「ただいま、楢葉」JFAアカデミー女子、13年ぶり帰還 聖地で再び

楢葉町民らの出迎えを受けて入寮するアカデミー福島の女子選手たち=21日午後、楢葉町

 日本サッカー協会(JFA)の選手育成機関「JFAアカデミー福島」の女子が21日、13年ぶりに楢葉町へ帰還した。東日本大震災と東京電力福島第1原発事故の影響を受け、2011年から静岡県に活動拠点を移していた。新年度から中学1年~高校3年生までの40人がJヴィレッジを拠点に活動を再開する。男子は21年に帰還しており、今春から男女そろって県内で活動する。

 「おかえり」「ようこそ」―。静岡県からバスで移動してきた選手たちが寮の前に到着すると、出迎えた楢葉町民らが次々と声を上げた。「ようこそ楢葉町へ みんなで共にがんばろう」と書かれた横断幕も掲げ、選手たちを歓迎した。歓迎セレモニーでは青木洋町教育長が「皆さんの帰還を待っていた。全力で応援していく」とあいさつ。町は女子の帰還に合わせて寮を全面改修し、選手たちの帰還を心待ちにしていた。

 14期生で高校2年の樋口梨花(りんか)主将(17)=埼玉県出身=は「歓迎ありがとうございます。福島をサッカーで盛り上げたい」と感謝の言葉を述べた。入寮した中で唯一の本県出身者である18期生で中学1年の渡辺優奈さん(13)=福島市出身=は「新しい友達をつくりたい。復興の力となれるよう頑張る」と語った上で、「海外で活躍できる選手を目指し、体づくりやレベルアップに取り組む」と新生活での抱負を語った。

 町民「ずっと待ってた」

 選手の帰還を受け、地元住民は復興の力として期待を膨らませる。選手を応援する楢葉町の「サポートファミリー」を震災前から務める民宿経営の小山重勝さん(72)は「帰還をずっと待っていた。選手が戻ってくれば、町が元気になるのでうれしい」と声を弾ませた。

 中学生21人が通学することで、楢葉中の生徒は65人に増えることから、松本幸英楢葉町長は「全ての選手が優秀なので地元の子どもにも好影響が及ぶはず」と期待し「まずは町を知り、町民と交流してほしい」と願った。すでに中学生男子が町内へ通学している遠藤智広野町長は「世界に羽ばたく若人を町を挙げて応援していく」と約束した。

 田嶋会長も期待

 JFA関係者も特別な思いを抱いている。2006年にアカデミー福島の設立を先導し、初代スクールマスターも務めたJFAの田嶋幸三会長は「東日本大震災を経験したJヴィレッジとアカデミーの歴史を、もっと素晴らしいものに変えられるように、努力していきたい」と語った。

 そして、田嶋会長は「単純にサッカーができる、勉強ができるということではなく『社会のリーダーとして活躍してほしい』という理念をもう一度見直し、その精神を忘れずに活動していく」と話した。

■JFAアカデミー福島 中学生から高校生を対象とした選手育成機関で、2006年に開設された。女子日本代表「なでしこジャパン」の選手などを多く輩出してきた。男子は中学生のみの3年制に移行し、21年に本県に帰還した。アカデミーに所属する高校生はふたば未来学園高、中学生は男子が広野中、女子が楢葉中に通学する。

© 福島民友新聞株式会社