スープで健康にダイエットしたインスタで人気の管理栄養士が伝えたいこと

小学生の頃に難病であるIgA腎症を患ったことをきっかけに、食生活の大切さを実感したことから管理栄養士を志し、現在ではInstagramフォロワーが11万を超える人気を集めている管理栄養士・りのさん。

彼女は出産を機にスープダイエットを始め、20kgの減量に成功。そこで得た経験と知識をもとに、栄養たっぷりで手軽に作れるスープレシピを発表しているが、その道程は平坦なものではなかった。ニュースクランチ編集部は、そんな彼女に管理栄養士を志した経緯や、ダイエットスープが生まれたきっかけ、さらに今後の夢までを聞いた。

家族の協力があって乗り越えた難病

子どもの頃に難病を患い、それを乗り越えて管理栄養士として活動しているりのさん。幼少期からどんな道のりを歩んできたのかを聞いてみた。

「病気になったのが11歳で、これまでツラいことも苦しいこともあり、何度も壁にぶつかることもありました。でも、それを乗り越えたことが今の私につながっていると思います。

病気になる前は偏食で、野菜をあまり食べなかったり、苦手なものには手をつけなかったり……という感じでした。でも、IgA腎症を患ってからは食生活を改善しなければならなくて。まず、お医者さまに言われたのが“塩分を控えてください”ということでした。

そこから、母が味噌汁を私の食事に合わせて作ってくれるようになったんです。味噌汁って、その家庭の味がすごく出るものだと思うのですが、使うダシだったり味噌だったりを減塩のものにしてくれました」

難病を患った小学生の頃に管理栄養士になりたいと思ったそうだが、味付けを工夫し、おいしく食べられるように家族が協力してくれたことが影響しているようだ。

「母には“このご飯はイヤだ、私は好きじゃない”と最初は言っていました。でも、そうしないと病気も悪くなっちゃうし、家族みんなで協力するから、頑張って食事を変えていこうと言われて。それでも残してしまう日もあったんですけど、姉が“この味噌汁おいしいね、なんか前のよりおいしくなったよね”とか、自然な感じで励ましてくれたんです。

それまで、どうして私は病気でツラい思いをしているのに、もっと構ってもらえないんだろう……とか思ってたんですが、そんな家族の姿にありがたみを感じ、私のためにみんな協力してくれているんだとわかって、少しずつ好き嫌いもなくなりました」

自らの経験を活かして人の役に立ちたい、という想いから管理栄養士を目指した彼女。病気になる前の夢はなんだったのかを聞いてみた。

「病気になる前の将来の夢は、小学校か幼稚園の先生でした。でも、お医者さまから“将来、立ち仕事はできないよ”と言われてしまい……。私は何をやったらいいんだろう、私にできることってなんだろうって、一度ゼロに戻して考えたんですよね。そこで、管理栄養士の職業を見つけて、それからはもうずっと管理栄養士だけを目指すようになりました。それが小学6年生のときでした」

実際に管理栄養士になって、描いていた夢を実現できているかを聞いた。

「保育園や病院で働いていた頃よりも、フリーランスになってからのほうが多くの方の声が聞ける機会が増え、より目指していた仕事ができるようになりました。もともと先生になりたかったのも、“人と関わる、何かを伝える”という職業に就きたかったからなので、とてもやりがいを感じています」

コロナをきっかけにフリーランスの栄養士へ

フリーランスになる前は、保育園や病院で管理栄養士として勤務していた彼女。その当時のことを聞いてみた。

「子どもが好きということもあって、最初は保育園に務めたんですけど、業務内容は調理がメインでした。食育をする機会が月1回はあったんですけど、それくらいしか子どもたちと関わることができなかったんです。もちろん、人のためになる仕事なんですけど、もっと人と関わりたい、自分の経験を伝えたいと思って病院に転職しました。

転職先の病院は長期療養型で、寝たきりの方や今後の人生を病院で過ごす方が多くいるところでした。業務の中で一番やりがいを感じた仕事は、外来患者さまやデイケア利用者さんに対しての栄養指導でした。また、料理を作って提供して、“おいしかったよ”とか“ありがとう”とか、そういう言葉をかけていただけるのはすごくうれしかったです。そこにとてもやりがいを感じていました。

退職後、結婚や妊娠が重なって、さらにコロナ禍に。いろいろ考えた結果、病気になる前に健康や食事・栄養の大切さを伝えたいという原点に戻って、フリーランスの管理栄養士としての道を歩んでみようと決めました」

いろいろな環境で人と関わった経験は、独立した今につながっていると語る。環境やライフスタイルの変化もあったが、自分にできることをできる範囲で増やしていった。

「独立をしたのが6年前なんですけど、当時はフリーランス管理栄養士っていう働き方があまり浸透してなくて、自分なりに調べて、試行錯誤しながらやっていました。自分が伝えたいことを発信していくことで、多くの方の役に立てるんじゃないかと思って、SNSには特に力を入れたんです。何もわからないところからのスタートだったので、とにかく毎日、勉強ばっかりしていましたね」

