「腰かけOL」「寿退社」から脱却…変わらざるを得なかった女性たちが手に入れた“自由”【ライフキャリアコンサルタントが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

近年の日本では、女性の社会参加が大きく進められてきました。結婚後、「子育てを楽しみたい」という若い男性も増えてきています。しかし実際は、未だに子育てのほとんどを女性が担ってしまっている現状があり……。記事では、ライフキャリアコンサルタントの江野本由香氏が、パートナーと支え合う生き方について解説します。

仕事・子育て両方の役割を全力で担うことが求められる女性

日本の子育てにおいて、歴史的な観点から見ると、長いあいだ女性が子育ての主体とされてきました。

江戸時代まで遡ると、日本の社会は封建制度が根付いており、男女の社会的な役割が厳格に分かれていました。女性は主に家庭での仕事や子育てに従事し、男性は仕事や社会的な活動に専念することが当たり前。

西洋の価値観や制度が導入された明治時代以降も、女性が主に家庭において家族を支える役割は続き、とくに戦後の日本は男女の社会的な役割分担が厳格で、男性が外で働き、女性は家庭を守る、子育ての多くは母親が担うのが当たり前でした。

近年は少子高齢化に向かう世の中での労働力確保の必要性、ジェンダー平等、多様性の尊重といった背景から、女性の社会進出が進んでいます。

それは喜ばしいことではありますが、いまだに「子育ては母親」という役割意識も一部で残るなか、女性は仕事・子育て両方の役割を全力で担うことが求められている状態が続いています。仕事上では男性・女性関係なく、ミッションが与えられる。そのための制度も充実してきました。

しかし、いつ何時、病気などで親の助けが必要になるかわからない子どもを育てながら働くことは、どのような制度があってもなかなかうまくいかないものなのです。

夫婦で子育てを「協力」し合う生き方

他国に比べてジェンダー平等の意識が低い日本ですが、「父親が子育てをするのは当たり前」「子育てを楽しみたい」と考える父親も増えてきました。

なかなか進まなかった男性の育休取得はここ4〜5年で急上昇。もちろん企業規模や業種によっても差があり、取得期間は女性と比べものにならないくらいの短期間取得が主流ではあるものの、「子育てをしたい」と考える父親が増えている流れはたしかなことでしょう。

これからは子育ての主体が母親だけではなく、父親と母親が協力し合うことで、共に子育てに責任をもち、楽しみ、そしてそれぞれが目指したいキャリアを実現する。そのような生き方を目指したいものです。

産後しばらくは母親の体の回復も必要ですし、母乳で子育てをする場合もあるでしょうから、女性が子育てに専念することが多いでしょう。

育休が終了したあとも母親が子育てに軸足を置きたい、ということもあるでしょう。そのときは父親が家計を支える。父親が次のステップへ向けて学び直しをしたい、子育てに軸足を置きたい、というときは母親が家計を支える。

このようにして父親と母親が支え合い、役割を交代しながら、仕事も、子育ても、学びも、それぞれがやりたいことを実現しながら、我が家らしい幸せをつくっていく。そのような父親と母親の関係性があれば、男性・女性に関係なく、誰もが「なりたい自分」「描きたいキャリア」を実現できるのではないでしょうか。

父親と母親が支え合い、お互いの生き方を応援しながら、我が家の幸せを守っていく。平日の昼間に子連れランチを楽しんだり、児童館や公園で子どもを遊ばせたり、授業参観に来るのは母親が多いですが、これからは父親も母親も子連れの楽しみが味わえる時代が来るといいなと思います。

子育ての世界に父親がどんどん入っていくことで、親同士の話題が広がり、子育てに対する視野が広がり、悩みも解決しやすくなるかもしれません。子どもとの遊び方もバリエーションが増え、子どもにとってもよい環境となるでしょう。

役割を交代しながら、支え合う。まだ一般的ではない考え方ですが、誰の目を気にする必要もありません。自分の幸せのために、大切な家族の幸せのために、役割意識にとらわれず、パートナー同士で支え合うことで、それぞれが自分らしいキャリアを実現できます。

