22年3月の発足からチームはどう変化したのか。コアメンバーの内野貴史が明かす大岩ジャパンの成長【U-23代表】

2022年の3月。パリ五輪を目ざす大岩ジャパンが立ち上がり、同月下旬には初の海外遠征となるドバイカップに参戦した。あれから丸2年。チームはパリ五輪のアジア最終予選を兼ねたU-23アジアカップに向け、最後の調整を進めている。

3月22日に行なわれた今年最初の親善試合となったマリ戦は1-3で逆転負け。パリ五輪の出場権をすでに手にしているアフリカの難敵に屈し、攻守両面で課題を残した。ただ、下を向いている暇はない。チームは23日の午前中に次なる戦いの場・北九州に移動し、同日の夕刻から雨の中でトレーニングを実施した。

マリ戦で現実を突きつけられたが、チームは25日のウクライナ戦に向けて切り替えている。練習では、選手たちが積極的に議論している姿があった。その中の1人が、デュッセルドルフでプレーする内野貴史だ。

千葉U-18出身のSBは高校卒業と同時に渡独し、下部リーグから実績を積み上げて代表まで駆け上がってきた苦労人でもある。2年前の代表入りが初の世代別代表で、以降は継続して大岩ジャパンの活動に参加してきた。

攻守においてハードワークを厭わず、ピッチ外でもリーダーシップを発揮できる。チームのために戦えるプレーヤーであり、たとえベンチに回ったとしても、常に仲間のために汗を流せる人間性を持つ。

そんな内野の目に今のチームはどう映っているのか。過去にある選手が「本気でサッカーの議論ができる選手がまだまだ少ない」という話をしていたが、内野に今の状況を尋ねてみると、こんな答えが返ってきた。

「立ち上げ当初は本当に議論が少なかった。そう思っていたのは事実。でも、最近は1つのシーンに対して、プレーに関わっていた選手もそうだし、ベンチで見ていた人も含めて、意見があれば積極的に口にしている。そこのコミュニケーションが取れるようになってきた」

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以前は何かの事象に対し、当事者だけで話すような場面が少なくなかったという。しかし、気がつけば、誰もが意見を口にするようになり、他人事で終わらせない空気感が出てきた。そうした振る舞いは22日のマリ戦でも見られたと話す。

「昨日の試合に関しても、失点シーンの前のボール運びは、自分たちでものすごく話した。そこは次に繋がる。ピッチで表現できるぐらいのレベルで話し合いができているので、チームの状況としては本当に良いと思う」

代表チームはクラブとは異なり、活動期間が短い。課題が出てもすぐに解決できるわけではないため、選手同士のコミュニケーションが肝となる。2年の月日を経て、そうした議論を積み重ねられるようになったのは、実にポジティブなことだ。初招集の選手もその姿を見れば、意見を出しやすいため、誰もが活発に言葉を発する環境ができあがった。

「メンバー争いに関しては個人個人の戦い。この時期は試合に出たいなど、自分のエゴが出るタイミング。それぞれ自分の思いやこういう立ち位置が良いというのはあると思うけど、今は全員で次の試合に向かっていかないといけない。望むような立ち位置じゃなくても、チームにおいて自分ができる役割はきっとある」

内野の言葉は、まさにアジア最終予選で最も求められる部分だ。競争しつつも、ベンチに回った選手は腐らずに仲間を支えていく必要がある。そうしたスタンスを作っていくうえでも、仲間で議論ができる環境は大きい。マリ戦を経て、大岩ジャパンがウクライナ戦で何を示せるか注目したい。

取材・文●松尾祐希(サッカーライター)

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