老人ホームにいるはずの高齢父の“クレカ”から毎月、謎の請求が…財産〈年金150万円と貯金2,000万円〉を管理する50代娘、真相に衝撃「思わず耳を疑いました」【CFPが解説】

(※写真はイメージです/PIXTA)

元気でいるように見える高齢の親も、いつ病気やケガでこれまでと同じような生活ができなくなるかは誰にもわかりません。そうした事態が訪れた際に、子どもが困ることのないよう、日ごろから準備をしておくことが重要です。本記事ではAさんの事例とともに、高齢親の財産管理の注意点について、株式会社アイポス代表の森拓哉CFPが解説します。

老後をどう暮らしていくかという課題

超高齢社会を迎えて、老後をどう暮らしていくかという課題は、誰もが考える必要があるものとなりました。

社会と接点を持ち続けるため、老後も働き続ける

FIREという言葉に代表されるように、経済的自立をしたうえで、早期に退職をするというのもひとつの考え方、生き方です。

一方で働き続けることで社会との接点を保ち、輝く老後を過ごす高齢者も一定割合でいます。2020年に世界最高齢の現役フルタイム総務部員としてギネス認定を受けた大阪の女性がいるように、高齢になっても働き続けるという選択は充実した人生を送る秘訣のひとつとなっています。

総務省が2020年5月に発表した国勢調査によると75歳~79歳の労働力率は男性26.7%、女性14.9%となっており、90歳以上でも働いている人は5,000人にも上るとされています。

労働者ですから、労働対価としての報酬を受け取って所得税も納めており、高齢になっても社会の仕組みとかかわりを持ち、充実した人生を送る選択肢があるのです。

高齢者同士の関わり合い

高齢者が自立したうえで、高齢者同士で支えあって生きていくというのはひとつのモデルになりつつあり、高齢者向けのシェアハウスの開設など新たな取り組みも芽生え始めています。子供には世話になりたくない、迷惑をかけたくないという高齢者もいますから、職を持ち、高齢者同士で支えあう選択は今後ますます増えていくものと思われます。

一方で高齢者同士のお付き合いというのは、その下の世代からすると中身が見えにくいという課題も挙げられます。永年培ってきた生き方、考え方に個性があるため、常識的な考え方では捉えにくいのです。

次の話はにわかには信じがたいのですが、実例をもとに高齢者同士のお付き合いであった驚きの展開の一端を紹介します。

アクティブに暮らしていた78歳Aさんを襲った突然の病魔

Aさん(78歳/男性)はとてもアクティブな方で、資格を活かして、勤めていた金融関係の職場から仕事を依頼され続け、年間250万円ほどの給与を受け取っていました。

ご自身の年金も年間150万円ほどあり、生活に困ることはなく、またAさんのおおらかな性格から、友人もたくさんいました。同世代の友人同士で、趣味の釣りやゴルフ、食事に加えて、数泊する国内旅行にも積極的に出かけていました。

奥様はすでに他界されていて、一人暮らしをしていましたが、元気な父の様子に、50代の2人の娘たち、BさんとCさんも安心して見守ることができていました。健康元気、病気知らずのAさんでしたが、病魔は突然襲いかかってきます。

Aさんが79歳になろうというとき、脳梗塞になってしまったのです。

重い後遺障害が残ってしまい…

幸い、近くに住んでいた長女Bさんに電話で助けを呼ぶことができ、救急搬送と手術のうえ一命を取り留めたのですが、重い後遺障害が残りました。一人で暮らすことができなくなってしまったAさんは、介護付き有料老人ホームへ入居することになります。

そこで、近くに住んでいた長女Bさんが急遽Aさんの財産管理を担当することに。働けなくなったAさんのお給料は止まったものの、Aさんが事前に銀行の代理人カードなどを作っていたこと、またAさんの給与口座には2,000万円程の資金があったことから、たちまちお金に苦労するということはありませんでした。

しかし、どうにも詳細がわからないお金の流れがあり、Bさんは首をかしげます。

謎のクレジットカード明細

アクティブなAさんはお友達と食事や旅行にでかけるときはクレジットカードを利用していました。高齢者向けの特典などを上手に活用できるお得なクレジットカードを何枚か愛用していたのです。

ここまではまったく問題ないのですが、Aさんが脳梗塞で倒れたあと、クレジットカードからの請求額は固定費を除けば変動する理由はないはずです。

ところが、銀行引き落としがかかるクレジットカードの請求額が月によって変動するのです。当然Bさんは「父は施設で暮らしているのに、どうしてクレジットカードの請求が変動するんだろう?」と疑問に思います。

請求の明細を調べようとしたのですが、すでにクレジットカ―ドの明細はペーパーレス化されており、ウェブページへのログイン情報もわかりません。Aさんが直接カード会社に連絡できるといいのですが、重い後遺症のため、そのような連絡もできません。

Bさんは気持ち悪い日々を過ごしながら試行錯誤の末、クレジットカードの明細書を手にすることができたのですが、そこに掲載されていた請求額の変動の理由にBさんは驚愕します。

ETCカードによる高速料金が変動していたのです。Aさんは入所中ですから当然、運転なんてできるわけがありません。

Bさんが知っているAさんの友人に確認したところ、友人も驚いて、言いました。

「Aさんと旅行するときは経済的に余裕のあるAさんが高速道路代を気前よく出してくれてたんです。そのETCカード、もしかしたら、まだ友人が持ったままかもしれません」

そんなことがあるのだろうかと、Bさんは思わず耳を疑いました。情報にはかなり曖昧さもあり、ETCカードの存在の確認はできず、ETCカード所持疑惑浮上した友人もすでに高齢者で、連絡を取ろうとしても話がかみ合いません。

最後まですべてがはっきりわかることはなく、釈然としない気持ちをBさんは抱くのですが、クレジットカード利用を停止させることでなんとか幕引きを図ったBさんでした。

ペーパーレス化対策の重要性

今回のケースでは、Aさんの暮らしに問題があったというわけではありません。アクティブに仕事をして、一人暮らしのなかでも友人たちと充実した時間を過ごしていました。病魔は、突然襲ってきますから、避けようとしても避けられない部分があります。

それではAさんはどうしておけばよかったのでしょうか? ひとついえることはペーパーレス化の対策が挙げられます。ペーパーレス化の波は、コストや環境の問題から避けられないものがあります。便利ではあるものの、デジタル化が進み、すべての情報はパソコンの中、スマホの中となり、万が一のときに、情報にアクセスする方法がなくなってしまうというリスクを伴います。

すでにペーパーレス化しているのであれば、その情報にどうやってアクセスできるのかを物理的に紙に書いておくこともひとつの手立てでしょう。クレジットカードの明細書も時々は印刷して家族が共有して閲覧できる状態にしておく必要があるといえます。

絶対的な答えはないのですが、一人暮らしの高齢者がどういう暮らしをしているのかを視覚的に紙に記載された情報として置いておくだけで、課題を解決するヒントになり得ます。

森 拓哉

株式会社アイポス 繋ぐ相続サロン

代表取締役

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