そのような生き方を、あなたからはじめてみてもよいのではないでしょうか。

日本社会の大きな変化の中で女性は…

この30〜40年ほどで日本社会は大きく変わりました。

1980〜1990年代の新卒一括採用、終身雇用、年功序列といった日本型経営は、学校を卒業後どの仕事に就くかが勝負。一度ルートをはずれたら二度とそこに戻ることはできない、やり直しのきかない世の中。

そこに猛烈サラリーマンが生まれ、男性が一家の大黒柱として稼ぎ、女性が家庭を守る、といった家庭が多く誕生したわけです。

「腰かけOL」「寿退社」に代表されるように、女性は仕事上でキャリアを積む前に結婚して仕事を辞め、家庭に入って家事と子育てに専念し、子どもの手が少し離れたらパートに出たり、趣味に励んだりして、老後は定年退職をした夫と余生を過ごす……これがステレオタイプの幸せな女性の生き方でした。

バブルが崩壊し、大手企業も倒産する現実を目の当たりにし、不景気な時代が到来。パソコンやインターネット、AIといったテクノロジーの進化で世界がつながるようになり急速にグローバル化していきました。

そのような流れから、日本の終身雇用や年功序列は崩壊。それとともに男性の正社員が中心の企業社会も変化を余儀なくされ、派遣やフリーランスといった多様な働き方の登場、リモートワークも当たり前にできる時代へと変化していきました。

多様な働き方ができるようになったからこそ、一人ひとりが自分の働き方や生き方を考える必要が出てきたわけです。

[図表]「多様性」へ向かう日本社会の流れ

「変わらざるを得なかった」女性たちが手に入れた自由

ここ30年ほどのさまざまな法整備から、女性が結婚しても、子どもを産んでも、仕事を続けられる世の中へ。

しかし、どんなにがんばっても根強く残る男性中心の社会では、なかなか認められないくやしさを味わったり、昇進・昇格に差がつくことで生涯年収は男性より低くなったり……そのような状況のなかで女性は生き方や働き方を変化させてきました。というか、変わらざるを得なかったのです。

子どもを産めば、どうしても仕事を一時中断することになります。自分の都合だけで時間の使い方を決めることもできなくなります。だからこそ、「いま自分にとって大切なことは何か? この先をどう生きていくのか?」を常に考えながら、人生の選択をしているのです。

もちろん「せざるを得ない」状況での選択が多いわけですから、100%すべてが自分の思いどおりになるわけではありません。何かをあきらめたり、手放したりしながら、その変化を受け入れてきたのです。

でも結果として、ひとつの会社、ひとつの世界に縛られない、柔軟で自由な発想で、みずから生き方を変化させる力を得てきたわけですね。

男性も、もっと「自由」になっていい

ひとつの会社で定年までずっとという世の中ではありませんから、これからは男性もみずから変化を起こす力をつけていく必要があります。

「変わること」にはエネルギーがいるものです。

「このままでいいのかな」「なんとなくモヤモヤする」といった内発的動機よりも、「転勤でいまの家から通えなくなる。どうしても転居はできない」「妻の時短勤務が終わり、保育園のお迎えを分担することになる」といった外発的動機のほうが「変わらざるを得ない」といったエネルギーが沸き、変化を起こしやすいかもしれません。

大事なのは、「自分のなかに沸き起こる違和感」に向き合うこと。内発的動機・外発的動機どちらであっても、自分がありたい姿や得たいもの、描きたい未来に対していまどうすればよいのかを考えるのです。

もっと自由に人生を楽しみましょう。

江野本 由香

ライフキャリアコンサルタント

※本記事は『キャリアと子育てを両立する!自分と家族の価値軸で築く幸せな生き方』(ごきげんビジネス出版)の一部を抜粋し、THE GOLD ONLINE編集部が本文を一部改変しております。

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