茨城大、原子科学の新組織 先進的研究と人材育成へ 東海に拠点

茨城大学=水戸市文京

茨城大は22日、エネルギー技術の専門的な研究や学生の育成などを行う新組織「原子科学研究教育センター」を4月1日に開設すると発表した。東海サテライトキャンパス(茨城県東海村白方)に拠点を設け、エネルギー技術や原子、物質、生命科学を融合的に推進する「原子科学」の先進的な研究と高度専門人材の育成を目指す。

新たなセンターは、茨城大が2008年に設立したフロンティア応用原子科学研究センター(iFRC)を発展させる形で開設し、主に3部門で構成する。

「応用原子科学部門」は同大が推進する量子線科学の研究を主眼として、新素材を開発。「次世代革新炉部門」は高温ガス炉や核融合といった次世代型の原子炉研究を進める。「放射線安全部門」では放射線の健康への影響を調べ、解明技術の向上に取り組む。

理系と文系を融合させる発想により、行政や地域住民をつなぐ部署「社会/地域課題共考解決室」も設置する。エネルギーに関する地域のニーズや課題を把握し、理系部門の研究に生かす取り組みを進め、将来的には原子力防災部門の立ち上げを視野に入れる。

原子科学分野を支える研究者の育成を目指し、理学部と工学部、大学院理工学研究科を対象とする教育プログラムを整備する。

センター長には岩佐和晃フロンティア応用原子科学研究センター教授が就く。iFRCや理学部、工学部の教員20人と研究支援高度専門職2人が所属する。

茨城大は日本原子力研究開発機構(JAEA)、高エネルギー加速器研究機構(KEK)、大強度陽子加速器施設「J-PARC」などと連携協定を結び、各施設と協力して研究できる強みがある。大学院理工学研究科には国内唯一の「量子線科学専攻」を16年に設置。17年には同キャンパスを整備し、近隣の原子力科学研究施設の研究現場で経験を積んできた。

太田寛行学長は「わが国は気候変動やエネルギー危機といった課題に直面している。世界有数の原子科学研究機関とともに新たな総合原子科学の確立、研究者・高度技術者の育成に貢献し、持続可能なエネルギー社会の構築を目指す」とコメントした。

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