「D&I推進するも結局“男性優位”な会社」と「海外M&Aをしても“日本から出られない”会社」が実は同根なワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

企業変革の必要性が高まる一方で、「頑張っているのに変われない」という事態に直面する企業は少なくありません。「頑張っているのに…」という言葉の裏には「頑張れば変われるはずである」という期待が読み取れますが、240社・15,000人以上の成長支援を行った筆者らは「努力量の問題ではない」と分析します。では、組織が変われない背景には何があるのでしょうか? 西田徹氏・山碕学氏による共著『組織が変われない3つの理由』(松村憲氏監修、日本能率協会マネジメントセンター)より一部を抜粋し、見ていきましょう。

日本中の「頑張っているのに変われない企業」の“盲点”

「こんなに頑張っているのに、なぜ組織は変われないのだろうか?」と無力感を抱いている方は、多いことと思います。私たちも大いに共感します。

ただ、そのように思い悩むのは、あなただけではありません。以下のようなことが、日本中の多くの組織で起きているのです。

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●MVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を制定し、巨額の予算を割いて社内アピールしたものの、従業員の行動は全く変わらない…

●DX推進の柱として業務効率化のための情報システムを開発したのに、現場ではそれが使われず、相変わらず巨大なExcelファイルと皆が格闘している…

●ダイバーシティ&インクルージョン(D&I)推進室を設置して数多くの研修を実施したのだが、相変わらず社内は男性優位の風潮。女性管理者比率がほんの少し上昇しただけ…

●若手の意見を吸い上げようとするものの、彼らは何も発言しない。ようやく発言してくれたと思ったら、ベテラン社員からの横槍が入ってしまった。若手社員たちは、それに懲りたのか、これまで以上に発言しなくなってしまった…

●多様化するビジネス環境に応じてカンパニー制を採ったが、カンパニーごとの活力が生まれない。むしろ縦割りの弊害が大きく「カンパニー制なんてやめたほうがいい!」といった本音が聞こえてくる

●グローバル化の掛け声と共に海外企業を買収するも、シナジーはない。単なる株主として連結決算しているだけ。本体はドメスティックのままで変わらない…

●新製品開発が全くうまくいかないことに業を煮やした社長が、R&Dの責任者に外部プロ経営者を招聘。しかし、彼のハラスメントによって組織は疲弊し、相変わらず画期的な新製品は生まれていない…

●「このままでは会社がつぶれてしまう」という危機感を持っているのはトップ層のみ。ミドルから下は「まぁ何とかなるさ」と他人事…

●コンサルティング会社から習った聞こえの良いキーワード「オペレーショナル・エクセレンス」が社内で叫ばれているが、誰もその意味を本当にはわかっていない。当然のことながら、実際の仕事のやり方は、何も変わっていない…

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いかがでしょうか。あなたの職場でも、似たようなことが起きているのではないでしょうか。

これらの例は多岐にわたりますが、根底の構造は実は皆同じなのです。

そして何より、それぞれの組織は決して怠けているわけではありません。「何とかしなければ」と必死に努力しているのです。それなのに組織は変わらない…それが今、多くの組織で起きていることです。

そうだとしたら、どうもこれは、努力の「量」だけの問題ではないのでしょう。「取り組み方」に問題があるのです。

「組織変革が必要だが、変革自体が困難」という時代背景も

なぜ、これほどまでに「組織を変えること」が難しくなってしまっているのか。本書『組織が変われない3つの理由』ではそれを3つに分類し、打ち手を検討していくのですが、その前に、マクロな話を考えてみます。それは、組織が置かれている時代背景です。

既に多くの方に知られるようになった「VUCA」。この4文字は以下の単語の略です。

V:Volatility(変動性・不安定さ)

U:Uncertainty(不確実性・不確定さ)

C:Complexity(複雑性)

A:Ambiguity(曖昧性・不明確さ)

現在、組織を取り巻く環境を端的に言うならば、この4つに集約できます。

VUCAの時代においては、組織を変えないと生き残っていくのが難しい反面で、実は組織を変えること自体が困難になるのです。

たとえば、曖昧で不明確な状況では、リーダーが「組織をどう変えるべきか」の結論に至ることが困難となります。変革の方針をリーダーが示すこと自体に、難しさがあるのです。

不確実な状況を、肌で感じるのは現場のメンバーたちです。様々な変化に直面することでしょう。「本当にこの方向に進んでよいのだろうか」と、組織やリーダーが示す方向性に不安になるのも当然です。

また、物事が大きく変動し続けるわけですから、組織が変化を成し遂げても、また次の環境変化がすぐに起こってきます。絶え間なく変化し続けなければ、複雑で曖昧な時代環境に適応することはできません。しかし、組織は放っておいたら硬直化するものなので、「絶え間ない変化」を続けるのは、非常に難しいのが現実です。

組織の変革がうまくいかない時代背景として、これらの点を理解しておく必要があります。

【著者】西田 徹

バランスト・グロース・コンサルティング株式会社 取締役

【著者】山碕 学

バランスト・グロース・コンサルティング株式会社 取締役

【監修】松村 憲

バランスト・グロース・コンサルティング株式会社 取締役

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