないため、次の展開が予想しにくくなっていると話す。

弁護団は時間稼ぎをしているのかもしれないが、その策も尽きつつあるかもしれないと元検事は言い、「州司法長官が実際に資産の差し押さえを始める可能性が、現実的なものとして迫っている。裁判所が前大統領に猶予を与えるかどうかに、大きくかかっている」と説明した。

米経済誌フォーブスによると、トランプ前大統領の資産総額は約26億ドル。昨年には、このほか当座資産として4億ドルを保有していると証言していた。

前大統領は、ニューヨーク州地裁に命じられたこの約4億6400万ドルとは別に、1990年代に性的に暴行したと認定された女性作家への名誉棄損について今年1月、損害賠償金8300万ドルの支払いをニューヨーク連邦地裁に命じられているこれについての保証金は、すでに支払い済み。

トランプ前大統領が直面する数々の訴訟のうち、18日には別の裁判でも前大統領側の請求が退けられた。

ポルノ俳優への口止め料支払いに関係する事業記録改ざんの罪を問われている裁判において、ニューヨーク州地裁の判事は、主要証人2人の証言を阻止しようとしたトランプ氏側の請求を退け、トランプ氏の元顧問弁護士マイケル・コーエン氏と、トランプ氏と性的関係について口止め料の支払いを受けたとするポルノ俳優ストーミー・ダニエルズ氏の証言を認めた。この公判は4月にも始まる見通し。

(英語記事

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