バンクシー、ロンドン北部に登場の「木」の壁画は自分作と認める

世界的な覆面芸術家、バンクシーは18日、ロンドン北部で前日に出現した「木」の壁画は自分によるものだと認めた。

フィンスベリー・パークの建物の壁に吹き付けられた緑色のペンキと、その下にスプレーペンキの器具を手にして立つ人物の絵は、その手前に立つ枝葉を落とされた木と合わせて眺めると、緑の葉が豊かに生い茂る生き生きとした木の姿に見えるようになっている。

で、木の後ろの壁に緑の絵を描く前の写真と、その後の写真を投稿した。

この壁画を見にすでに大勢が集まり、地元住民の一人は、バンクシーが自分たちの通りを選んだのは「誇らしい」と話した。

壁画の近くに住むワンジャ・セラーズさんは、「私たち住民にあてた個人的なメッセージのように思えて、ひたすら誇らしい」と話した。

この通りがあるロンドン北部イズリントン・ノース選挙区を代表する元労働党党首のジェレミー・コービン下院議員は、「バンクシーはここフィンスベリー・パークに来て、もう少し緑があった方がいい場所に、少し緑を持ち込んでくれた。ここはこの国で最も人口密度の高い選挙区なだけに、とても喜んでいる」とPA通信に話した。

壁画は白い壁に「緑のペンキを盛大に吹き付け」たほか、「典型的なバンクシー流のステンシル画」を添えたものだと、バンクシー作品に詳しいジェイムズ・ピークさんはBBCラジオに話した。

ペンキの色は、イズリントン行政区が住所表示などの道路標識に使う色と一緒で、ディテールにこだわるバンクシーらしいとピークさんは指摘。

「一歩引いて絵を見ると、生き生きとした木に見えるが、それと同時に明らかに偽で人工的なものだ」

「もう季節は春で、この木は新芽を吹いているべき時期なのに、実にみじめな状態になっているのを、自転車で通りがかったバンクシーが気付いたに違いない」

バンクシーが自分の作品だと認める前には、行政区の労働党議員が「この地域で最も貧しい場所のひとつ、公営住宅が居並ぶ地区のど真ん中」にバンクシーの芸術作品が登場したなら「素晴らしいこと」だと歓迎していた。

イズリントン行政区は、この壁画がバンクシー作品だと落書き対策担当は承知しており、消したりしないと話している。

行政区によると、壁画の前にある桜の木は樹齢40~50歳で、腐敗とかびによる損傷が進んでいるという。そのため安全確保と樹齢延長のために木の世話を続けてきたし、今後も木を生かすための手入れを続けるという。

壁画が描かれた建物の所有企業経営者アレックス・ジョルジョウさんは、17日夜に壁画について知り、18日朝に初めて見に行ったと話す。

建物は現在空き家で、賃貸募集に出ているという。

「じゃあこれからどうすればいいんだろう?」とジョルジョウさんは話した。「もちろん絵はそのままにして、誰もが見て楽しめるようにするつもりだ。みんな絵が気に入っていて、本当に最高だけど。正直言ってまだ信じられない気持ちだ」。

バンクシーは世界で最も有名な現役芸術家のひとりだが、公式にはいまだにその正体は明らかになっていない。

最近では昨年12月にロンドン南部に出現した、「STOP」という停止標識に軍事ドローン3機があしらわれた作品がバンクシー作だと確認された直後、現場から持ち出された。ロンドン警視庁は男2人を拘束し、保釈保証金の支払いを命じた。

バンクシーに関するラジオ番組制作にかかわったこともあるピークさんは、BBCラジオに、手前の木を作品の一部にしたことで自分の作品が盗まれるという問題をバンクシー自ら「解決した」と話した。

(英語記事 Banksy: Artist confirms new London tree mural is his own work

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