レシピは1日に必要なタンパク質や野菜量を意識

彼女がInstagramで発信している“おかずスープ”は、栄養満点で簡単に作れるものばかり。昨年の12月に出した『からだリセットスープ』(小社刊)を、どんな方に読んでほしいかを聞いた。

「この本のターゲットは、まず一人暮らしで忙しくしている方です。料理する時間はあまりとれないけれど、“健康やダイエットに興味があって、できるだけ自炊して食べたい”という方に向けて作りました。

スープだけで栄養をとるのは難しいと思われがちなんですけど、そんなことはなくて。肉も魚も野菜も卵も豆腐もなんでも合わせられるので、簡単においしく栄養バランスをとることができます。冷蔵庫にあるもの、残っているものを活用できるのもうれしいところ。そんなスープの魅力を多くの人に伝えられるといいなと考えています」

肉も入れられて、魚も入れられて、野菜も入れられて、しかも簡単で栄養たっぷり。それが、おかずスープの大きな魅力だ。

「女性が1日に必要なタンパク質の量って、だいたい50〜60gと言われているんです。このスープレシピのターゲットは、主に女性がメインなんですけど、おかずスープは1食で20g以上のタンパク質が必ず取れるようになっています。また、野菜量は1日350g以上の摂取が推奨されているんですけど、そこも必ず100g以上は取れるように作りました」

1日に必要なタンパク質や野菜の量を意識して作った自信の57レシピが収録されている。もっとも思い入れのあるレシピを聞いた。

「どれもおすすめではあるのですが……表紙になっている“おかゆ”は体調を崩しているときや、ちょっと食欲がないときに試していただきたい一押しのレシピです。野菜とサラダチキンが入っていて、胃腸が弱っているときでも栄養をたっぷりとれます。Instagramに投稿したときにも、特に多くの方に見てもらえた人気のレシピなんです」

▲チキンと野菜の具だくさんおかゆ

レシピ本やInstagramを見ると、かなりの量のスープレシピ考案していることがわかる。レシピを作るうえで大切にしていること、基準にしていることについて聞いてみた。

「まずは、なによりも栄養面を大切にしています。タンパク質と野菜がしっかり取れるかがポイントですね。あとは、一人暮らしの方にも作ってもらえるように、冷凍野菜や冷凍肉など、1回分ずつ使用できる食材を使用したり、スーパーで買える食材で作れるようにしたり、なるべく食材ロスがないように心がけています」

ズボラな人でもできるよ! と伝えたい

出産後、実際にスープダイエットに成功した経験を発信している彼女。ダイエット中に意識していたことを聞いてみた。

「私は食べることが好きなので、食べないダイエットとか、たくさん運動するダイエットは続かなかったのですが、これは食事をスープメインにするだけだったので、苦労はあまりなかったです。野菜中心にする、タンパク質をしっかり取ることは意識していました。

自分の体で体験したことじゃないと相手に伝えられないと思っているので、日ごろから食生活に気をつけています。気になるダイエット法や健康法があれば、まず自分で試しますし、最新情報に広く目を向けることを意識しています。そして、まず自分の体で体験し、そのうえで本当に良かったと思ったら、皆さんに伝えるようにしています。やっぱり、実体験がないと説得力もないと思うので。

レシピ作りについては、試作を重ねることはもちろんですが、やっぱりおいしくないと食べていただけないので、味のバランスを意識しています。香りのあるハーブや柑橘系のものを入れるなどして、五感で感じられるようなスープを発信するように気をつけていますね」

管理栄養士として働き、食べることが好きな彼女だが、じつは料理があんまり好きではないのだそう。

「食べることは好きなんですけど、作るのはちょっとめんどくさいなって(笑)。だから簡単なスープを作っているところもあるんです。ちょっと苦手意識があるからこそ、料理のハードルを下げられるようなレシピを伝えたい。私自身がすごくズボラなので、ズボラな人でもできるよ!っていう、親近感が湧くような発信していきたいです」

レシピ本の出版、SNSでの発信などの活動をしている彼女に、今後やってみたいことや力を入れたいことを聞いた。

レシピ本なんて料理家さんじゃないと出せないと思っていましたし、私が本を出していいんだって、自分自身でもびっくりしました。“すごいね”と言われると自信にもなりますし、期待に応えられるようなレシピをもっと伝えていきたいという気持ちになります。

本を読んでくれた方が“こんなに簡単においしいスープができるなんて思わなかった!”とか“スープをメインにしていいんだね!”とか、気づきを教えてくれるのがとてもうれしいです。

多くの方にフォローしてもらい、応援していただいていることで毎日投稿ができているので、今後は応援してくださっている方々とお会いできる場を設けたいです。講演会とか、スープ料理教室とか……。あとは、管理栄養士として、普段の食事に悩まれている方の食事相談にも力を入れていきたいです」

(取材:萌映)


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