「用心深いと思っていた」 60代男性が投資詐欺で被害 自責の念…心の傷癒えず 長崎・壱岐

アプリ上では株価が上がりもうけているようだった(写真はイメージ)

 「用心深い方だと思っていた」-。この冬、「投資詐欺」で約210万円をだまし取られた長崎県壱岐市の自営業、田中清さん(64)=仮名=は、悔しさをにじませ、そう語った。被害が絶えないニセ電話詐欺。だまされて負った心の傷は、時間がたっても消えない。
 老後資金のために、2年ほど前からインターネットで投資を調べるようになった。いろいろなサイトにアクセスしながら自分に合う投資を探していると、昨年10月下旬、有名実業家をかたる人物からLINE(ライン)でグループに招待された。グループの名前は「○○計画研究所12」。投資の成功体験が次々と語られ、自分も稼げると思った。

 その後、アシスタントの「カズユキ」を紹介された。勧められるままに投資専用アプリをインストール。株の値動きについて説明を受けながら、購入のタイミングなどを教わった。その時はまだ「だまされているなんて思いもしなかった」。
 「株が上がりそうだから購入して」。同年11月下旬、カズユキからこう言われ、10万円を指定された銀行口座に振り込んだ。その後、アプリで確認すると株価が上がり、もうけているように見えた。その後、振り込む金額が徐々に増え、クリスマスが近づいたころ、カズユキからケーキの写真が送られた。「1人で作ってみました」。仕事終わりには「お疲れ様です」。何げない会話も交わし、親近感が湧いていた。
 同年12月中旬。正月を控え、金が必要になると思い「お金を引き出したい」と伝えた。返事は「権限がないから引き出せない」。特に不審に思わなかった。今年1月、さらに言われるままに金を振り込み、総額は100万円を超えていた。

ニセ電話詐欺の県内被害状況

 同月、カズユキが突然言い出した。「株の市場をアメリカに移すから3千万円払う必要がある」。「そんな大金は用意できない」と伝えると「辞めるなら引き出すのに40万円かかる」。アプリ上で約400万円のもうけが出ていたため、仕方なく40万円を振り込んだ。しかし、時間がたっても金は引き出せなかった。「引き出したい」と伝えても、はぐらかされた上に、対応はあいまいになった。
 不審に思い、2月に市内の消費者センターに相談した。「それ詐欺ですよ」。職員に指摘されて初めて気付いた。「妻に相談してたら良かった。なぜ気付けなかったんだろう」。今も自責の念に駆られている。
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 県警生活安全企画課によると、2月末までに認知した投資、副業詐欺は前年同期比19件増の19件、被害総額は計約6717万円。同課は「あやしい話をされ、金を請求されたら詐欺を疑ってほしい」と注意を呼びかけている。

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